細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『ライク・サムワン・イン・ラブ』巨匠が見た日本のラブ・ストーリーの苦い味。

2012年06月23日 | Weblog

●6月22日(金)13−00 築地<松竹本社3F試写室>
M−071『ライク・サムワン・イン・ラブ』Like Someone in Love (2012) フランス motion gallery /日本共同制作
監督/アッバス・キアロスタミ 主演/高梨 臨 <109分> ★★★☆☆☆
フランク・シナトラの唄で有名な、ジャズのスタンダード・ソングがタイトル。
ジミー・ヴァン・ヒューゼン作曲の馴染みの曲だから、ジャズファンはニヤリとする。

しかし映画は甘くない。
妻に先立たれて、定年退職し、もう80歳のひとり暮らしの元大学教授。
どうやら子供はいないようだが、横浜青葉区の市街地に、蔵書に囲まれた知的アパートに住んでいる。
愛妻の若い頃に似た女性を、デイトクラブの斡旋で自宅に呼んで、食事をしようとしたがトラブル発生。
その学生ギャル、高梨には、車の修理工のボーイフレンドがいたが、その関係がこじれていて、せっかくのデイトも台無しになる。
つい一昨年に「トスカーナの贋作」を発表したばかりのイランの監督アッバスは、この完全日本映画を、あのユニークな視線で魅せる。
まるで隠しカメラのような視線で、じっと人間たちの日常的な会話を聞く演出は、ほとんど俳優にも指示はしていないという。
だから、人間関係や家族関係も、よくワカラナイ面白さと、緊張感が持続するのだ。
あの小津安二郎監督のファンだという監督は、なるほど淡々としたカメラの長回しで語っていく。懐かしくも、嬉しい。
しかし加瀬亮が扮する修理工がキレやすく、その彼が絡むシーンは一触即発のテンションが高まる。
クライマックスは、まったくサウンドだけで実態は見せない。
人間というのは、いつも一人称でしか世間を見れないのだ。という、アッバスらしい視点の新作も、かなり鮮烈だ。

■渋いゴロのヒットが左中間を抜けてツーベース。
●9月、渋谷ユーロスペースでロードショー