川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

エンリッチメント大賞2006

2006-11-17 08:46:25 | 川のこと、水のこと、生き物のこと
ちょっと紹介するのが遅れましたが、市民ZOOネットワークの「エンリッチメント大賞2006」が発表されました。
詳細は、こちらにて。

審査員コメントが掲載されており、そこにはぼくの考えもちゃんと反映されています。ぼく個人としての感想もあるので、短くコメント。
まず、印象深かったのが、さいたまの「動物しあわせ作戦」。
というよりも、さいたまで普段から行われているエンリッチメントの広汎さと、それを来園者にアウトリーチしていこうという姿勢。キリンのエンリッチメントにかんしては、実際に効果があったか評価しようとしていて、それって「新しい」ものだと感じられます。エンリッチメントはやったら効果の測定というのは、やはり大事なので。「来園者部門」の授賞だけれど、ぼくの感覚としてはほかのエンリッチメントと含めて、もっと総合的なもの。

名古屋港のシャチは、やっぱり水族館でエンリッチメントらしいエンリッチメントが行われていることに、前から注目していました。海獣類のエンリッメントってかなり手探りなんじゃないでしょうか。どんなことをすればエンリッチメントになるのか、その効果をどう評価していくのか、そういうことを含めて「これから」の課題。ちなみに、水族館の海獣のエンリッチメントは、これまでショーとの兼ね合いで、あまり意識がなかったところのような気がしていて、その意味でも、ほかの水族館にも広がっていくといいなあと感じます。

さらに、富山のアナグマ。ぼくはここに賞が行ったのがうれしくて……。こういう「中程度」の予算規模のエンリッチメントって、これからも増えていくと思うのです。
エッリッチメントは、飼育担当者の個人レベルの工夫で行う「小さい」ものから、新しい展示をまるごと作ってそこにエンリッチメント要素を散りばめる「大きな」ものとの間に、数十万円、数百万円くらいの予算でちゃっちゃっと施設・設備を手直してして実行する「中くらい」のものがあると思うのです。「大きな」やつは何十年かに一度しかできないけれど、「中くらい」なら何年かに一度、新しいことにチャレンジできるかもしれない。というわけで、「中くらい」万歳です。

トンデモ科学ネタ、ふたつ

2006-11-15 07:06:36 | トンデモな人やコト

『「水からの伝言」を信じないでください』
というページが学習院大学の田崎晴明教授によってアップされた。
これはすばらしい。
研究者として謙虚で真摯な姿勢で、「なぜだめなのか」を説いている。みなさん読んでください。

その一方で、ゲーム脳について鬱なニュースがふたつ。
ゲイムマンさんからの私信で知る。

大阪で、大きなゲーム脳講演があったようだ。

リンク: 10・29子どもの教育を考える講演会:西村眞悟と行動する「真悟の会・堺」.
リンク: 市ノ沢充、堺から政治を斬る!: 10月29日、子どもの教育を考える講演会に参加して.

さっそく、感情的な応酬もコメント欄にて。
この場では、ゲーム脳について「それおかしいですよ」というだけで、「不愉快」「変だ」「偏っている」というふうに思われてしまう磁場が発生しているもよう。

さらに、イヤーなのが、こっち。

リンク: 元気な脳のつくりかた

森氏の「元気な脳のつくりかた」が、日本PTA全国協議会推薦図書になったのだそうだ。
これはすごくショックだ。

ちなみに、この日本PTA全国協議会、というやつだけど、ぼくも会員です。
小学校のPTAに普通に在籍すると、そのまま区や市のPTAなどを経て、会員になっているので。

ワースト番組問題といっしょに、なんとかしたいぞ。
しかし、なんとかできる具体的プログラムは今のところ目の前になし。


休みばかり

2006-11-14 06:26:33 | 日々のわざ
開校記念日やら、学芸会の振り替え休日やら、「祝日」やらで、「平日」のくせに息子が休みの日が続く。
それだけでばたばたする。
一ヵ月後に迫ったニュージーランド行きの準備をそろそろ始める。正確には、息子にあれやこれやとやってもらう。
双眼鏡をもうひとつ買おう。
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こういうタイプのやつ。ちょっと重たいけど、手ぶれ補正はかなり使える。


