フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

8月30日(火) 晴れのち曇り

2011-08-31 12:14:44 | Weblog

  8時半、起床。蓮根と挽肉の炒め、シラス干し、白菜の味噌汁、ご飯の朝食。

  雲ひとつない青空は久しぶりだ。天気予報によれば、台風12号の影響で明日から天気は崩れるという。であれば、今日は行く夏を惜しむ一日にしよう。

  午前中は、来週に予定されているオンデマンド科目「社会理論と社会システム」の収録の準備。私の担当回は2・3・4回で、各回とも20分×3コンテンツから構成される。パワポはつかわず、スタジオ内のホワイトボードを使いながら、教室での講義スタイルで収録をする。ただし、キーワードについてはあらかじめフリップを用意しておいて、マグネットでホワイトボードに貼り付ける。その方が見やすいから。収録の準備とは講義の台本とこのフリップの作成である。

  午後、散歩に出る。とりあえず池上の「甘味あらい」でカキ氷を食べることにする。行く夏を惜しむ食べ物としてカキ氷は一番ふさわしいものに思える。注文するのは氷イチゴと決めていた。宇治金時ミルクも美味しいし、氷あずきも美味しいが、私にとって氷イチゴはカキ氷の原点なのである。


池上駅のホーム(五反田方面)のベンチ


芸術品ともいえる「甘味あらい」の氷イチゴ

  蒲田に戻り、京浜東北線に乗って、鎌倉をめざす。いざ、鎌倉。行く夏を惜しむ場所としては海辺が一番ふさわしいものに思える。これは加山雄三主演の映画「若大将シリーズ」を(怪獣映画と二本立てで)小中学生の頃に観て育った世代的の特徴なのかもしれない。したがってどこの海辺でもいいわけではなく、湘南の海辺でないとならないのだ。

  蒲田を出発するときは雲ひとつなかった空だが、鎌倉についたとき(2時ごろ)には雲が出てきていた。やはり台風がちが近づいて来ているのだな。鎌倉駅前から若宮大路出るところの角にある「井上蒲鉾店」の二階の「茶寮いの上」で昼食をとる。特製いの上弁当(1200円)を注文。二段重ねの弁当で、しらすご飯は白いご飯ではなく茶飯。とても上品な味わい。おかずは派手さはないが、一品一品丹念に調理されている。老舗の蒲鉾屋だけあって、蒲鉾、薩摩揚、はんぺんが美味しい。蒲鉾を口にして「美味しい」と思ったのは久しぶりである。


若宮大路二の鳥居


しらすご飯(茶飯)


卵焼き、蒲鉾、小判揚げ、小海老・椎茸・ひじきの炊き合わせ、胡瓜とキャベツの浅漬け、南瓜煮、高野豆腐煮


梅花はんぺんの入った吸い物

  「茶寮いの上」の全面ガラス張りの窓からは眼下にスクランブル交差点を行き交う人たちの姿が見える。地元の人、高校生、観光客・・・、ずっと見ていても飽きない。

  食事を終えて、若宮大路を南に下る。開放的な感じ、観光地であると同時に生活の場でもあるという感じが好きだ。15分ほど歩くと由比ガ浜に出る。

  前回(8月18日)来たときは、ピークを過ぎていたとはいえ、まだまだ海水浴客がたくさんいたが、今日はだいぶ減っている。とくに滑川(なめりがわ)の左側の材木座海水浴場は海の家も開店休業状態だ。波はまだそれほど荒くはないが、遊泳注意の旗が出ていた。

  波打ち際を歩きながら、スナップを撮る。雲が空の表情を豊にしている。

  浜辺を離れて、江ノ電の和田塚駅に向かう。電車に乗るためではなく、「無心庵」に行くためである。前回はちょうど定休日(木曜)で肩透かしをくった。順番待ちの客が何人かいたが、急ぐ旅ではないので、玄関の外のベンチで待つ。ほどなくして案内されたのは洋間の方。「無心庵」は二度目だが、洋間もまた趣がある。定番のクリームあんみつを注文。おひとりさまは私だけのようである。

