落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

ぐり的映画鑑賞三原則

2005年10月01日 | movie
『セブンソード』
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B000CFWNKS&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>

ぐりは映画を観る時に決めているルールがいくつかある。
まずひとつめは何度かここにも書いてるけど、作品に関する事前情報をなるべくいれない。無用な先入観をもちたくないからだ。特に出演者や監督のインタビューは軽いもの以外はまず読まないし、レビューも出来るだけ目に触れないようにする。観るか観ないか決めかねている作品に関してはたまに参考にしている特定のライターの評があれば軽く目を通すが、そういうのは例外である。原作ものの場合は原作も読まない。
ふたつめは作品に対する勝手な期待をもたないこと。ひとつめと同じようなことだが、おもしろいかどうかとか出来が良いかどうかとかそういう質的なことだけではなく、たとえばストーリーの先にあるものや、つくり手が語ろうとしているメッセージのようなものを、こちらで先回りして待ち構えるような見方はしないように気をつけている。
みっつめは作品にできるだけ入りこんで楽しむこと。泣ける映画ならぼろぼろ涙を流して号泣するし、笑える映画なら思いっきりゲラゲラ笑う。他の観客の迷惑にならない程度に、ではあるが。少し前に仕事場の人といっしょに『宇宙戦争』を観にいったら、隣に座ってた仕事仲間が「びっくりして椅子から飛び上がってる人(ぐりだ)を初めてみた」といっていたけど、それくらい入りこんで楽しまなきゃソンじゃないですか。せっかく高い入場料を払って、短くはない時間を割いているのだから、モトはとりたい。

このルールが守れていれば大抵の映画はある程度までは楽しめる。
しかしひとつめとふたつめは観る方でどうにか出来ても、みっつめは作品そのものの出来具合いによってはどうしても無理なことがある。どう好意的に観てもおもしろくなかった映画の多くには、「観客を作品の世界に連れていく」機能が欠けている。そういう映画は、残念ながらいくらぐりでも楽しんで観ることは出来ない。
『七剣』に関していえば、世間がなんといおうとこの「観客を作品の世界に連れていく」力は申しぶんない。ぐりはもともと武侠片(中国の時代劇アクション)にはほとんどまったくといっていいくらい興味も知識もないし、この映画に出ているどの俳優のファンでもないし監督のファンでもない。中国ではベストセラーだという原作だってもちろん読んでいない(日本ではこれから発売されるのだが)。
それでもちゃんと楽しめました。衣装やメイクや美術セットもなかなか見応えあったし、アクションシーンも迫力あったし、ストーリーも上手く練れているとはとても言い難いとはいえ、長く濃密な大衆文学を2時間半の映像にまとめるには他に方法がなかっただろうということは容易に想像がつく。
というかそもそもこの映画は「ストーリー」を楽しむようなタイプの作品ではないのだろう。こちらの頭をからっぽにして、7人の剣士たちの住むこの独特な世界観と、徐克(ツイ・ハーク)の表現しようとした美意識に素直に身を委ねれば、ふつうに当り前に「おおスゴイな」と思える。それが難しく感じるような作品ではない。力はあるのだ。

だがそれでもやはりあれこれとアラは目につく。エピソードをつめこみすぎ。女がぎゃあぎゃあ騒ぎすぎ。うるさいしみっともない。ついでながらいわなくていいクサイ台詞も多すぎる。
黎明(レオン・ライ)活躍しなすぎ。主役なのに影うっすー!いつの間にかやたら年くっちゃってるし。この前の『インファナル・アフェアⅢ』ん時は相変わらずクールでステキだったのに、もしや古装が似合わないのか。
っつうかこの映画では孫紅雷(スン・ホンレイ)以外はどの役も誰がやったっていっしょな気がするなー。特に演技力を求められるような作品じゃないし、キャラが濃いから出来る芝居の質が決まってしまう。孫紅雷はめちゃめちゃ貫禄あって怖かったけどー。

致命的なのはカメラワークとカット割り。アクションシーンはすっごくいいです。さすがです。ところがそれ以外のシーン、特に状況説明的な引き画になると途端にあからさまにやる気のないテンションの低い画面になってしまって、そのギャップに愕然とさせられる。スペクタクルシーンとかもう何が何だかじぇんじぇん意味わからない。序盤で雪山に火の玉みたいのが降ってきたけど、アレはナニ(爆)?あのあたりのシークエンス何がどーなってんのかさっぱりついてけなんだよ。
あとコレもしかしてハイビジョン撮影なのかな?画質がイマイチ綺麗じゃなかった。せっかく迫力のある映像なんだから、どーせならアナモフィック・レンズ使ってスーパー35サイズで撮って欲しかったです(ハリウッドのスペクタクル映画でしばしば使われるサイズ。超横長&高細密)。そしたらもっと圧倒的に華麗な画で観客をのみこむことが出来たはず。

とはいえよく出来てる映画だとは思うし、観てソンするような駄作では決してないです。
少なくとも題材に対するつくり手の愛と情熱は充分に感じられる。やりたくてやりたくてしょうがないことを、一生懸命必死に頑張ってやってます!というのはしっかり伝わってくる。
そういうのがわかると、結構観てる方は安心して映画の世界についていけちゃうもんなんだよね。実は。