落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

少女よ大志を抱け

2005年10月10日 | movie
『NANA』
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今日用があって渋谷に出て、せっかくだしたまにゃ非アジア系映画でも観て帰ろうか、と思ったら前から観たかった『運命じゃない人』は先週で終わってて、ちょうど時間の都合が良かったのが『NANA』。
ちょっと悩んだけど、去年コレが映画化されると聞いた時から観たかったし、今日を逃せばもしかしたら永久に観ないかもしれない、と思って観ることにした。

実はぐりはこの原作者の矢沢あい氏のデビューをリアルタイムで知っている。
あれはちょうど20年前、ぐりが中学生で毎月のお小遣いで「りぼん」を買っていた頃だ。当時矢沢さんは高校生で、『NANA』のような夢みる少女らしいかわいらしい少女マンガではなくて、もっと先鋭的でビッチビチにつっぱらかった、カリカリに乾いて硬く尖った鋭い物語を描いていた。全体に白っぽい絵柄もきりきりにクールだった。矢沢永吉のファンでペンネームを「矢沢」にした、とインタビューで語っていたのをよく覚えている。
その後間もなくぐりは「りぼん」を読まなくなったので、90年代にブレイクして大人気マンガ家になった後の彼女の作風についてはまったく知らない。『NANA』も一度も読んだことはない。
それでも『NANA』が映画化されると聞いてなんとなく嬉しかった。矢沢氏がデビューした頃、ぐりも少女マンガ家をぼんやり夢見ていて、同郷人で年齢も近く、学業とマンガ家業を両立しようと一生懸命頑張っている彼女の姿に親近感の交じった羨ましさのような感情を抱いた時代があったのを思い出したからだ。ただ単純に好きなことでチャンスをつかんだふつうの女子高生だった矢沢さんの作品が、20年経って多くの若者に支持され読みつがれ、映画になる。それも人気スター豪華競演。ステキじゃないですか。これぞオトメの夢じゃないですか。少女マンガの世界そのものでしょう。

映画はおもしろかったですよ。ちゃんと。すっごく少女マンガ!!!してて。
原作もよかったんだろうし、キャスティングもよかったんだろうと思う。ぐりは泣けたよ。「りぼん」読んでた頃が素直に思い出されて、懐かしさに自然と涙が出た。ええぐりにもあったんですよ。オトメな時代が。遥か昔ですけども。
宮崎あおいは無茶苦茶芝居上手いね。てゆーか演技にみえないです。中島美嘉も悪くない。オーラは充分だし貫禄と迫力は充分以上だと思う。けどこの人の芝居は致命的に間が悪い。表情も台詞回しもすごくいいのに相手役との間がまっっっっったくとれてない。これがイタイ。惜しい。がっくし。
松田龍平はさすがです。もホントとっつぁまソックリだね。あまりに似てて笑える。つうか彼が出て来るだけでいきなり画面が「映画」っぽくなります。この人よく枕詞に「日本映画界を背負ってたつ」とかいわれてますが、この映画では既に日本映画界が彼によっかかってる、甘えてるみたいにも見える。ヤバいよそれ。今回ラブシーンが何度かあって肌露出も多いんだけど(おそらく今作の‘露出’担当>笑)、いつもの妖艶なフェロモンは一切出さず。そんなもん出したりひっこめたり出来るってスゴイねー。
他でぐりが「おっ」と思ったのは松山ケンイチと丸山智巳。脇役なんだけど光ってました。要チェック。
こうやってひとりひとり挙げてるとキリがないくらい、この映画キャスティングは本当にいいです。ほんの端役まで贅沢なくらい全員がみんな魅力的。役にもハマってるし。

それに対して脚本は全然イケてないね。TVドラマでも昨今もうちょっとマシやろ、ってくらいダサい。台詞はどーしよーもないくらい白々しいしどうでもいいようなモノローグはやたら多いし、場面転換すんごいぎくしゃくしてるし。ところどころほとんどコント?みたいな段取りまるだしなヤケクソシーンも目立つ。
画面構成にもまるで芸なし。人物に異様に寄り過ぎた画が多くて、全体に狭苦しく感じた。なぜそこでレンズを替えないのか?あと2メートル下がらんのか?とイライラさせられっぱなし。原作がマンガなだけに要所要所に印象的な台詞がちりばめられていたり、衣装や美術セットなどプロダクションデザインもそれなりに凝っているのに、そんなディテールを活かす画づくりがまったくされていない。ただ漫然と芝居をおっかけてるだけ。カメラワークに愛情のカケラもなにもない。センスもやる気も感じられない。若者向けラブコメ青春マンガの映画化作品でも『恋の門』なんかすごーく映像綺麗だったんだけどねえ。
あと画面が妙に黒ずんでたのはアレはナニ?色が汚いよ。少女マンガ原作のオトメちっくな夢物語なんだから、もっとフワッと綺麗な仕上がりにしても良さそうなのに、なんか刑事モノとか文芸モノ?みたいなヘンに渋いドス黒い色調。意味がわからない。
それからー、あのー・・・例の合成シーンはちょっと(というかかなり)いただけなかったです。ヤバいよー。ってかもしかしてアレはギャグなの?マジではありえんよ。ぐはぁ。
エンドロールをみてると知りあいがいっぱいクレジットされててオドロキ。日本映画界って狭いなーーーー!てゆーか層が薄すぎるのか。中には内トラでがっつり画面に映ってる人もいたりして。しばらく会ってませんがお元気そうで何よりです。

完成度を云々しだすとかなりどうしようもない映画ではあります。でもたぶん女の人なら、80年代に少女マンガを読んでた人ならぼちぼち楽しめる作品かも。
少なくともぐりの予想よりは全然おもしろかったです。ホッ。
それにしても映画館超いづらかったよ(笑)。見事に若い子ばーっかりで、めちゃめちゃいたたまれなかったです。男性の観客が多かったのが意外でした。みんな誰目当てで来てたのかな?