  「無心庵」を出て鎌倉駅まで歩く。御成り通りの「コクリコ」というクレープの店でカキ氷を食べる。店先のメニューに「生のレモンをしぼります」と書かれていたのに魅かれたのだが、自分でしぼるのだとは思わなかった。でも、たしかに、できあいのレモンシロップよりも、本物のレモンの方が風味がある。最初はシロップとレモン汁をちょっとずつかけて食べていたのだが(カレーのルーが容器に入って出てくるカレーライスを食べるときみたいに)、それだと氷が固まって硬くなることがわかったので、途中からは全部のシロップを景気よくかけてシャリシャリにして食べた。一日に二度カキ氷を食べて満足である。

  駅のそばのカフェで本日の日誌をつけてから、お土産に豊島屋の鳩サブレーを買って、帰りの電車に乗る。6時半、帰宅。さらば夏の日。

 


8月29日(月) 晴れ

2011-08-30 02:05:17 | Weblog

  8時半、起床。夕食の残りのカレーライスと牛乳の朝食。

 

  耳の具合は昨日寝る頃にはかなり回復していた。突発性難聴の原因というのはよくわかっていないそうだが、大別すれば、ウィルス説とストレス説がある。両方というのもありえるだろうし、ストレスが媒介要因となってウィルスに感染しやすくなるということもあるだろう。いずれにしろ、ウィルスの可能性があるなら、早めに抗生剤を飲んでおこうと、以前耳鼻科で出してもらって残っていた抗生剤(クラリスロマイシン)を昼と夜に飲んだのでそれが効いたのかも知れないと思った。

  今朝、起きたら、耳の具合はほとんど回復していた。でも、念のために、近所の耳鼻科で診てもらうことにした。診察の結果、昨日の難聴は、突発性難聴ではなく、たんに耳垢が外耳道を塞いでいるためとわかった。朝起きたときに難聴になっていたのは、耳に入った水分で(シャワーを浴びたとき)耳垢が寝ている間に膨張して外耳道を塞いだからで、夜、回復したのは、抗生剤のせいではなくて、耳垢が乾いて隙間ができたからだろうとのことだった。鼓膜はきれいなピンク色をしていて、炎症は起こっていないとのこと。なるほど、大変論理的な説明で、しかも目の前には取り出された耳垢の塊りがあるわけで、反論の余地がない。そういえば、昨日、耳の中に指を入れてみたとき、耳の奥で空気の流れる音がしたが、あれは指を入れたことで外耳道が広がって、空気の通り道ができたためだったのだな。私の耳の穴は鼓膜の前のあたりが普通の人よりも狭いので耳垢で塞がりやすいのだ。数ヶ月に一度、掃除にいらっしゃるといいですねと医師に言われる。というわけでは、突発性難聴騒ぎは一件落着となった。妻にメールで「原因は耳垢だった」と知らせると、「ハハハ、ラジャー」とメールが返って来た。実は妻は昨日の段階で耳垢が原因である可能性について言及していたのだ。


耳垢だったんですって、ご主人さま?

  昼から大学へ。昼食は「五郎八」の揚げ餅そば。


そば汁をぶっかけて食べる

  2時から6時まで教務室で仕事。窓の外は蝉時雨。みんみんゼミや油ゼミに混じって、新参者のつくつく法師の声が聞こえる。卒業生のOさんと研究室で面談。雑誌に投稿する予定のコミックエッセイの原稿に目を通してアドバイスをする。もっとも私は巷に流通しているコミックエッセイの実態については知らないので、一緒に本屋へ行って実物を見てみる。リサーチの後、「カフェ・ゴトー」でおしゃべり。

  教務室に戻って仕事の続き。6時を過ぎる頃には夕暮れとなる。さて、帰るとしよう。
  蒲田に着いて有隣堂で佐怒賀三夫『向田邦子のかくれんぼ』(NHKブックス)を購入。没後30年ということで、向田邦子があちこちで取り上げられている。


第二研究棟の窓の灯り


8月28日(日) 晴れ

2011-08-29 00:09:10 | Weblog

  9時、起床。気づくと、右の耳が詰まったような感じで、聴こえが悪くなっていた。とくに低い音がだめだ。耳元で爪をカチカチする音は聴こえるが、指を擦る音が聴こえない。これって、話には聞いていたが、突発性難聴というやつではあるまいか。喉が少し痛むので、そっちの影響もあるのかもしれない。地元の大学病院の休日診療に電話をしててみたが、耳鼻咽喉科はやっていないという。しかたない、明日まで待って、かかりつけの耳鼻咽喉科で診てもらうことにしよう。オムライスの朝食。

