Forever hill

男は夢に追われる孤独なランナー

ヒーローになりそこねた中学野球

2008-06-09 19:44:57 | スポーツ

当時誰もがプロ野球選手にあこがれた。自分も中学に入学すると迷う事なく野球部に入部した。一年の時は球ひろいばかりで半分以上が辞めていった。

二年の夏レギュラーになれたが練習らしい練習をした記憶がない。先生はほとんど来なくて毎回三年(特に二人)がコーチに来た。強くしようと言うのではなくしごくのが楽しみでやって来るのだった。

その先輩たちに声出し、ウサギ飛び、ベースランニングそんな事ばかりやらせられた。おもしろくないので練習を休むと次の日ケツバットが待っていた。まともな練習は試合数日前に少しやるだけだった。

それでも秋の新人戦の時が来て、わが野球部は快進撃を続けていた。一回戦、二回戦を勝ち抜き準々決勝に進んだ。チームが強いからではなくピッチャーが優秀だったからだ。中学の野球なんてそんなもんだ。

準々決勝は夏に練習試合をした相手だった。その試合自分はレフトを守っていて平凡なフライをバンザイして負けていた。

試合前連中はそれを覚えていたらしく自分を指差し笑っていた。ムカついた絶対勝ってやろう。試合は始まり六回まで同点できていた(点は忘れた、七回が最終回)。

そして七回表一死満塁で自分に打順が回ってきた。先生に呼ばれた「スクイズできるか」。できるわけなかった一回も練習してないのだから。無言でいた。

すると先生は一瞬、間をおいて「打つか」。自分は勢いよく「打ちます」と答えた。打つことだけには自信があった。

いつもは初球からガンガン振っていったがこの打席だけは慎重に行った。不思議に高ぶりも緊張もなく冷静だった。カウントは覚えていないが何球目かを力いっぱい振りぬく・・・打球はライナーでセンターにぬけた。

夢中で一塁に立つと一塁コーチのヤツが笑って握手してきた。力投していたピッチャーだった。 このまま行けば自分はヒーローになれる。人生は浮き沈み、高い所に位置するときはそう何回もない。その時一瞬だが自分は立てたのだ。

しかしその裏セカンドの一塁悪送球で同点にされる。自分はヒーローになりそこねた。もしあのヒットが裏の攻撃ならサヨナラ勝ちでヒーローになっていたのに。

延長に入り円陣を組んだ時さっき一塁で握手したピッチャーが全員に向かって「エラーしたら一生恨むぞ」そんなような事を言ったので緊張は頂点に達していた。チームワークもへちまもない、あの先輩たちがピッチャーを天狗にした。

八回裏のピンチで自分の所に弾丸ライナーが飛んでくる。一歩も動けず頭の上を越えられる。フライならまだしも練習なんてほとんどしてない取れるわけない。サヨナラ負けした。

人生は浮き沈み、かくして自分はヒーローから奈落の底に落とされた。試合後相手連中の言い草がいい「やっぱレフト穴だった」。不思議に頭に来なかった。本当の事だし緊張感から開放されて気分はよかったのだ。

その後七、八人で「こんなおもしろくない野球部なんか」と野球部を辞める。「楽しい野球がしたい」ただそれだけだったのに。

でも自分らはすべて先輩たちのせいにして逃げ出しただけだったのかも知れない。逃げるヤツはヒーローになれない。


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