落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

痛い図星

2005年10月03日 | book
『東京奇譚集』村上春樹著
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この前の『アフターダーク』がどーもイマイチだったのでコレも読むかどうか迷ってたんだけど、先日待ちあわせの暇つぶしに立ち読みしてたらなかなかおもしろくて買っちゃいました。
うん。よかった。
村上春樹、長編は特に近作には完成度にバラツキがあるような気がするけど、短編はいつもなかなかいいです。これもぐりは結構好き。ただし『どこであれそれが見つかりそうな場所で』と 『品川猿』は他の3本に比べてもうひとつという気がする。

しかしこの人の短編は毎度のことながらかなりキツイことをズバッと書いてきます。
人間て誰でも図星をさされるとついムッとしてしまうものだけど、村上春樹の短編はまさにそこの、いちばん他人にいわれたくない痛いところを、遠慮会釈もなにもなく思いっきりグッサリと刺してくる。
今回も刺されましたね。ぐりが刺されたのは『偶然の旅人』と『品川猿』。『偶然の旅人』の方はたまたまそこを読んでた時電車に乗ってて、反射的にものすごい勢いで涙が出てきてしまってちょっと困りました(笑)。
たぶん大人ってたいていは、大人になりきれてない自分をうしろめたく思いながら、日々の生活をどうにかこうにか生きている。どんなに平穏に幸せに生きてるように見える人でも、多かれ少なかれ「未解決の宿題」みたいなものを抱えている。そうですね?そういう不完全さが人間らしさでもある。
だけど一生その「宿題」を抱えこんだままではいられない。いつかどこかで必ず清算すべき時がやってくる。『偶然の旅人』の調律師と『品川猿』のみずきにはたまたま“勘定書き”がうまくまわってきたけど、現実世界に生きている我々にも、そう都合よく向こうからまわってきてくれるものだろうか。

ぐりにはそれがどんな瞬間なのか、ぜんぜん想像がつかないけれど。