  というわけで、せっかくの晴天だったが、昼間は家でおとなしくしていた。
  夕方近くになって、散歩に出る。「緑のコーヒー豆」で日誌を書く。  

 

  30分くらい滞在して、散歩を再開。ストリートスナップを撮りながら歩く。だんだん日が暮れていく。こんなに晴天でも6時半頃には暗くなってきた。知らないうちに、いや、知らないふりをしてきたが、日がだいぶ短くなってきている。もう秋なんだな。認めざるをえない。

  写真は光がないと撮れないが、自然の残照と、人工の灯りが交じり合うひとときは、昼間とは違う街の写真が撮れるので面白い。

  夕食はカレーライス。
  世界陸上でボルトが決勝レースでフライングをして失格になった。あ~あ、と世界中が溜息をついた。フライング即失格って厳しいな。


8月27日(土) 曇り

2011-08-27 23:24:16 | Weblog

  9時、起床。8月最後の週末である。来週は途中で月が替わる。
  TVでは世界陸上の女子マラソンをやっている。そうか、今日から世界陸上か。8月が終ってしまう淋しさを少しは紛らわせてくれるだろう。

  午後、散歩に出る。下丸子の「喜楽亭」に昼食をとりに行く。2週間ぶりである。店に入ろうとしたら、店から客が出てきた。お、珍しいなと思ったら、店内には4人の客がいたから驚い。二人連れが一組、お一人様が2人である。そこに私が加わって5人となる。常連客とおぼしき男性がご主人に「珍しいこともあるもんだ」と言うと、「たまにはこういうこともないとね」とご主人。ヒレカツ定食を注文。


ショーケースを見ている女性は店に入った


満員御礼のつもりだろうか、ご飯がいつもより心持ち多い。


食事の後は、腹ごなしの散歩。まずは下丸子界隈。


駅の近くの神社


社はミニサイズ


境内は公園になっている


ティラノザウルス現る


表通り


路地に入る


小さな店が多い


昼顔の咲く家


蔦の絡まる家


瓢箪のある家


長い石塀


街路樹


下丸子から千鳥町へ

  
千鳥町駅前の踏み切り


駅前の女性たち


広告の中の女性たち


広告の中の女性

 
祭りの準備


しゃがんで煙草を吸う女性


踏み切り脇の自転車


これ、なんだろう?


「鋲螺」? 後から調べたらネジやナットのことで「びょうら」と読む。


印刷サンプル?

 


道路工事

   
千鳥町から池上へ


アパートの前で


自転車の人たち


「甘味あらい」には3時に到着


前回と同じ氷あずきを注文する


蓮月庵の前の電線のカラス


窓のない壁

 
自転車の人たち


みんなで渡る


電車を待つ人たち(池上駅のホームで)


バスを待つ人たち(蒲田駅東口のバス亭で)


信号待ちの男 


食べられるのを待つふぐたち


散歩の終りは「緑のコーヒー豆」で

  今日はずいぶん歩いた。写真もたくさん撮った。300枚近く撮った。デジカメのいいところはフィルム代を気にしないでシャッターを押せることだ。もっともそれはシャッターを押すことに「ため」がなくなるからよろしくないという見方もあるだろう。鬼海弘雄などはそういう立場だ。森山大道はバンバン撮る方で、商店街を100メートル歩くと36枚撮りフィルムを一本使い切きるという。

  「もっとも大切なのは、欲望だね。撮る本人が、そのとき、その瞬間に抱えている欲望。それを持っていないと、見ることすら出来ないから。そこで見つけたものを、スナップするんだから、とある物体を撮りたくなる一瞬の欲望、女性をふと撮りたくなる欲望・・・欲望っていうのは本当に数限りなくあるはずなんだ。だから、自分自身が欲望に忠実な、欲望体となってスナップしないと、面白くないし、そもそも意味がないんだよ。」(森山大道・仲本剛『森山大道 路上スナップのススメ』9頁)

  どちらの見方もうなずけるが、今日は森山大道の流儀に従った。


8月26日(金) 曇りのち雨

2011-08-27 10:09:39 | Weblog

  9時、起床。プリンジャムとパンと牛乳の朝食。プリンジャムというのは娘が軽井沢に行ってきたお土産だが、濃厚なプリン(キャラメルソース付き)をパンに塗って食べるようか感じ(ピーナツクリームの食感に近い)。

