ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

瓦版075 母は強し、愛も強し

2008年11月21日 | ユクレー瓦版

 11月も終盤になったが、今年は例年に無く暖かい。それが地球温暖化のせいなら喜んでばかりもいられないが、気持ちは良い。「散歩日和だな」となる。
 村を一回りして浜辺に出る。海風も爽やかだ。「釣日和かも」と思い直し、港へ向かった。ジラースーの船があるはずだ。船の上から釣り糸を垂らそう。
 ところが、港に着いてみると船が無い。今日は帰る日じゃないのにどうしたんだろうと不思議に思いつつ、しょうがないのでシバイサー博士の研究所へ行った。博士も釣具を持っている。ところが、博士も不在だった。ゴリコもガジポもいない。
 で、まだ時間は早いが、ユクレー屋へ。ユクレー屋にはいつものようにケダマンがカウンターに座っていて、カウンターの向こうにマナがいる。私もいつものようにケダマンの隣に座って、いつもより少し(マナに言わせると大いに)早めの飲酒タイムとなる。

 ジラースー二世誕生まで一ヵ月半という話題を中心に三人でしばらくユンタク(おしゃべり)していたら、珍しく明るい内にガジ丸がやってきた。
 「よー、なんだい、今日はまた、早いな。」(ケダ)
 「あー、今朝、ジラースーに船を出してもらって釣りしてきた。で、ガーラ一匹。新鮮なうちに料理して貰おうと思って、持ってきた。ウフオバーはいるか?」
 「オバーは出かけているけど、私でも刺身にする位ならできるよ。」(マナ)
 「なんだい、午前中やって、たった一匹か?ジラースーと二人で。」(ケダ)
 「ジラースーはずっとゴリコの遊び相手だ。釣りしたのは俺一人。」
 「それでも一匹だけとは情けない。ネコの野生は消え失せたか?」
 「いや、まあ、日が悪かったんだ。こんな日もあるさ。まあしかし、一匹だけじゃ淋しいと思ってな、船の冷凍庫からサバを3尾貰ってきた。秋サバだ。」

  料理をマナに任せて、ガジ丸は自分でジョッキにビールを注ぎ、カウンターに座る。
 「昼前に港へ行ったんだ。そしたらジラースーの船が無くてさ、不思議に思っていたんだ。そうか、釣りに行ってたんだ。博士やゴリコも一緒だったんだ。」(私)
 「うん、博士は船でもずっと眠ていたがな、ゴリコが大喜びだった。」
 などと我々がビール飲みながら、ユンタクしている間、マナは料理。魚の頭を包丁でポンポンと切り落とす。それを見ていたケダマンが思わず訊く。
 「お腹に赤ちゃんがいる割には、魚の首をちょん切るのに抵抗がないんだ。」
 「何言ってるの、お腹に子がいるからこそ、これも必要なの。他の命を頂いて、私も赤ちゃんも生きていけるのさ。子供のためなら母親は何でもやるさ。」
 「なるほど、母は強しってわけだ。」と我々三匹は納得した。
     

  しばらくして、「おまたせ」とマナがゆさゆさ体を揺らしながら料理を出した。
 「あきさまよー、オメェ、その歩き方、まったく相撲取りだぜ。」(ケダ)
 あきさまよーは「あれまあ」といった驚きを表すウチナーグチ(沖縄口)だが、マナはそれには応えず、ニカッと笑って、
 「ピンポーン、あったりー。本日の1品は私の創作料理『あきさばよー』です。」
 皿の料理を見ると、焼きサバの身の方に何やら赤っぽいソースが塗られている。
 「何これ、秋サバは判るけど、ソースが珍しいね。」(私)
 「オキナワのトーフヨーで作ったソースだよ。で、秋鯖ヨーなのさ。」

 ガーラの刺身は美味であった。マナの創作料理アキサバヨーも美味しかった。美味いものを食って、旨い酒となった。秋の夜長は楽しく更けていった。
     

 記:ゑんちゅ小僧 2008.11.21


絡みつくしがらみ

2008年11月21日 | 通信-政治・経済

 先週の平日、昼休み、家に帰って昼飯を食い、職場へ戻る途中、大通りへ出たら前を選挙カーが走っていた。先週は那覇市長選の真っ只中、那覇市会議員補欠選挙も同時に行われていて、選挙カーはあちらこちらで頻繁に目にする。すぐ前を選挙カーが走っていても何も不思議は無い。現に、今回もこの時が2回目であった。
 選挙カーは概ねゆっくり走る。昼飯を食って職場へ戻る私は、ギリギリの時間に家を出るので、概ね急いでいる。前回は急いでは無かったのだが、その時の候補者は「ご迷惑をおかけしています。お先へどうぞ。」と言って、車を左に寄せた。なので今回も当然、前を走る選挙カーが同じようにするものと私は思った。
 ところが、その選挙カーは図太いのであった。左に寄せる十分な広さのある道になっても、候補者の名前を連呼し続け、ゆっくり走っているのであった。
 「なんて野郎だ!その傲慢さで、ぜひとも1票をお願いしますなんて、よく言えるもんだ。ふんぞり返って『1票頼むわ』って言ってるようなもんだ。こんな野郎には絶対、俺の1票はあげないぜ。」と私は誓ったのであった。

 その翌日、私は期日前投票をした。期日前投票は初体験である。期日前投票が好きというわけでも無く、投票日の日曜日が忙しいというわけでも無い。社長に頼まれたのだ。就業時間に、会社の車を使っていいから、とまで社長に言われたんじゃあ断れない。
  その社長は、下請けの仕事を多く貰っている大手企業(特定の候補者を応援している)から、「社員に期日前投票させろ」と命令されている。もちろん社長は、特定の候補者に投票するようになんてことは言わない。うちの社長はそれほど傲慢では無い。
 たとえ、「○○に入れろ」と依頼されても、実際に誰に入れるかは個人の勝手である。100人が期日前投票をしたって、100人が依頼された候補者名を書いたかどうかは不明だ。なので、私には「社員を期日前投票させろ」という意図が解らない。
 ただ、社員は社長に頼まれ、社長は大会社に命令され、という図式が、社会と政治の未熟さを露呈しているようで、何となく嫌な気分になる。しがらみという糸が絡み付いて、行きたい方向へ行けない。そんな不自由さを感じる。

 大手企業の応援する候補者は、上述した、ゆっくり走り続けて道を譲らなかった選挙カーの候補者だ。「絶対入れてやらない」と私が誓って、そうしたのだが、当選した。まあそんなもんだろうとは思う。まだまだ沖縄は(たぶん日本全国も)しがらみ社会だ。
          

 記:2008.11.21 島乃ガジ丸