おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

64-ロクヨン-後編

2023-06-07 07:16:59 | 映画
「64-ロクヨン-後編」 2016年 日本


監督 瀬々敬久
出演 佐藤浩市 綾野剛 榮倉奈々 夏川結衣 緒形直人 窪田正孝
   金井勇太 筒井道隆 鶴田真由 赤井英和 菅田俊 小澤征悦
   菅原大吉 柄本佑 坂口健太郎 宇野祥平 瑛太 滝藤賢一
   烏丸せつこ 奥田瑛二 仲村トオル 吉岡秀隆 永瀬正敏 三浦友和

ストーリー
平成14年12月。
時効まであと1年と迫った“ロクヨン”の捜査員激励と被害者家族・雨宮の慰問を目的とした警察庁長官の視察が翌日に迫る中、管内で新たな誘拐事件が発生する。
今回の誘拐事件の犯人は、身代金の額、現金の入ったスーツケースを父親が一人で運転する車で運ぶなど、ロクヨン事件を模倣するかのような要求をしてきた。
事件の性質上、広報室の三上は記者クラブと報道協定を結ぶ必要に迫られるが、刑事部は一切の情報を明かそうとしない。
記者たちは一斉に反発、各社が独自に動き出しかねない危険な状況に陥っていった。
三上は記者クラブとの"事件は基本、実名報道にする"という約束を守るため、捜査本部に乗り込んだものの、捜査一課の御倉に阻止される。
三上はロクヨン事件の捜査班班長だった松岡を説得し、被害者はスポーツ用品店店主・目崎正人の長女、目崎歌澄だと突き止めた。
そんな中、一向に情報が出てこないことに自らも業を煮やした三上は、ロクヨン捜査にも関わった刑事部時代の上司・松岡が指揮を執る捜査車両への同乗を直訴した。
三上は、情報に20分のタイムラグを作ることを条件に同乗を許可され、諏訪と携帯電話で繋ぎながら広報室に情報提供を行っていく。
模倣犯が道順を指定する電話をかけてきたが途中でヘリウムガスが切れてしまい肉声が聞こえてくる。
なんとその声の主は・・・。


寸評
現在では殺人事件の時効は廃止されているから、誘拐殺人のロクヨン事件に時効はないはずだが、描かれている時代においてはまだ時効が存在しており、ロクヨン事件の時効まであと1年となったところで新たなロクヨン事件が起きるのが後編である。
前編と同様に報道協定を巡って新聞記者と警察の対立が描かれるが、前編と違い身代金の受け渡しと犯人逮捕にも重点が置かれている。

サスペンスとして見るなら、後編が始まって早い段階で電話の主が分かってしまうのは盛り上がりに欠ける。
キャリアが支配する中央省庁と地方警察の人事抗争や、本社と支局の新聞記者間の優劣問題なども描かれているが、それに対する切り込みは鈍い。
奥田瑛二の荒木田刑事部長は過去のロクヨン事件を追及されたくないので、警察発表の担当者に落合(柄本佑)という若い課長を充てるが、この落合がまったく頼りない男で滑稽ですらある。
前後編を通じて新聞記者も横暴だと感じる場面が多々ある作品だが、この男が相手では新聞記者たちが起こるのも無理からぬことだ。
前編ほど広報官たちが突きあげられる場面は少なく、主人公の三上(佐藤浩市)は逆に大活躍する。
実名報道を約束したばかりの三上は必死で誘拐された少女の実名を知ろうとする。
刑事部時代の上司・松岡(三浦友和)が教えてくれるだけでなく、追跡車両にも乗せてくれるという配慮により、三上の数少ない理解者のようにも見えるのだが、三上と松岡の関係、特に松岡の三上に対する気持ちと、彼の警察における立場とスタンスがよく分からないのは僕の理解不足か。
人事権を持っているらしい二渡(仲村トオル)もチョロチョロしているのだが、彼が何をしようとしているのかもよく分からないので、「上と刺し違えてもお前を残す」と息巻かれてもあまり感動しない。
雨宮(永瀬正敏)と幸田(吉岡秀隆)の関係もよく分からず、どのようにして彼らが接点を持つようになったのかは不明のままである。
前編に比べると後編は時間的制限なのか、結末を急いだのか、説明不足と感じる部分が多い。

三上は娘が失踪していて、その捜査に全国警察の協力を得ていると言う負い目がある。
その負い目の為に警察組織に縛られる彼のジレンマは伝わってくる。
また妻の美那子(夏川結衣)はいつ娘から電話がかかってくるかもしれないので、家の外に出かけることがない。
その美那子が捜査の協力者として召集され現場に立ち会うのだが、それがラストシーンに結びつくという描き方はなかなかいいと思う。

ロクヨン事件は全面解決を見るが、諏訪(綾野剛)が新しい報道官と迎えられる以外、組織の矛盾や隠ぺい体質は何も変わっていないような気がする。
入ってみないと分からないが、官僚組織とは魑魅魍魎が巣くう世界なんだなあと言う印象だけが残った。
瀬々敬久としては人気俳優を使い切って頑張ったと思うが、ちょっと尻切れトンボ感を感じる後編だ。


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