  ブログを更新してから大学へ。途中、丸の内オアゾの「屏南」で昼食をとる(ネギチャーシュー麺)。麺の上にのっているパクシーは、苦手という人が多い。私は好きというわけでないけれど、これがないと物足りないというか、本場の味ではなくなってしまう気がする。後から来た客が同じものを頼んで、「パクシーたっぷりで」と注文した。へぇ、そういう注文もできるのか。「チャーシューたっぷりで」はだめなんだろうな(少なくとも同じ値段では)。

  2時半から6時半まで教務室で仕事をしたが、3時あたりから土砂ぶりの雨になった。雷も鳴っていた。ただの俄か雨ではなく、長いこと降っていた。今年の夏はこういう雨が多いように思う。ツイッターのタイムラインを見ていたら、ある方の愛犬がこの雷のせいで心臓の発作を起こして急死したと書いてあったので(元々心臓が弱かったらしいが)、そんなことがあるのかと、驚いた。うちの小雀は大丈夫だろうかと心配になる。私が書斎にいれば、籠から出して掌の中に避難させてやるのだが。

  大学からの帰り、竹橋で降りて東京国立近代美術館に行く。木曜と金曜は夜の8時までやっているのだ(地震のためしばらく自粛していたが、7月から夜間延長が復活した)。

  竹橋の駅を出て、交差点で信号が変るのを待っていたら、傘を忘れたのだろう、女子高生が雨に濡れながら立っていたので、傘を差しかけて、「どこまで行くの?」と尋ねると、「ありがとうございます。美術館の横の道を入って少し行ったところに宿舎があるんです」と言う。そこって北の丸公園の中じゃないか・・・と思ったが、行きがかり上、送っていくことにした。「宿舎って学校の?」と尋ねると、「皇宮警察の職員宿舎です」と答えたからびっくりした。「あなたのお父さんは皇宮警察の方なの?」「はい」。う~む、女子高生と一つの傘に入っているというだけで緊張気味のところに加えて、それが警察官のお嬢さんと知ってさらに緊張度が増す。しかし、そう言われてみると、私が傘をさしかけたときの素直で落ち着いたお礼の言い方は、普通の女子高生のものではなかった。普通の女子高生なら、見知らぬオジサンに傘をさしかけられたら、慌て気味に、「あ、けっこうです」と断る子が多いのではなかろうか。さすがに皇宮警察の娘さんだけのことはあると感心した。

  少し寄り道をしたので、美術館の見物時間は1時間弱となったが、雨のせいだろう、見物人はきわめて少なく、まるで私ひとりのための展示会のようである。許可をいただいて写真撮影もできる(ただしある時期より以前の作品のみ)。


いつも一番最初にこの絵の前に立つ。和田三造「南風」(1907)

 


続いて、この像の前に立つ。新海竹太郎「ゆあみ」(1907)

  この2作品に再会できればとりあえずよい。仕事の帰りに映画館に寄るというのは可能だが、仕事の帰りに美術館に寄るというのは難しい。5時ないし6時閉館ということろがほとんどで、普通のサラリーマンはわざわざ週末に混雑する美術館に行くしかないわけだ。ここみたいに平日の夜間も開いている美術館がもっと増えるといいのだが。
  売店でレオ・ルビファイン『傷ついた街』のカタログと、森山大道・仲本剛『森山大道 路上スナップのススメ』(光文社新書)を購入。

  蒲田駅ビル西館の「新宿中村屋オリーブハウス」で夕食。生ビール(S)、魚介のマリネ、夏野菜カレー(ライス)、マンゴープリンとバニラアイスの盛り合わせを注文。 

 

 

  食後のコーヒーは、読書をしたかったので、場所を替えて「シャノアール」で。電車の中で読み始めた『森山大道 路上スナップのススメ』を読み終える(全ページの3分の2は写真だから時間はかからない)。

  さっそく路上スナップを撮りながら帰る。夜の道で、しかも歩きながらだから、自ずと森山大道風の「ブレ・ボケ・アレ」の写真になる。

  「商店街というのは、あらゆるものが混在する場所。さまざまな物が撮れるし、人間も撮れる。スナップワークのレッスンに、これほど格好な場所はないんだよ」(16頁)