星と半月の海、進捗状況など

2006-11-12 07:16:11 | 自分の書いたもの
「中身」はもうすべて手を離れて、どう売るか、という領域。
考えてみれば、あと3週間もたたずに書店に並ぶわけだ。
ちょっとネットでも「立ち読み」できるようにしようかな、とか、いろいろ検討中。

リスクテイカーの頃の古いカワバタが好き、というコメントをたてつづけにもらう。リアルライフでネット巡回の中で。
そうか、もうあれは「古い」のだなあと感慨にふける。
そういうのがバリバリ売れればもっと書けるんですが……もっと書かせて下さい! とお願いしておく。

とりあえずは、疫学ものが久々の「それっぽい」ものになりそうな気配だが、来年こそはなんとか、だ。
ほんと、書き下ろしはつらい。

「てのひらの中の宇宙」、風野春樹さんがSFマガジンで軽くレビューしてくれた。
とてもうれしい。
「我がタマシイはSFにあり」と公言してはばからないぼくだけれど、成人してからは日々、目の前にあることの方がSFになってしまった。だから、こういう作品を書く。
そういうスタンスを理解してくれるのは、SF読み、それも、非SF作品にもポジティヴなまなざしを保っている越境的なSF者が多い。「川の名前」の時にも、そう感じた。

というわけで(?)、「星と半月の海」。
あと一息。
新しく読者ごと開拓しなきゃならないタイプの小説かもしれず、どきどきしつつも、あれこれ考え、「売り」にかかります。
近々、ブロク上でキャンペーン開始(かも)。




疫学を語るために読んでおこう!という三冊

2006-11-10 11:27:39 | ひとが書いたもの
喫煙関連エントリで来訪者が多い今、ささっと紹介。
疫学ってなによって人は、読んでくださいという本を三冊。いずれも実務家というよりも、知識として知っておきたい人むけ。

宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2005-12
まずこれは肩慣らし。地球を征服しに来たしまりす君と一緒に医療統計を勉強しちゃってください。こういう書評も書いたことあります。
ちなみに、この本を読んだ方から、「医療統計と疫学はとうちがうのか」という質問を受けることがあるのだけれど、なんと答えるのが適切ですか>津田さん。

市民のための疫学入門―医学ニュースから環境裁判まで市民のための疫学入門―医学ニュースから環境裁判まで
価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2003-10

で、その津田敏秀さんの入門書。
これもエントリーレベル。たばこの問題が気になっていて、とはいえ疫学って何? というような需要に応えてくれてあまりあるでしょう。

ロスマンの疫学―科学的思考への誘いロスマンの疫学―科学的思考への誘い
価格:¥ 2,625(税込)
発売日:2004-08

さらに、それで興味を持ったら、こちらまで。
ロスマンは、疫学の泰斗。彼の教科書の翻訳が望まれて久しいけれど、こちらは入門書。でも、がっつりといろいろ書いてあるので、統計学の専門的なトレーニングを受けたことがない人(たとえばぼくみたいに、大学教養過程であつかった程度)ががんばって読むのにちょうどいいです。

週刊ポストの受動喫煙記事に対するコメント2(オッズ比をめぐって)

2006-11-08 16:54:46 | 喫煙問題、疫学など……ざっくり医療分野
週刊ポストの記事でひとつのポイントになっているのが「オッズ比」という概念。
「相対危険度」(リスク比)とともに、疫学ではとてもよく出てくるのだけれど、直観的にわかりにくい部分がある。
そこで、自分の知識の整理もかねて、一生懸命解説してみます。
実は前のエントリで、かなり頓珍漢なことを最初、書いてしまった反省も込めて(修正済み)、力作。しかし、リーダビリティの自信はなし。

