細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『最後のマイ・ウェイ』は、あのシナトラの名曲誕生の秘話。

2013年05月11日 | Weblog

●5月9日(木)13−00 市ヶ谷<シネアーツ試写室>
M−056『最後のマイ・ウェイ』My Way (2012) studiocanal / ufilm belgacom 仏
監督/フローラン=エミリオ・シリ 主演/ジェレミー・レニエ <149分> 配給/カルチャー・パブリシャーズ ★★★
フランク・シナトラが唄った「マイ・ウェイ」は誰でも知っている曲だろう。
それは、歌手のポール・アンカがシナトラのために曲想を替えてプレゼントしたメロディだが、もとはシャンソンだった。
という辺りの事は周知の裏話だった。
この映画は、その「マイ・ウェイ」を作曲したという、フランスの青年の短い生涯を描いたものだが、映画は長すぎる。
ジェレミーが演じるクロードは1939年のエジプト生まれ。
父のスエズ運河の仕事が政変で破綻して、一家はモナコに移住するが仕事はなくて、少年は好きだった音楽のアルバイトをする。
ミュージック・ビジネスに反対していた父は亡くなり、クロードはパリに進出するが、ジョニー・アリディの人気には敵わない。
それで、アルバイト気分で作ったフレンチ・ポップスのラブソングが、なぜかポール・アンカの耳にとまった。
残念なのは、その契機や、シナトラとの接点がないので、ドラマは70年代のポップス界の実態が繰り返し再現されるのだ。
ま、シルビー・バルタンや、アリデイ、オーティス・レディングなどが活躍したポップス時代の気分は味わえる。
「マイ・ウェイ」という曲の人気は、歌詞をシナトラの高齢に合わせて書き直されてヒットした。
ところが、その名曲の発端は、貧しい若者の恋ごころを切なく唄ったものだった、という不思議な事実だ。
多くのガールフレンドとの失恋。ショウビジネスのために自身の体と生命を代償にした短い生涯。
それは、どこかマイケル・ジャクソンや、ボビー・ダーリンの生涯にもダブって見える。
だから、これはシナトラには関わらないで見るべき、ミュージック志望青春の挫折を描いた作品として見るべきだろう。

■大きな滞空時間の長い、平凡なセカンドフライ。
●7月20日より、Bunkamuraル・シネマなどでロードショー