知られざる敵
私はこれまでたくさんの動植物(約1300種)をガジ丸の島で紹介しているが、子供の頃から記憶力の弱い私はたぶん、その内の三分の一も覚えていない。植物の方はそこに立っていて、何度も目にすることができるのでその半分近くは何とか記憶に残っているかもしれないが、動物の、特に昆虫の方は動いていて、何度もお目にかかるということは少ないので、その多くが私の、物覚えの悪い脳味噌に記憶されていない。
今回紹介するナカジロシタバ、写真を撮ったのは2014年7月6日午前7時27分、その日その時、私は畑にいた。その時が初めましてで、蛾の類であろうとは判ったが、もちろん、その時に何者かは知らない。後日、図鑑を見て何者かが判った。
調べると、「幼虫の食草はサツマイモ」とある。「ぬゎにーっ!サツマイモを食うだとーっ!」と、説明文(下記の文章)を書きながら思った。サツマイモの害虫としてはイモゾウムシ、アリモドキゾウムシがよく知られているが、他にもいたわけだ。
サツマイモの敵ということは、自給自足芋生活を目指している私にとっても不倶戴天の敵である。「蛾にも注意しないといけないなぁ」と気付かされ、「コイツのことは覚えておかなければ」と思ったのだが、しかし、全く記憶から失せていた。
ナカジロシタバ(中白下翅):鱗翅目の昆虫
ヤガ科 本州から南西諸島、アジア、他に広く分布 方言名:ハベル(ガの総称)
名前の由来、資料が無く正確には不明だが、おそらく見た目から。中白下翅と漢字を充てたのは私の想像。中白は『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「後翅は黒褐色で基部から中央にかけての部分が白色」とあり、シタバはその「後翅は」からで、ナカジロはその「中央にかけて白色」から。つまり、「下翅(後翅)の中(中央)が白い」ということ。
「沖縄や東南アジアではサツマイモの害虫として知られている」(沖縄昆虫野外観察図鑑)とのこと。詳細は書かれていないが、おそらく、幼虫が葉を食害するのではないか。同書には「幼虫の被害は5~6月に最も多い」ともあった。
前翅長15~17ミリ。成虫の出現は3月から11月。幼虫の食草はサツマイモ、ノアサガオ。私の写真は7月の朝、畑のバナナの葉、その上に止まっていた1匹。
記:ガジ丸 2017.7.22 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田晴夫他著、株式会社南方新社発行