細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●ピーター・ホワイトの軽く乾いたビーチ・ビートに酔う心地のいい宵。

2013年05月10日 | Weblog

●5月8日(水)18−30 丸の内<コットンクラブ>
☆『ピーター・ホワイト/ライブ』Peter White Live Stage (1st)<100分> ★★★★
出演/ピーター・ホワイト(ギター)マイケル・パウロ(サックス)グレッグ・カルカス(キーボード)ネイト・フィリップス(ベース)エリック・バレンタイン(ドラムス)
たまたま結婚記念日でもあり、すぐ隣にできた「KITTE」のテラスレストランで、早めにサパーを済ませてコットンクラブに出かけた。
1年ぶりのピーターは、相変わらずのアロハシャツで、「ヒア・ウィー・ゴー」から乗せる。
「ジョイ・ライド」、「スウェプト・アウェイ」、「シーズ・イン・ラブ」など、お得意の爽やかなリズムで、あっという間のショウだ。
またしてもサングラスをかけて、007のテーマで笑わせたり、バカラックの「ルック・オブ・ラブ」もサービス。
このサウンドの気分の良さは、軽いジャズのフィーリングと、ラテン・ロックのリズムの調和だろうか。
すこぶる耳心地がよくて、時間を忘れてしまうのだ。
よくフュージョンだとか、ライト・ジャズだとか、クロス・オーバーだとか、クラブ・サウンドだとか、いろいろ言われるが、
ま、サウンドのジャンルなどはどうでもいい。美しい夕陽のビーチにあるスタンド・バーのカウンターの似合う音なのだ。
そこには、クリエイティブな堅さはない。スムース・ジャズという妙語もあるが、もっと、おしゃれである。
おとなの、というにはダイナミックで、アフロな粗さもあって、セクシーでもある。
前回よりは、サックスや、ベースのフィーチャーが多く、エリックのビートは分厚くて低音にパワーが増加。
アンコールには「2001年宇宙の旅」のテーマをラップ風にビートを効かせて喜ばせてくれた。
休憩時間にはサインを貰いツーショットにも肩を組んでくれたピーターに「シー・ユー・アゲイン」と言ったら、固い握手のグリップは強かった。
さすがは、スーパー・ギタリストの握力だ。

●5月10日(金)、11日(土)と「コットンクラブ」で上演中。


●『25年目の弦楽四重奏』の燻し銀なレイト・コンサートの感慨。

2013年05月08日 | Weblog

●5月7日(火)13−00 九段下<角川映画試写室>
M−055『25年目の弦楽四重奏』A Late Quartet (2012) westend films / RKO pictures
監督/ヤーロン・シルバーマン 主演/クリストファー・ウォーケン <106分>配給/角川書店 ★★★☆☆☆
ニューヨークを拠点にして、25年もの間、チームを組んでいた弦楽四重奏団にも時の試練が訪れた。
最高齢のチェロ奏者のクリストファーが、体調を崩し、医師の診断でパーキンソン発病を告げられたのだ。
このところ「コーラス!」や、「クァルテット」など、高齢者と音楽をテーマにした新作が多いが、これが一番いい。
傍目には,それほどの問題はないようだが、そこはクラシック音楽の専門家の世界。譜面をごまかす訳にはいかない。
25年間も家族同然のようなチームを組んで、半年はコンサート活動などの世界演奏旅行をしていたカルテットだが、ひとりの比重は意外に大きい。
正方形の完璧な関係も、この病欠でガタガタと崩れる。
その人間的な関係の弱さが、まるでウディ・アレンの「インテリア」のように、正に高額な明の陶器のように割れてしまう。
凍てつくセントラルパークの氷のような、繊細で冷たく素晴らしいロケーションがいい。
2人のアカデミー受賞者と、ひとりのノミネート女優などの、この4人のキャスティングが素晴らしい。
フィリップ・シーモア・ホフマンなどは、おそらくヴァイオリンの演奏は出来ないだろうが、絶妙の演奏と演技を見せる。
同様に、チェロの紅一点、キャサリン・キーナーも、さすがにベテランの存在感が光る。
それは、実にシンプルでコントロールされた、ヤーロン監督の演出の確かさが安定していて、実におとなのドラマになっている。
ラストの感動的な幕切れなどは、クラシック音楽の質素なステージでは当然なのだろうが、その苦笑いが実に上質だった。
それにしては、この邦題の味気なさ。原題の「レイト・カルテット」から、もっと味のあるタイトルにして欲しかった。

■渋い左中間への当たりだが、正確に野手の間を抜けてフェンスに転がるツーベース。
●7月6日より、角川シネマ有楽町などでロードショー


●『とまどい』のM・セローが4月のサンセット傑作座・ベスト!!