具体例。
あるイベント会場で、百人のスタッフが仕出し弁当をたべて24時間以内に10人が下痢になりました。
この時、10/100で、つまり、0.1というのが、「食べた人が下痢になるリスク」。
ところが、仕出し弁当を食べなかったスタッフも百人いて、その人たちは24時間以内に1人が下痢の症状が出ました。
1/100で、0.01が「食べなかった人が下痢になるリスク」です。

ここで割り算。
0.1/0.01=10
つまり、リスクの比率、リスク比は10倍。

つまり、この時にイベント会場で出された仕出し弁当をたべると、食べないよりも10倍下痢になりやすい(なりやすかった)、と言えるわけで、リスク比はとても直観的に理解しやすい概念といえます。

では、もう片方の大事なリスク指標オッズ比。

まず、最初に寄り道をすると、オッズという言葉、競馬でよく使われますよね。
ここでいうオッズも同じoddsです。
オッズが3の時、人々はその馬が0.75の確率で勝つと予想しています。
その時の計算式は、0.75/(1-0.75)=3です。
もう少し分かりやすくいうと、0.75の人が勝つと思っていて、0.25の人が負けると思っている。よって0.75/0.25という比率。
疫学でいうオッズも、この式の形は一緒です。
(注・ここで書いているのは本場のブックメイカーが使うところのオッズ概念です。日本の競馬など公営ギャンブルの場合は払戻金の倍率をオッズと称しているようで、この場合、まったく別の話です)。

その上で、疫学に戻ります。
一般に、何かの病気が発生する時、原因があらかじめ分かっているわけではありません。
さっきの具体例の場合、まず下痢になった人が11人いて次の日仕事を休んだりするわけです。
そこで、原因を考えるわけですが、口にしたものに食中毒菌が入っていたことによる食中毒かもしれないし、当日出入りした誰かが持っていたウイルスによる感染症(ノロウイルスとか)かもしれないし、ほかの何かかもしれない。食中毒だとしても、例の仕出し弁当のほかにも口にしたものはたくさんあるでしょう。
そんな中、仕出し弁当が怪しいということになったら、ここではじめてオッズ比を考える局面になります。

ここでいうオッズとは、まず、下痢のになった人の「弁当曝露オッズ」(仮称)です。
11人のうち、10人がその弁当を食べているので、11のうちわけは、曝露10、非曝露が1(さっきの競馬でいうと0.75と0.25に相当する)。つまり、オッズは10/1=10です。

一方、下痢にならなかった人の「弁当曝露オッズ」も求められます。
翌日、元気だった(下痢にならなかった)スタッフは189人いるわけですが、そのうち曝露は90人、非曝露は99人です(わかりますよね。それぞれ100人から下痢の人を引きました)。
よって下痢ならなかった人のオッズは、90/99です(少数が面倒なので分数のまま表記します)。

これらの比をとると、(10/1)/(90/99)=990/90=11となります。
これがオッズ比です。やっとたどり着きました。

これって、さきに出てきたリスク比の10とくらべて、わりといいかんじの近似になっています。

これがなぜある条件下で、数学的にリスク比の近似になりえるかというのは、このあたりを読んでいただけると分かるので、追究したい方はどうぞ。

で、世の中では(高岡助教授は?)、リスク比は信頼できるけれど、オッズ比は信頼できないというような偏見があるかもしれないと、今回感じました。

でも、そういうわけでもないんですよね。
リスク比を出せる場合は、そのほうが直観的に分かりやすい表現になるので、その方がいいかもしれないけれど、実際問題としてリスク比は求められないのに、オッズ比は求められることがよくあるからです。

リスク比が計算できるのは、母集団がはっきりしている場合です。ですから、最初から集団を追跡するコホート研究などでよく算出されます。
一方、オッズ比は、母集団がはっきりしない場合でも適用可能であり、そこで威力を発揮します。さっきの具体例は母集団がはっきりしているものなので、リスク比もオッズ比も計算できたのですが、本来の持ち味は「適切な対照群を設定すれば、母集団に立ち入らずにリスクを比較できる」という部分です。

