11月も終盤になったが、今年は例年に無く暖かい。それが地球温暖化のせいなら喜んでばかりもいられないが、気持ちは良い。「散歩日和だな」となる。
村を一回りして浜辺に出る。海風も爽やかだ。「釣日和かも」と思い直し、港へ向かった。ジラースーの船があるはずだ。船の上から釣り糸を垂らそう。
ところが、港に着いてみると船が無い。今日は帰る日じゃないのにどうしたんだろうと不思議に思いつつ、しょうがないのでシバイサー博士の研究所へ行った。博士も釣具を持っている。ところが、博士も不在だった。ゴリコもガジポもいない。
で、まだ時間は早いが、ユクレー屋へ。ユクレー屋にはいつものようにケダマンがカウンターに座っていて、カウンターの向こうにマナがいる。私もいつものようにケダマンの隣に座って、いつもより少し(マナに言わせると大いに)早めの飲酒タイムとなる。
ジラースー二世誕生まで一ヵ月半という話題を中心に三人でしばらくユンタク(おしゃべり)していたら、珍しく明るい内にガジ丸がやってきた。
「よー、なんだい、今日はまた、早いな。」(ケダ)
「あー、今朝、ジラースーに船を出してもらって釣りしてきた。で、ガーラ一匹。新鮮なうちに料理して貰おうと思って、持ってきた。ウフオバーはいるか?」
「オバーは出かけているけど、私でも刺身にする位ならできるよ。」(マナ)
「なんだい、午前中やって、たった一匹か?ジラースーと二人で。」(ケダ)
「ジラースーはずっとゴリコの遊び相手だ。釣りしたのは俺一人。」
「それでも一匹だけとは情けない。ネコの野生は消え失せたか?」
「いや、まあ、日が悪かったんだ。こんな日もあるさ。まあしかし、一匹だけじゃ淋しいと思ってな、船の冷凍庫からサバを3尾貰ってきた。秋サバだ。」
料理をマナに任せて、ガジ丸は自分でジョッキにビールを注ぎ、カウンターに座る。
「昼前に港へ行ったんだ。そしたらジラースーの船が無くてさ、不思議に思っていたんだ。そうか、釣りに行ってたんだ。博士やゴリコも一緒だったんだ。」(私)
「うん、博士は船でもずっと眠ていたがな、ゴリコが大喜びだった。」
などと我々がビール飲みながら、ユンタクしている間、マナは料理。魚の頭を包丁でポンポンと切り落とす。それを見ていたケダマンが思わず訊く。
「お腹に赤ちゃんがいる割には、魚の首をちょん切るのに抵抗がないんだ。」
「何言ってるの、お腹に子がいるからこそ、これも必要なの。他の命を頂いて、私も赤ちゃんも生きていけるのさ。子供のためなら母親は何でもやるさ。」
「なるほど、母は強しってわけだ。」と我々三匹は納得した。
しばらくして、「おまたせ」とマナがゆさゆさ体を揺らしながら料理を出した。
「あきさまよー、オメェ、その歩き方、まったく相撲取りだぜ。」(ケダ)
あきさまよーは「あれまあ」といった驚きを表すウチナーグチ(沖縄口)だが、マナはそれには応えず、ニカッと笑って、
「ピンポーン、あったりー。本日の1品は私の創作料理『あきさばよー』です。」
皿の料理を見ると、焼きサバの身の方に何やら赤っぽいソースが塗られている。
「何これ、秋サバは判るけど、ソースが珍しいね。」(私)
「オキナワのトーフヨーで作ったソースだよ。で、秋鯖ヨーなのさ。」
ガーラの刺身は美味であった。マナの創作料理アキサバヨーも美味しかった。美味いものを食って、旨い酒となった。秋の夜長は楽しく更けていった。
記:ゑんちゅ小僧 2008.11.21