2013年05月05日 | Weblog

●4月の二子玉川サンセット傑作座(自宅)上映ベストテン

1/『とまどい』95(クロード・ソーテ)主演/ミシェル・セロー(LD)★★★★☆
   回想録を若い女性秘書に代筆させている孤高な老人は、多くの蔵書を処分して離婚していた元妻と最後の長旅に出る。

2/『ピアノ・ブルース』03(クリント・イーストウッド)ドキュメンタリー(DVD)★★★★
   デイブ・ブルーベック、レイ・チャールズ、ピート・ジョリーらと連弾しながら語り合うクリントの至福の笑顔。

3/『サンフィアクル殺人事件』59(ジャン・ドラノワ)ジャン・ギャバン(DVD)★★★★
   田舎の古城に住むかつての恋人から依頼を受けたメグレ警部は、久しぶりに年老いた彼女に会うが、殺人事件が起こる。

4/『追跡』62(ブレイク・エドワーズ)グレン・フォード(LD)★★★☆☆☆
   呼吸障害のあるストーカーの被害報告を受けたサンフランシスコの刑事は、巧妙な誘発の手口で容疑者に罠をかける。

5/『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』76(ジョン・カサベテス)ベン・ギャザラ(DVD)★★★☆☆
   賭博で借金をつくり、組織から代償を迫られた安キャバレーのオーナーは、殺しを頼まれ胴元の中国人の屋敷に侵入するが。

6/『田舎の日曜日』84(ベルトラン・タベルニエ)
7/『サボタージュ』30(アルフレッド・ヒッチコック)
8/『ゴーストタウンの決闘』58(ジョン・スタージェス)
9/『サヨナラ』57(ジョシュア・ローガン)
10/『コレヒドール戦記』45(ジョン・フォード)

※その他に見た傑作は
『ジーリ』03/ベン・アフレック
『リバース・エッジ』86/キアヌ・リーブス
『ガラスの鍵』42/アラン・ラッド
『果てしなき夢』54/ディーン・マーティン
『ユー・マスト・リメンバー・ジス(ワーナー映画の歴史)』08/クリント・イーストウッド
『拾った女』53/リチャード・ウィドマーク・・・・などでした。


●『アンコール!!』したいほどの歌ではないな。

2013年05月03日 | Weblog

●5月2日(木)13−00 六本木<アスミック・エース試写室>
M−054『アンコール!!』Song for Marion (2012) steel mill pictures / coolmore production U.K.
監督/ポール・アンドリュー・ウィリアムズ 主演/テレンス・スタンプ <94分>配給/アスミック・エース ★★★
ロンドン郊外のご近所老人合唱団で唄っていたヴァネッサ・レッドグレイブが、ガンの再発で亡くなった。
息子とも折り合いの悪い老父のテレンスは72歳。孤独な趣味のない老人はひとりきりである。
葬式の見舞に来た合唱団「年金ズ」の女性指揮者は、お互いに孤独な生活を癒すために、唄うことを老人にすすめる。
ま、よくあるような老人の生きがい啓発のテーマだが、どうも底が薄い演出で、アイデアがない。
先日見たダスティン・ホフマン監督の「カルテット」は、老人たちと音楽の交流を巧みに描いたが、これは工夫が足りないのだ。
結局は秀作「ブラス!」のように、地域の合唱コンクールに出て、突然、テレンスが唄って入賞する。
しかし、とてもとても「ブラス!」のような、あの素晴らしい感動には、残念ながらほど遠い出来だ。
つまり、テレンスの名優としての異様なキャリアが、突然、ステージでバラードを唄うような柔軟性とは合致しないのだ。
トム・ウィルキンソンか、ジム・ブロードベントだったら、もっと共感が持てたろう。
しかも唄った歌が「シナトラやディーン・マーティンしか知らん」という割には、われわれには馴染みの薄い曲を唄う。
せめて、エルトン・ジョンの「ソング・フォー・ユー」か、ミック・ジャガーの「アンジー」でも唄ってくれたら泣けたのに。
ま、とはいえ、同じようなコーラスを唄うのがお好きな高齢者には、ジーンとくるシニア・メロドラマかも。