以上、リスク比とオッズ比の違いについて、延々、書いてみました。
しかし、やはり分かりにくいなあ。

オッズ比を日常的な言語で分かりやすく表現する方法、なかなか見つかりません。

ただ怪しいもんじゃないですからね(笑)。

日本で、「コホート研究至上主義」と「オッズ比はちょい分かりにくい」ことは、どこかで連動しているかもしれませんね。

そのあたりは、また今度。

このエントリ、分かりやすくできるなら、また書き直すかもしれません。

週刊ポストの受動喫煙記事に対するコメント1

2006-11-08 08:06:59 | 喫煙問題、疫学など……ざっくり医療分野
週刊ポストの「受動喫煙は子どもの発ガンリスクを減らす」の記事、読みました。
あやまりであったり、ミスリーディングだったり、という部分があるので、まとめておきます。
ちなみに、高岡健・岐阜大学医学部助教授の発言もおかしなところが多々あるのだけれど、こういうのは記者のまとめ方ひとつで随分印象が違ってくるので、高岡助教授本人も、こういう出方をして忸怩たる、という部分はあるのかもしれないと想像しつつ、全体として、やはり不用意な発言をされていると思います。
まず最初に、元論文は封印なんかされてません。
ここでちゃんと公開されています。

おまけに、WHO傘下のIARC(国際がん研究センター)のメタアナリスシス(2004年に発表URL分かれば記入します)にも組込まれています。つまりその「成果」も織り込んだ上で、WHOは受動喫煙の害を考えているわけです。

これは封印、とは言わないよね。普通。

さてさて、本文ではオッズ比についての誤解がいきなり出てきて、出鼻をくじかれますね。
オッズ比が統計的な尺度というのはある意味では本当(必ず統計的な処理と共にあらわれる概念なので)なのだけれど、これはタバコの煙に曝されている人が曝されていない人に対して、どれくらいリスクが高いかを示した数字であって、本文中の高岡助教授の発言は限りなく「間違い」です。

オッズ比とは、相対危険度(リスク比)の近似値だとよく表現されます。
近似だから信用ならないというのは早計で、肺がんを含めて一般にたばこ病とされるような疾病(それぼと頻度だ高くない病気の場合)ではだいたいオッズ比はリスク比と近くなると考えてよいようです。になみに、オッズ比とリスク比の関係については、別エントリ。

さらに、高岡助教授の発言で変なのは、95パーセント信頼区間がオッズ比1をまたぐことを異常に重たく見ていること。

たとえば1.16(0.93-1.44)と書いてあったら、左側の0.93は1より小さいですね。95パーセントの信頼区間で、1よりも小さくなっているということは、たしかに、その分、信頼性は低いわけです。

ただ、今、受動喫煙はせいぜいリスクの増加が1割とか2割なわけで、それをこれだけのサンプルサイズで有意な結果を出すことは不可能なんですね。

だから、統計的に有意かどうかだけを論じるのは、疫学ではよくないことだとされています。ロスマンもそう言ってます(「ロスマンの疫学」参照。第6章あたり)
人間が設けた95パーセントという水準はただの目安ですしね。

じゃあ、どうするかと、というと、複数の研究を統合してサンプル数を増やして、精度の高い数字を導きます。それが、メタアナリシスという手法。

だから、この論文自体、「衝撃データ」というわけでは決してないわけです。
「議論すべき」というのだけれど、この論文も組み込んだメタアナリシスは、2004年発表のIARCのものがあるので、もう議論も済んでいると考えてよいでしょう。
ほんと、封印なんて、されてませんって。

ちなみに、高岡助教授は、「1をまたぐということは、サンプルを増やせば1になることを意味する」という主旨のことを述べていますが、それは間違いです。
このメタアナリスで多くのサンプルを扱っても、決して1になったりはしていませんしね。

あと、子どもの受動喫煙が、肺がんリスクを下げるというのは、著者自身も「たまたまそうなっちゃった」みたいな説明を論文内でしています。それが「真」の値であるとは著者はまったく思っていないようです。当然、ほかの研究とあわせたメタアナリシスで評価されるべきことですしね。

