フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

11月5日(月) 晴れ

2012-11-06 09:36:49 | Weblog

  土曜日から2泊3日の小旅行に出ている。

  初日は茅野の友人Kの別荘(安楽亭)を訪ねた。ここに来るのは三度目だが、いつもいい天気で、私は晴れ男ということになっている。お昼に着いて、昼食は私の希望でいつもの「香草庵」で前回と同じにしん蕎麦。夕食は車で30分ほどの「みつ蔵」という蕎麦屋へ連れて行ってもらい蕎麦懐石を食べた。あいからず仲のいい夫婦と楽しくおしゃべりをした。


新宿発10:00ちょうどのあずさ11号に乗って


おしどり夫婦


安楽亭の隣のお寺の紅葉と石仏


夕方、安楽亭の縁側から見る風景

  二日目の昨日は、朝食の後、Kの車で茅野駅まで送ってもらい、9時8分発のあずさ1号に乗って、松本へ(30分ほどで到着)。今日もいい天気。松本は私にとっては北杜夫の『どくとるマンボウ青春記』の舞台で、『青春記』に心酔した高校生の私は信州大への進学を真剣に考えたこともあるくらいだ。高校のときの同級生でYという男がいて、二浪して信州大の医学部に入った。彼が二浪中に暑中見舞いのハガキに励ましの言葉を書いて送ったことがあり、それがとても嬉しかったようで、合格後、Yは夏休みに私を松本に招待してくれた。Yは私を市内のあちこちに案内してくれた。夜は、Yがお世話になっている方の家に連れていかれ、信州牛のステーキを腹いっぱいごちそうになった。そのとき、Yは私のことを、「俺は人の病気を治すために医学を学んでいますが、こいつは社会の病気を治すために社会病理学というものを学んでいます」と紹介した。昼間、「まるも」という喫茶店で社会病理学という分野に関心があるんだという話をYにしたばかりだった。Yは、その後、松本のスナックのママさんと駆け落ちをしたという話を風の便りで聞いた。そのスナックはあの日Yに連れて行ってもらった店の一軒で、われわれよりも年上のちょっと憂い顔の美人のママさんだった記憶がある。その後のことは知らない。Yはちゃんと医者になれたのだろうか。松本に着いて、荷物を駅のコインロッカーに預け、とりあえず女鳥羽川の一の橋のたもとにある「まるも」に行ったのは、Yのことが思い出されたからである。

  その後は、松本城公園へ行ったり(混んでいたので天守閣へは登らなかった)、旧開智学校を見物したり、縄手通りや中通りを散歩したり、市立美術館へ行ったりと、ガイドブックに載っている主要なスポットに足を運んだ。どこの街へ行っても、一日目は素直にそうするようにしている。昼食は松本城公園の近くの(駅からは反対側)の「もとき」という蕎麦屋で天ざる。店内に米長邦雄の色紙があった。夕食はホテルのそばの「たくま」というとんかつとカレーの店でかつカレー。ガイドブックには載っていないが、いい店だった。

  三日目の今日は、これからホテルをチェックアウト。今日はガイドブックはカバンにしまって、自分の勘を頼りに街歩きを楽しみ、夕方のあずさで東京へ帰る。

  松本はクラフトの街として知られるが、旅の土産に何点か買物をした。

  中通にある「coto.coto」という小さなギャラリーで樋勝朋巳という版画家の作品「ターザンの思い出」を購入(宅配便で大学の方へ送ってもらう)。研究室の壁に掛けようと思う。

  同じく中通りある「GRAIN NOTE」という木工と陶器の店でティーポット(田中一光作)を購入。研究室で使おうと思う。

  同じく中通りある「ちきりや」という布と陶器とガラス器の店で、卓上に敷く小さな織り布を2枚購入。これも研究室で使うつもり。大学での居場所が教務室から研究室に戻ったので、そこをできるだけ居心地のよい場所にしたいと思う。

  伊勢町通りにある「いけだや」という呉服屋で藍染めの織り布を使ったショルダーバッグを購入。散歩のお供として使おうと思う。

   「いけだや」の隣に「米治」という洋服屋があって、「米治」は「コメジ」と読む。いや~、親しみがわきましたね。「孝治」(タカジ)と同系の読み方である。でも、これは人名とは思うが、苗字なのか、下の名前なのか、それはわからない。

  その米治ビルの本町通りを挟んで向かいのビルの壁面の蔦が紅葉してきれいだった。

  昨日今日で松本市内の通りをいろいろ歩いたが、中通りが途切れてその先の日の出通りという名前の地味な通りがなかなかよかった。そこに「キッチン南海」というレストランがあって、驚いた。神保町や早稲田にある「キッチン南海」と関係があるのだろうか。偶然同じ名前とは考えにくいからきっと関係があるのだろう。

   日の出通りの外れに「カフラス株式会社」というのがあって、年季の入った建物と樹木がなかなか素敵なのだが、私は最初、「カフラス」を「カステラ」と思い込んで、「へぇ、カステラを作っている会社か・・・」と思った。知らない単語が目に飛び込んで来ると、人間は、無意識のうちに既知の単語に変換してしまうのですね。ちなみにこの会社はあの富岡製糸と縁のある会社のようである。 

  松本17:18発のあずさ30号に乗って東京に帰る。新宿には20:07に着き、帰宅したのは9時だった。旅先でチュンのことは何度も思い出し、しんみりとした。