「Love Letter」 1995年 日本
監督 岩井俊二
出演 中山美穂 豊川悦司 酒井美紀
柏原崇 范文雀 篠原勝之
加賀まりこ 鈴木蘭々 中村久美
塩見三省 鈴木慶一 田口トモロヲ
ストーリー
神戸に住む渡辺博子は、山の遭難事故で死んでしまった恋人・藤井樹の三回忌の帰り道、彼の母・安代に誘われ、彼の家で中学の卒業アルバムを見せてもらった。
その中に樹の昔の住所を発見した博子は、今は国道になってしまったというその小樽の住所に手紙を出してみることを思い付く。
数日後、博子の手紙は小樽に住む藤井樹という同姓同名の女性のもとに届いていた。
「拝啓、藤井樹様。お元気ですか? 私は元気です」という手紙に心当たりのない樹は、好奇心から返事を書いてみることにした。
来るはずのない返事が届いたのに驚いた博子は、樹の登山仲間でガラス工房で働いている秋葉茂に事情を打ち明ける。
博子に秘かな恋心を抱く秋葉は、天国の樹から返事が来たと喜んでいる博子に心を痛めるのだった。
博子はさらに返事を送り、二人の間で何度かの手紙のやり取りが続いた。
秋葉は博子に樹への思いをふっきらせるために、小樽へ行こうと誘う。
小樽に着いた博子と秋葉は樹の家を訪ねるが、彼女は留守にしていたので置き手紙を残して帰って行く。
博子の手紙を読んだ樹は、中学の同級生に同姓同名の藤井樹という男子生徒がいたことを想い出し、しばらくして博子と樹の間で新たな文通が始まって、樹は博子に請われるままに少年・樹との中学時代の想い出を綴っていった。
少年・樹は他人が読まない本を借りては、図書カードに自分の名前を書いて喜んでいる少年だった…。
寸評
みずみずしい映像で覆われた、ひねりの効いたラブストーリーだ。
二役を演じた中山美穂が手紙のナレーションを含めていい演技を見せている。
何本か映画出演も果たした中山美穂だが、彼女の代表作は間違いなくこの作品だし、この作品しかないと言っていいぐらい役柄にハマっている。
登場シーンからその魅力が全開で、中山美穂ファンならずともうっとりしてしまう。
雪の中に息を止めて寝っ転がっている彼女のアップから始まり、山腹の雪景色の中を歩いていく姿と共に、雪原の中にタイトルが表示されていく。
なんともアート的なオープニングで、僕はその映像に完全に魅了されてしまった。
雪の中での藤井樹の三回忌シーンが続き、ピアノ曲に乗って舞台は小樽へ移り、もう一人の藤井樹が登場する。
このつなぎ方も映画的で、観客を魅了するのに十分な演出だった。
渡辺博子は、山の遭難事故で死んでしまった恋人の藤井樹が忘れられないでいる。
今の恋人は藤井の友人だった秋葉なのだが、秋葉は藤井と共に山に登り遭難事故にあって藤井を死なせていたので、渡辺博子に対して負い目の過去を背負っている。
その単純なシチュエーションだけなら、今までも映画化された作品がたくさんあり名作も生まれている。
この作品のユニークなところは、彼と同姓同名の中学時代同級生だった女性がいて、渡辺博子の恋とリンクする形で彼の中学時代の初恋が浮かび上がってくるという構成だ。
しかもそれが女性同士の文通を通じてと言うのが、さらに両者の恋の雰囲気を醸し出していく。
美しい映像と音楽にのって描かれる恋のありようは新鮮だ。
最初は相手がどのような人物か分からないままに手紙のやり取りを行っているが、恋人の態度に平静を装いながらも平穏でいられない秋葉が係わりだし、思わず手紙の相手を「敵は…」と言ってしまう。
よき理解者を演じているが、実際は亡くなった藤井に嫉妬しライバル心を持っていることを表していたと思う。
小樽の藤井家では引っ越し問題が進行しているが、長年住み慣れた家を出ることをじいちゃんは渋っている。
これなども思い出の詰まったものからは中々決別できないものなのだということの暗示でもあったような気がする。
おふざけシーンは同じく同級生の及川早苗が引き受けていて、コミカルなシーンもあるが告白した彼女を拒絶した藤井が返却する本が「エクソシスト」なのは笑える。
しかし、それは最後に藤井の返却する本がマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」であることの伏線でもあって、まさしくこの映画にマッチする題名の小説だった。
両藤井樹の青春は微笑ましいが、特に男側の恋心の表現がくすぐったくなるほど上手く描けている。
自転車でイタズラするのはよくある態度だが、好きな子のよからぬ姿を想像したり、更には現役生が指摘する行為などは、口には出せないが狂おしいばかりのj恋心を描いていて、自分の初恋と照らし合わせても胸キュンとなる。
いくつになっても初恋の思い出は甘酢っぱく、忘れえないものである。
朝日のシーンもいいし、最後の思い出に続くエピソードも感動的で、見事なまでのラブストーリー映画だった。
監督 岩井俊二