ちなみに、中澤君が紹介してくれたJTのまとめ資料によると、受動喫煙の関する研究報告で、「受動喫煙の影響が統計的誤差をこえて認められた論文」は全体の12パーセントだけだそうです。
たぶんこれによって、いかに受動喫煙の害がなさそうであるかとを強調したいのだと思いますが、むしろこれは自然です。
1割、2割のリスク増を追究する際に、極端に有意な結果が、少ないサンプルサイズで出たら、それはむしろ疑ってかかるべきです。
ほかの要因があって、オッズ比を押し上げているのではないか、とか。

じゃあ、1割、2割、というのは大したことないので、リスクとして問題にしなくてもいいんじゃないかという意見も時々ききます。
たしかに、さらされる人が多くなくて、疾病自体も稀、でれあれば、大したことがないかもしれません(症例が少なければそもそもこれくらいのリスクは追究しようがないですしね)。
でも、受動喫煙の場合は曝されている人が多く、肺がんほか多くのたばこ関連疾病も我々にとって無視できないくらいの症例がある病気なので、1割、2割のリスク増は、我々の社会に大きな数字として跳ね返ってきます。
また、個人の一生としては、さらに大きな影響をもたらします。
だから、疫学はそのあたりがんばって因果関係を追究していくわけです。


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以下、以前のエントリでコメントくださった津田さんと中澤君のコメントをここで採録しておきます。コメント欄だと見逃す方が多いと思うので。


まず津田敏秀さん(岡山大学大学院環境学研究科・疫学)

週刊ポストの記事とその元の論文の両方を早速入手して読みました。高岡助教授は、精神科出身で疫学のトレーニングは全然受けていないようです。解説の最初「最上段のの項目にある1.16という数字は、喫煙者と同居して受動喫煙にさらされている非喫煙者の肺がん罹患率が、喫煙者と同居していない非喫煙者より1.16倍高くなるということではありません。これは『オッズ比』という統計的な尺度です。」という部分からいきなり間違っています。「…倍高くなるということです」というのが正しい表現です。基本になる指標に対する解釈から間違っています。
 また、この見出しの0.78という数字の解釈も論文の考察に載っています。そもそもこの人は、受動喫煙に関してどれだけの論文が出ていて、その結果はどうだったのかということに関する知識が全くないようです。また研究間で、結果の数字がばらつくことに関して、どのような扱いをするのかということも知らないようです。まあ、オッズ比の解釈(医師国家試験のレベル)も知らないわけですから無理もありません。
 精神科の助教授で専門外と逃げを打っても言い訳にはならないでしょう。
 一応以下のようなコメントをしておきました。
??????????????
 早速、表記の記事と1998年10月7日号のJ Natl Cancer Instの論文を取り寄せて見ました。結論から言うと、岐阜大学の高岡助教授の読み間違いですね。ご本人の疫学知識はほとんどゼロに近く、よくまあ、これで疫学論文の評価をするなという感じです。ご本人も議論をするべきだとおっしゃっていますので、いつでも公開討論会をすればいいと思います。そのときは、私が出ても構いません。週刊ポストの記事もそのような趣旨ですので、週刊ポストにアレンジしてもらって立ち会ってもらうのも良いでしょう。
 面倒くさいですが、日常に彩りを添えてくださったという感じです。でも記事の内容から見て、厚生労働省の動きに対応したものと思います。
???????????????
 引き続き、失礼致します。高岡健助教授は、雑誌「精神医療」(批評社)の編集委員みたいです。この雑誌は精神科臨床の問題に関して、きちんと議論するのが売りみたいな雑誌ですので、この雑誌の編集委員会宛に、高岡助教授との公開討論会を申し入れるのも良いと思います。このような非科学的な見識を披露する医師は、精神科の患者の人権を踏みにじっている可能性があるので、きちんと面会して議論したいという感じでいけると思います。ご参考まで。
精神医療
http://www.hihyosya.co.jp/jun/j02.htm?121,38


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さらに中澤港さん(群馬大学医学部・人類生態学)

