細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『トゥ・ザ・ワンダー』のハートに沁み入るテレンス・マジック。

2013年05月22日 | Weblog

●5月21日(火)13−00 六本木<アスミック・エース試写室>
M−061『トゥ・ザ・ワンダー』To the Wonder (2012) redbud pictures
監督/テレンス・マリック 主演/ベン・アフレック <112分> 配給/ロングライド ★★★★
またしても、映像散文家のテレンスが「ツリー・オブ・ライフ」のように、人生観、とくに恋愛論を淡々と描く。
ちょっとクロード・ルルーシュの「男と女」のような流動的な映像でモンサン・ミッシェルの潮の満ち干を舞うように見せる。
作家志望だというベンとパリから来たオルガ・キュリレンコは、この旅先で恋に落ちた。列車のなかのラブシーンが流麗だ。
彼女はシングルマザーで、連れの少女がいる。
その後、3人は、ベンが環境資質の調査をしているので、オクラホマの草原地帯の新興住宅に転居するが、溝ができる。
娘が不毛の環境を嫌い、パリに戻り、オルガの心も動揺して、愛は崩れ出すのだ。
揺れる心の問題を、教会の神父ハビエル・バルデムに相談するが、神も人間の自我には無力。
そしてベンには幼なじみのレイチェル・マクアダムスとつき合うようになる。
あまり会話がないので、彼らの心の動きと溝は、見ていて映像の心象風景で察するしかないが、これがテレンス・マジック。
前作同様に、ごく日常的に見える自然の風景に、心の空間を織り合わせて行くタペストリーなのだ。
遥かなる夕陽、遠いジェット機の迂回する雲、広い庭に揺れる木々の陰、ドアに佇むひと・・・・。
まさに映像による現代詩のコラージュが、流れるように映し出されるのだ。
日々の些細なワンダー(発見)がいっぱいに連なると「ワンダフル」となるのさ。と映画は諭しているようだ。
これは、とりとめのない人生の瞬間をスクラップして見せる映像の詩集であって、既存の娯楽性には距離をおいた傑作だ。

★同期の朋友、池田守男君(前資生堂社長)の急逝を知り、ショックでスケジュールを変更して、「心」の整理をした。
生前の旧友としての数々の厚情に、ご冥福を祈りつつ、心から感謝の気持ちをお送りしたい。どうもありがとう。

■ふらりと上がったレフトフライだが、意外に伸びてスタンドイン。
●8月以降、TOHOシネマズシャンテなどでロードショー