出演 中山美穂 豊川悦司 酒井美紀
柏原崇 范文雀 篠原勝之
加賀まりこ 鈴木蘭々 中村久美
塩見三省 鈴木慶一 田口トモロヲ
ストーリー
神戸に住む渡辺博子は、山の遭難事故で死んでしまった恋人・藤井樹の三回忌の帰り道、彼の母・安代に誘われ、彼の家で中学の卒業アルバムを見せてもらった。
その中に樹の昔の住所を発見した博子は、今は国道になってしまったというその小樽の住所に手紙を出してみることを思い付く。
数日後、博子の手紙は小樽に住む藤井樹という同姓同名の女性のもとに届いていた。
「拝啓、藤井樹様。お元気ですか? 私は元気です」という手紙に心当たりのない樹は、好奇心から返事を書いてみることにした。
来るはずのない返事が届いたのに驚いた博子は、樹の登山仲間でガラス工房で働いている秋葉茂に事情を打ち明ける。
博子に秘かな恋心を抱く秋葉は、天国の樹から返事が来たと喜んでいる博子に心を痛めるのだった。
博子はさらに返事を送り、二人の間で何度かの手紙のやり取りが続いた。
秋葉は博子に樹への思いをふっきらせるために、小樽へ行こうと誘う。
小樽に着いた博子と秋葉は樹の家を訪ねるが、彼女は留守にしていたので置き手紙を残して帰って行く。
博子の手紙を読んだ樹は、中学の同級生に同姓同名の藤井樹という男子生徒がいたことを想い出し、しばらくして博子と樹の間で新たな文通が始まって、樹は博子に請われるままに少年・樹との中学時代の想い出を綴っていった。
少年・樹は他人が読まない本を借りては、図書カードに自分の名前を書いて喜んでいる少年だった…。
寸評
みずみずしい映像で覆われた、ひねりの効いたラブストーリーだ。
二役を演じた中山美穂が手紙のナレーションを含めていい演技を見せている。
何本か映画出演も果たした中山美穂だが、彼女の代表作は間違いなくこの作品だし、この作品しかないと言っていいぐらい役柄にハマっている。
登場シーンからその魅力が全開で、中山美穂ファンならずともうっとりしてしまう。
雪の中に息を止めて寝っ転がっている彼女のアップから始まり、山腹の雪景色の中を歩いていく姿と共に、雪原の中にタイトルが表示されていく。
なんともアート的なオープニングで、僕はその映像に完全に魅了されてしまった。
雪の中での藤井樹の三回忌シーンが続き、ピアノ曲に乗って舞台は小樽へ移り、もう一人の藤井樹が登場する。
このつなぎ方も映画的で、観客を魅了するのに十分な演出だった。
渡辺博子は、山の遭難事故で死んでしまった恋人の藤井樹が忘れられないでいる。
今の恋人は藤井の友人だった秋葉なのだが、秋葉は藤井と共に山に登り遭難事故にあって藤井を死なせていたので、渡辺博子に対して負い目の過去を背負っている。
その単純なシチュエーションだけなら、今までも映画化された作品がたくさんあり名作も生まれている。
この作品のユニークなところは、彼と同姓同名の中学時代同級生だった女性がいて、渡辺博子の恋とリンクする形で彼の中学時代の初恋が浮かび上がってくるという構成だ。
しかもそれが女性同士の文通を通じてと言うのが、さらに両者の恋の雰囲気を醸し出していく。
美しい映像と音楽にのって描かれる恋のありようは新鮮だ。
最初は相手がどのような人物か分からないままに手紙のやり取りを行っているが、恋人の態度に平静を装いながらも平穏でいられない秋葉が係わりだし、思わず手紙の相手を「敵は…」と言ってしまう。
よき理解者を演じているが、実際は亡くなった藤井に嫉妬しライバル心を持っていることを表していたと思う。
小樽の藤井家では引っ越し問題が進行しているが、長年住み慣れた家を出ることをじいちゃんは渋っている。
これなども思い出の詰まったものからは中々決別できないものなのだということの暗示でもあったような気がする。
おふざけシーンは同じく同級生の及川早苗が引き受けていて、コミカルなシーンもあるが告白した彼女を拒絶した藤井が返却する本が「エクソシスト」なのは笑える。
しかし、それは最後に藤井の返却する本がマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」であることの伏線でもあって、まさしくこの映画にマッチする題名の小説だった。
両藤井樹の青春は微笑ましいが、特に男側の恋心の表現がくすぐったくなるほど上手く描けている。
自転車でイタズラするのはよくある態度だが、好きな子のよからぬ姿を想像したり、更には現役生が指摘する行為などは、口には出せないが狂おしいばかりのj恋心を描いていて、自分の初恋と照らし合わせても胸キュンとなる。
いくつになっても初恋の思い出は甘酢っぱく、忘れえないものである。
朝日のシーンもいいし、最後の思い出に続くエピソードも感動的で、見事なまでのラブストーリー映画だった。
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