このエントリを読んで,つい週刊ポストを買ってしまったんですが,記事からだけでは殆ど何もわかりません。元の文献へのreferもないし。買うほどの価値はないと思います。
既に津田さんがコメントされているので,疫学的にはこの上追加することもないんですが,IARC 650 1542でgoogleでウェブ全体で検索してみたら,いろいろわかったので参考までに書きます。
この話は新事実がわかったとかそういうことでは全然なく,1998年にサンデーテレグラフ誌が取り上げて論争済みの話だったようです(週刊ポストの論調がサンデーテレグラフと同じで笑えます)。
http://www.ash.org.uk/html/passive/html/pcc.html
を見ると経緯がわかります。当時のBMJとか2000年のLancetをみると,タバコ会社に戦略的に利用された結果だったようです。
http://bmj.bmjjournals.com/cgi/reprint/316/7135/944.pdf
http://www.ash.org.uk/html/passive/pdfs/lancet080400.pdf
http://www.forces.org/evidence/files/pasmo.htm
なんかも,有意に出なかったのは人数が足りないか(その前年にBMJの315: 973-80, 980-8.に載っているメタアナリシスでは有意なので)デザインが悪いかだろ! だからBMJからリジェクトされてるんだろ! って感じで笑い飛ばしています。
ただ,実はこの話,JTもまだ宣伝に使っているようです……ていうか,週刊ポストの論調はこれそのものですね。
http://www.jti.co.jp/JTI/attention/20060302/material.pdf
でも,元論文は隠されているわけでもなんでもなく,ちゃんとフルテキスト公開されています
http://jncicancerspectrum.oxfordjournals.org/cgi/content/short/jnci;90/19/1440
で右にあるfulltextのリンクをクリックすれば開くと思います。
子供のときに曝露があった方がリスクが有意に下がっている結果(表2)は,著者自身はDiscussionの中で,相対リスク1(効果なし)あたりのsampling fluctuationだろうと言っていて,とくにメカニズムとかは何も論じていません。
case-controlなので,子供の頃曝露して若年で発病して亡くなってしまった人はこのcaseには入らないので,そこがバイアスになるということが考えられますね。

著者の文脈にそって考えても,sampling fluctuationで有意になったという文章が意味するところを素直に受け取ると,この論文の分析対象が5%未満のrare sampleだったということになりますよね。
結果全体の代表性が疑われることを著者自身認めているという,何ともトホホな論文だなあと思うのは,ぼくだけでしょうか。

気になっている二冊。

2006-11-06 20:28:00 | ひとが書いたもの
へなちょこカミキリロード―初心者のためのカミキリムシ入門へなちょこカミキリロード―初心者のためのカミキリムシ入門
価格:¥ 1,890(税込)
発売日:2006-08

この本は、この採集記の方の手になる入門書。すごく楽しそう。きれいなやつを見つけて、写真撮りたいなあ、と。
社会格差と健康―社会疫学からのアプローチ社会格差と健康―社会疫学からのアプローチ
価格:¥ 3,570(税込)
発売日:2006-08
こちらは、社会疫学というからには、社会学に症例対照研究とか、疫学的な方法を持ち込むだろうなあと想像しており、気になって仕方ない。ちょっと調べてみると、「格差」が健康を左右するということを疫学の方法でゴリゴリにやっていて、アメリカではアカ呼ばわりされることもあるらしい。
結論としては、症例対照研究もするけれど、社会学との融合というところまでには至っていないような。でも、興味津々。

受動喫煙は子どもの発ガンリスクを減らす(追記あり)

2006-11-06 06:33:04 | 喫煙問題、疫学など……ざっくり医療分野
というのは、本日発売の週刊ポストの特集テーマ。今新聞で広告をみて知りました。
「欧州7ヵ国において、650人の肺がん患者と1542人の健常者を比較して実施された疫学調査の結果。禁煙運動の立場から見ればあってはならないデータだが、隠蔽されることは許されない」(高岡健・岐阜大学医学部助教授)。
とのこと。
さて、どんな記事なんでしょうかね。
ちなみに「成人男女も『影響なし』」。「WHOが封印した7年間の研究成果」ということなので、きっとみんな知らなかったあっと驚くような研究なんでしょう(笑)。

