細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『へルタースケルター』の元気で極彩色な業界カリカチュア。

2012年06月13日 | Weblog

 

●6月12日(火)13−00 <汐留・FSホール試写>
M−066『へルタースケルター』Helter skelter (2012) アスミック・エース/WOWWOW
監督/蜷川実花 主演/沢尻エリカ <127分> ★★★☆☆
あの「さくらん」から久しぶりの蜷川節は、現代の渋谷のカラフルな混沌。
トップモデルの美容整形された裏実態と、ハチャメチャ(へルタースケルター)な転落の日々がスケッチされる。
かなりエキセントリックな、業界カリカチュアだが、吹っ切りがいいので楽しめる。
造成された美容と、軟体バービー人形のように偽装された無能タレント。それに乗じるマスコミの喧噪。  
それが女性カメラマンならではの蜷川の視線で、極彩色に不気味にブロウアップされる。
グロテスクだが、これも渋谷という街の実態。危険で欺瞞な美しさでもある。
あのギャスパー・ノエの世界に近いのも、元気があっていい。
幼稚化した美貌への憧れが、ちょいとコミックでブラックな視線で抉られて行くサマは、けっこう笑える。
一応は「スタア誕生」から「サンセット大通り」への偽装社会の狂乱ぶりが、いまの東京の電化都市を舞台に急展開するのだ。
それをスラップスティックに茶化していくスピードは、傍観している分には面白いのだ。
欲張ったテーマは岡崎京子の原作のせいだろうが、これだけの映像エネルギーがあったら、もっと巧い編集が欲しかった。
映画としての素材は揃っているが、ディスプレイが煩雑で怠い。
沢尻も、実生活とのダブりもあって、かなり迫真のパフォーマンスが得している。
ま、これだけ元気な映画は、いまの邦画界には必要だし、海外の評価が楽しみだ。

■右中間を破るヒットだが、スピードがあったのでツーベース。
●7月14日より、全国ロードショー