細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『欲望のバージニア』に匂う硝煙の密造酒と、野卑な男たちのダンディなスタイル。

2013年05月15日 | Weblog

●5月14日(火)13−00六本木<シネマート3F試写室>
M−057『欲望のバージニア』Lawless (2012) benariya pictures / filmnation entertainment
監督/ジョン・ヒルコート 主演/シャイア・ラプーフ <116分> 配給/GAGA ★★★☆☆
まだ禁酒法時代だった1931年のバージニア州の山林地帯フランクリン。
その山奥の隠れた森林のなかで密造酒を作っていた3人兄弟の周囲にも、当局の取り締まりの捜査網が迫っていた。
場所は東部で、密造酒の運搬は車を使用しているが、まさにこれは西部劇のスタンスだ。
シャイアは純真な男兄弟の末っ子だが、長男のトム・ハーディはタフガイで誇り高いリーダーだ。
当局の捜査官ガイ・ピアースは異常なほどの執拗さで、密造摘発を楯にして殺戮を繰り返していた。
まさに「荒野の決闘」のクラントン一味と、ワイアット・アープ三兄弟の対決のようだ。
密造された酒はギャングに売られるが、ドラマの構図は傑作「ムーンシャイン・ウォー」の再現となる。
オーストラリア出身のヒルコート監督は、正統西部劇のタフネスを見せて、まるでラウォール・ウォルシュ監督の再来だ。
時代の激変を背景に匂わせながらも、これもアメリカの歴史の変革期。そこを入念な時代考証で描く。
その時代の荒波に、密造酒醸造にプライドを持って家族で法と戦う兄弟愛には、分厚い人間性の結束が見られる。
ボニー&クライドが、デリンジャーが、アル・カポネが、それぞれに戦っていた時代。
この素晴らしい三兄弟の姿も、あの時代を生き抜いたタフなマシンガンの似合う奴らだったのだ。
分厚い銃撃戦と、男同士の決闘。ああ、これがバイオレンス・アクションの基本。温故知新の快作といえる。
オスカー・ノミネートのジェシカ・チャスティンが荒野の野花のような一輪を飾っていていい。

■豪快なライナーが左中間を破りフェンスに達するツーベース。
●6月29日より、全国ロードショー