広告の中の説明からすると、おそらくは症例対照研究であって、肺がんという病気に対して、親がヘヴィスモーカーだった人(曝露群)と、親がヘヴィスモーカーじゃなかった人との間で比べたら、曝露群の方がリスクが低かったという結果がでたんでしょうね。

興味深いです。
どうやったら、こういう結果がでるのか。
時間がある時に、読んでみます。

高岡助教授は、精神科医なのですね。
どうしちゃったんだろ。

追記
下に津田さんと中澤君のコメントがあります。役に立ちます。
それも含めて、こういうエントリ、書いておきました。
リンク: 週刊ポストの記事に対するコメント.

情報を捨てること

2006-11-05 16:06:53 | きうらきら光ったりするもの
R0012807味の素スタジアムでのサッカー大会。GR digitalの白黒モードで撮ってみた。きっかけはというと、この前、カレンダーコンテストでご一緒した横木安良夫さんとの会話。

どういう流れか忘れてしまったけれど、デジカメでRAWで撮るかJpegかという話で、横木さんはJpeg派。
いや、それ以前の問題として、カラーの仕事はすべてデジカメだという。「フィルムの方が情報量が多いから」なんてことは、言わないのだ。

横木さんいわく「写真を撮るということは、この世界の無限ともいえ情報量の中から一部を切り取って、そのほかのすべてを捨てること」(正確な言い回しは忘れたけれど、そのような意味のこと)。
そりゃあ、そうだ。とても納得してしまった。

どのみち、RAWで撮っても自分で「現像」して、とか面倒だし、選択の幅が広いのが逆に煩わしい。
いっそ、Jpegでいいや。
横木さんですらそうなのだから、ぼくみたいな立場の者(写真をみずからの表現手段としては捉えていない)がRAWだのJpegだのと悩んでいても仕方ない。ちゃんと、見る人に何が写っているか分かるものが撮れればよいわけで、Jpegに決定。

おまけに、白黒写真、撮りたくなった。

で、味スタ。
なんかよく分からないけど、悪くない。
亜南極でもきっと撮る。
もっと「はまる」気がする。

え?準優勝??

2006-11-04 20:44:36 | サッカーとか、スポーツ一般
Img_9061味スタにて、息子のサッカー大会。ある指導団体の東京のチームが一同に会しての決戦。びっくりした。16チームの中で準優勝。うちの子はこの夏からだけど、もう何年もやっている子の保護者たちが興奮している。こんなの初めてだ!と。

客観的にみて、うちのチーム、強くない。
人数が揃わないので、ほかのエリアのチームと合同で無理に一チームに仕立てている。もちろんぶっつけ本番。
だから、コンビネーションもへったくれもあったもんじゃない。

おまけに、フットサルサイズのコートに、十人制で詰め込むから、やはり団子になりがち。
ところが、これが逆に功を奏する。
つまり、「実力差の圧縮」が起こってしまうのだ。

団子の混戦に持ち込みつつ、ロングスローができるキーパーと、速攻で一人、二人くらいなら抜いてシュートできるうまい子が、ほかのエリアの方にいて、その子たちに助けられて勝ち上がった。

ちなみに、うちのチームの子たちはぱっとせず。
とりわけうちの子はぱっとせず。

でも、個人比としては、とてもがんばっていたので、拍手。
顔にボールが当たって泣いた時にはどうしようかと思ったけど、ちゃんと復帰して走り回ってた。
メダルはもらえなかったけれど、賞状をもらって誇らしげだった。

保護者競技で、ぼくもピッチに立つ。味スタだし、やるでしょ(ただし、天然芝ではなく、周囲の人工芝の部分)。
ボールタッチが少なくて不満。
サイドを駆け上がり、守備に戻り、切れ込み、サイドチェンジし……走り回るのしかないのですね。技術がないものとしては。
ごれって、ごくあたまりえのように、息子のプレースタイルらしきものとそっくり。やっぱり遺伝だ。