■ふらりと上がった平凡なセカンドフライ。
●6月28日より、TOHOシネマズ シャンテなどでロードショウ


●セレステとジェシーが、4月の試写ベストでした。

2013年05月02日 | Weblog

●4月に見た新作試写ベスト4

1/『セレステ∞ジェシー』監督/リー・トランド・クリーガー 主演/ラシダ・ジョーンズ ★★★☆☆☆
   夫の浮気で愛人に子供ができた。愛しているが妻は離婚して無為な三角関係は避ける。実に聡明で洞察の深い愛の傑作。

2/『グランド・マスター』監督/ウォン・カーウァイ 主演/トニー・レオン ★★★☆☆☆
   二十世紀初頭の上海を舞台にして、カンフーの極意を争う男と女の愛の遍歴を、アート意識の強い映像美で貫いた武術美学。

3/『終戦のエンペラー』監督/ピーター・ウェーバー 主演/トミー・リー・ジョーンズ ★★★☆☆
   横田基地のタラップを降りたマッカーサー元帥は、昭和天皇の戦争責任を世界に問う任務で皇居に向かったという再現ドラマ。

4/『インポッシブル』監督/ホアン・アントニオ・バヨナ 主演/ナオミ・ワッツ ★★★☆☆
   2004年にスマトラの観光ビーチを襲った大津波に巻きこまれた家族の再会と、その再生を見つめた迫真の実話を忠実に再現。

※その他に見た傑作は・・・
●『バーニー』主演/ジャック・ブラック
●『イノセント・ガーデン』監督/パク・チャヌク
●『ローマでアモーレ』監督/ウディ・アレン
●『L・A・ギャング・ストーリー』主演/ショーン・ペン
●『ハード・ラッシュ』主演/マーク・ウォールバーグ・・・・などでした。


●『エンド・オブ・ホワイトハウス』は「ダイハード番外篇」なのか。

2013年05月01日 | Weblog

●4月30日(火)13−00 六本木<アスミック・エース試写室>
M−053『エンド・オブ・ホワイトハウス』Olympus has Fallen (2013) filmdistrict / millenium film
監督/アントワーン・フークア 主演/ジェラルド・バトラー <120分>配給/アスミック・エース ★★☆☆
武装したテロリスト・グループの輸送機が、突然ホワイトハウスを攻撃して、軍用ヘリの乗ったリーダーが大統領を拘束。
地下のシェルターで、大統領の執務スタッフを監禁して、脱走用のヘリを要求した。
たまたま友好的に会見中だった韓国大統領は殺害され、政府も指令システムが破壊されて、ホワイトハウスは半壊した。
明らかに「ダイハード」の第一作のプロットを頂戴した市街バトル映画だが、発想も短絡すぎて呆れてしまった。
だいいち、ワシントン上空を未確認の武装した輸送機が飛べる筈もなく、護送のヘリも追走して進撃する。
まさに「トラトラトラ!」や「パール・ハーバー」のワシントン版。
派手な銃撃戦で、あっさり主導権を握ったテロ・グループは脱北した戦闘団だが、どうも破壊目的だけのようで先が見えない。
という訳で、これは「インデペンデンス・デイ」のパロディなのか。と、思ったものの、それにしても雑な作品。
あの「トレーニング・デイ」、「ザ・シューター/極大射程」「クロッシング」などのフークア監督がご乱心か。
名優モーガン・フリーマンまでが、老体に鞭打ってのご苦労さまだ。
しかも大統領が軟弱なアーロン・エッカートでは、とてもこの最悪の舞台は収拾つくまい。
これではシークレット・サービスのジェラルド・バトラーの呆れるような孤軍奮闘アクションを見るしかない。
それも、全編、夜間の交戦なので「ゼロ・ダーク・サーティ」のホワイトハウス版で、視界が最悪となる。
よく、レンタルビデオ店にある、出所不明の政治アクション映画のワイド・バージョンの登場だ。

■強打した高い打球だが、詰まってしまってセカンドフライ。
●6月8日より、全国ロードショー