おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

冬の華

2021-10-30 06:54:28 | 映画
「冬の華」 1978年 日本


監督 降旗康男
出演 高倉健 池上季実子 北大路欣也
   池部良 田中邦衛 藤田進
   三浦洋一 倍賞美津子 夏八木勲
   小池朝雄 寺田農 山本麟一
   峰岸徹 小林亜星 小林稔侍
   大滝秀治 小沢昭一 岡田眞澄

ストーリー
関東の東竜会幹部の加納秀次(高倉健)は、会長の坂田良吉(藤田進)を裏切り関西の暴力団に寝返った松岡(池部良)を殺害した。
しかし、殺された松岡には三歳になる洋子という一人娘があり、加納は洋子を舎弟の南幸吉(田中邦衛)に託して、旭川刑務所に服役した。
服役中、加納はブラジルにいる伯父といつわり、洋子と文通を続けその成長を見守る。
やがて、十五年の刑期を終え出所した加納は、洋子に加納の手紙を運ぶうち彼女の恋人となった竹田(三浦洋一)の案内で、洋子(池上季実子)の姿を見ることができた。
ある日、洋子の手紙によく書かれていた喫茶店で、加納は彼女と出会う。
加納がブラジルにいる伯父ではないかと思った洋子は、彼にそれを尋ねようとするが、加納はすばやく彼女の前から去り、店を出て行った。
組結成の話も断わり、堅気になろうと決心していた加納は、坂田から息子の道郎(北大路欣也)の相談相手になってくれと頼まれる。
加納と道郎が再会を喜び合ったのも束の間、坂田は関西の暴力団員に殺される。
その仇を討つため、道郎が関西連合の三枝(岡田眞澄)と東竜会を裏切った山辺(小池朝雄)を狙っていることを耳にした加納は、坂田から道郎を頼まれたこともあって苦悩する。
山辺殺害を決意した加納は、洋子へ電話をかけて当分日本には帰れないというのだった。
翌日、南に道郎が外に出れないように見張らせた加納は、山辺のもとへ向かう。
それは、再び会うことができないであろう洋子の幸福を願いつつ、十五年前の状況に戻ってしまう加納の宿命であった。


寸評
ヤクザ映画に「あしながおじさん」物語を加味し、クラシック音楽やシャガールの絵画を効果的に使っていて、東上を目指す関西の大暴力団と関東組織の抗争というありきたりな構図を一風変わた雰囲気に仕立て上げている。
タイトルが出る前に主人公の加納秀次が組を関西連合に吸収させようと画策していた兄弟分とも言える松岡を殺害するシーンが描かれる。
その時、松岡は「仕方がなかったんだ。お前と俺との仲じゃないか、見逃がしてくれねえか。ガキがいるんだ」と加納に言うのだが、加納は聞き入れず弟分の南が松岡の子供の相手をしているうちに刺殺する。
ヤクザのしがらみで、主人公が気持ちを通わせていた男を殺す場面は幾度となく描かれているが、「冬の華」における海辺のシーンは秀逸で印象に残る。

加納は15年の刑期を終えて出所してくる。
組員の迎はなく、住所を頼りにたどり着いたのは南が用意してくれたマンションで、最低限の物しかない殺風景な部屋である。
南は表向きの仕事として中古車販売をやっているが加納に心酔しているようである。
寺田農が演じている山本という男は山辺の所に預けられていて、加納に呼び戻して欲しいと言うが、加納は一家を構えているわけではないので聞きながす。
どちらも加納が刑務所に入る前からの深い付き合いのようなのだが、その関係はよくわからない。
しかし東竜会本家の面々は加納に心酔しているようで、会長の坂田が殺されてからも加納に一目置いている。
東竜会の幹部たちは関西に取り込まれている曲者ぞろいで、加納一派によって粛清されても良いような連中であるが、ターゲットは会長を裏切った山辺ひとりとなっている。
山辺は子供が慶応大学に合格したことを喜ぶ親バカぶりを途中で見せているが、これは上手い伏線の張り方だ。

一方の「あしながおじさん」として、加納は南に松岡の遺児である洋子の面倒を見させている。
まだ見ぬおじさんとして感謝されている加納だが、金銭を含めて実際の面倒を見ているのは南である。
南がどのような説明をして加納名義で洋子支援を行っていたのか分からないが、疑うこともなく洋子がおじさんからの支援を無邪気に受け入れているのが不思議に思える。
また加納の手紙を届けるうちに恋が芽生えたという竹田と洋子の関係は説明程度にとどまっている。
どちらも深く描いていないので、加納と洋子の物語は全体の中での添え物的ストーリーのように思える。

本筋は裏切った松岡を心ならずも殺すハメになった加納が、坂田会長から頼まれた道郎を復讐に向かわせないために再び裏切り者を殺害せざるを得なくなる宿命だったと思う。
ヤクザのしがらみによって、山辺の預かりとなっていた山本は山辺を守るために加納に襲い掛かり立花(夏八木勲)によって逆に殺される。
そして加納たちに取り囲まれた山辺は冒頭で松岡が言った内容とまったく同じことを言う。
しかも「ガキがいるんだ」まで同じなのだ。
山辺にそれを言わせる為に組み立てられた倉本聰の脚本だった。
降旗監督は三島由紀夫への思い入れがあったのか、北大路欣也の道郎はまるで盾の会の三島みたいだった。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
嫌いな映画です (FUMIO SASHIDA)
2021-10-31 10:40:03
どうにも嫌みな映画でしたね。
池上季実子への愛なんて笑ってしまう。
クラシックや京都の古い喫茶店など、嫌みばかり。
高倉健の作品としても最低ですね。
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あしながおじさん (館長)
2021-11-01 09:18:54
池上季実子との足ながおじさん物語にリアリティがなかったですね。
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