ただ、ひとつだけ違うのは、ぼくの方が徹底的に走る。息子よ、見習え!
攻守の切り替えに敏感、とにかくダッシュ。
おかげで、ゴール前のこぼれ球はだいたいもらうし、シュート三本打ったのは、ぼくだげでした。
そのうち二本、バーやらポストやら。
残りの一本は、大きくふかしてとんでったのでした。

試合は二対二で引き分け。予定調和のごとし。

たいそう楽しかったです。

over80で中村俊輔に勝つための朝練

2006-11-02 06:25:13 | サッカーとか、スポーツ一般
シニアフットボーラー、カテゴリーover80くらいで日本代表をねらっているぼくは、近所の公園で朝練を始めた。
息子が学校に行くまでテレビばっかりみているいるので、視力落ちるぞ、つきあえ、とばかりにつれだす。
朝練というのは実に甘美な響きだ。友人の中澤君が息子さんや娘さんと一緒にやっているのを知っていて、うらやましかった。

それで、ただボールを蹴る。
テーマはロングボールを強く正確に。
わりと縦長の公園なので、距離をとることができる。
視力のことをダシにして息子を連れ出しているので、近く・遠く視点が大きく変わる運動ということで。

結果……二週間もやれば、ずいぶん精度が上がる。
インフロントキックの曲がりもかなり計算できるようになってくる(あんまり曲がらないけど)。

以前、岡田監督に会った時に聞いたけど、サッカーって何歳になってもうまくなる。
技術の習得曲線がゆるくて、日本代表だった岡田監督ですら、毎日キーパーの練習につきあって蹴り続けるとプレイスキックの精度や質が上がってきたそうだ。つまり、監督になってからうまくなった。今、一時的に監督ではないけれど、また、きっともっとうまくなる。

というわけで、目指せover80日本代表。

なんて冗談言いながら近所で朝練。
楽し。

すでに、かなり暑苦しい。

2006-11-01 18:49:18 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
いろいろと考えるところがあり、PTA関連のエントリをしばらく書かないことにします。
我ながら、暑苦しいっていうのが第一の理由。
この話題、本当にエキサイトしちゃうんですよね。
基本的な問題意識はそのままに、しばらく頭の中で発酵させます。
で、腐る前にちゃんとアウトプットしますが、とはいえ、もう少したってから。



どこが暴論なのか。あるいは暴論ではないのか。

2006-11-01 08:30:11 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
カジュアルな会話の中で、言いたいことを言い合ううちに、出てきた知人の発言。

PTAの任意加入にこだわるなら、そういうところ(小学校)を探して子どもを入学させればいいじゃないか。この学校に来た以上、こういうPTAも選んで入ったってことになるのではないか。

これが、すごく暴論に聞こえる。
なぜだろう。
もちろん、ぼくが住んでいる場所で子どもに無理をさせずに通える範囲内で、そんなところがないという現実問題はあるのだけれど、そういう問題じゃないのだ。

ひとつは、とても巨大な不寛容を内蔵した発言だから。
排他的で、優しくないから。
でも、それだけでもない。

ぼくはその発言者に、なぜそれが暴論なのかうまく説明できなかった。
彼女は、正当な理由なくPTAにかかわらない人を「ずるい」と感じる感受性の持ち主。
寄って立つ感情的・論理的基盤が違う人にそれを伝えるのはとても困難。

意見の違いは違いとしてあってよいのだけれど、ぼくは不寛容とは闘わなきゃならんので(じゃないと息苦しくて死んでしまいそう)、なぜ暴論と感じたか伝えたい。

というわけで、これが暴論だと思う人、なぜ暴論なのかご自身の言葉で表現してみてくださいませんか。

逆に、そんなの暴論じゃないと思う人も、歓迎。

それぞれ、参考にさせていただきます。

人が書いたコメントなんて読まずに(重複など気にせずに)、書き殴ってくださって結構です。