「三人の名付親」 1948年 アメリカ
監督 ジョン・フォード
出演 ジョン・ウェイン
ペドロ・アルメンダリス
ハリー・ケリー・Jr
ジェーン・ダーウェル
ベン・ジョンソン
メエ・マーシュ
ストーリー
アリゾナのウェルカムにやって来た3人の男が、突然町の銀行を襲い砂漠の中に逃れていった。
3人のうち首領格はたくましいボブで、あとの2人は中年のピートとまだ年若いキッドであった。
烈日を浴びて砂漠を行く彼らは渇きに苦しんだが、深傷を負っているキッドは1人耐えがたかった。
砂漠には所々に旅人のための水槽タンクがあり、彼らはその1つであるマジャヴ・タンクへと急いだが、そこはすでに町の役人スイートが部下とともに先回りしていた。
彼らは追手の裏をかき逆戻りしてテラピン・タンクへ向かった。
そこには1台の幌馬車が止まっており、中に1人の若い婦人がいた。
ニュー・エルサレムから来た彼女は身重の体であり、まもなくピートの世話で赤ん坊を生み、3人に赤ん坊のことをくれぐれも頼みながら死んでいった。
3人は途方にくれたが、婦人の残していった子育て本と聖書に力を得てニュー・エルサレムに赤ん坊を連れて行くことにした。
しばらくしてテラピン・タンクに来たスイートは幌馬車の中に残されていた婦人の衣類が彼の姪のものであると知って、3人が彼女を殺したものと思い、ますます彼らに対する憎悪に燃えた。
その頃3人は死の苦しみと闘っていた。
キッドは死に、ボブとピートは赤ん坊をいたわりながら砂漠をさまよったが、突然ピートは足を折り、いまはこれまでと自殺した。
ボブは1人、最後の力をふり絞り、倒れては立ち遂々ニュー・エルサレムに辿り着いたのだが・・・。
寸評
話は単純だが背景には宗教的な筋書きが施されており、クリスマスを祝う描写などもあるから、もしかすると本国では公開時期が12月だったのかもしれない。
母親が死んでしまった新生児を男三人が何とか育てる微笑ましい話であると同時に、三人の逃亡劇でもある。
三人は銀行強盗をやった悪人なのだが、登場した時から人のよさそうな雰囲気がある。
三人組は街へ入って来た時に庭の手入れをしていたオヤジに遭遇する。
そこでのやりとりはお互いの人の好さが出たものである。
重要なのはこのオヤジと奥さんの会話である。
二人によると、到着すべき姪が到着していないし、オヤジは姪のダンナをあのバカ呼ばわりしている。
これが大事な伏線となっていることは、大抵の映画ファンは感じ取るだろう。
そしてオヤジが保安官であることが分かり、ボブは顔を曇らせる。
導入部としては要領を得ていて、僕はこのなにげない処理にジョン・フォードの職人技を見る思いがする。
三人組は逃走時に大切な飲料水袋を撃たれてしまい水を求めて鉄道の貯水場に向かうが、そこには保安官とその助手達が先回りして警戒に当たっていたので、仕方なく貯水池を目指すことになる。
到着すると貯水池はなく捨てられた幌馬車があり、その中には出産が迫っている瀕死の女性が居てピートの助けで赤ん坊は無事生まれるが、女性は息が絶えてしまう。
死の直前に女性から三人は子供の名付け親として立派に育てると約束をさせられてしまうのだが、その妊婦が何故幌馬車に一人居るのかの説明はボブによってなされる。
映像がない手抜き的な描き方に感じるが、なんとか冒頭の伏線が効いていて脚本の上手さがうかがえる。
先ずは赤ん坊を託された三人の微笑ましい行動と、名付け親としての愛情表現が手際よく描かれる。
そこから砂漠を相手に生き残りの生存競争になって行くのだが、彼らが仲たがいして争いごとが起きることはなく、傷ついたキッドを残る二人がいたわりながら旅を続ける。
過酷な逃亡劇を描きながらジョン・フォードはユーモアを盛り込み重苦しい雰囲気を和らげている。
代表的なのがボブがメキシコ人のピートに「スペイン語を話すな。この子はアメリカ人なのだからスペイン語を覚えてしまったらどうするんだ」と言い放つことだ。
言われたピートの表情が何とも言えないが、完全な人種差別である。
そして生まれた赤ん坊の”ロバート・ウィリアム・ペドロ”という名前に関するやり取りも面白い。
ユーモア部分はピートが一手に引き受けていて、ジョン・ウェイン以上に存在感がある。
最後に聖書に記載されている通りにロバが突然出てくるなど宗教色が強い作品なので、本当の悪人は出てこなくて、三人組も救われるべき人物たちである。
ピートは三人の中では一番神を信じている人物で、キッドは赤ん坊の為に子守唄を歌ってあげるのだから、おそらく子供の頃にはそのような環境で育っていたのだろう。
キッドの歌を聞いたボブも故郷の子守唄だと言っているので、彼も子守唄を歌ったことがあるのかもしれない。
三人を追う保安官と赤ん坊を連れた三人組の運命はどうなるのかと話を進める手際はジョン・フォード監督の独壇場であるが、最後に頭取の娘がボブに駆け寄るのだけは「何なんだ?」と思ってしまう。
監督 ジョン・フォード
出演 ジョン・ウェイン
ペドロ・アルメンダリス
ハリー・ケリー・Jr
ジェーン・ダーウェル
ベン・ジョンソン
メエ・マーシュ
ストーリー
アリゾナのウェルカムにやって来た3人の男が、突然町の銀行を襲い砂漠の中に逃れていった。
3人のうち首領格はたくましいボブで、あとの2人は中年のピートとまだ年若いキッドであった。
烈日を浴びて砂漠を行く彼らは渇きに苦しんだが、深傷を負っているキッドは1人耐えがたかった。
砂漠には所々に旅人のための水槽タンクがあり、彼らはその1つであるマジャヴ・タンクへと急いだが、そこはすでに町の役人スイートが部下とともに先回りしていた。
彼らは追手の裏をかき逆戻りしてテラピン・タンクへ向かった。
そこには1台の幌馬車が止まっており、中に1人の若い婦人がいた。
ニュー・エルサレムから来た彼女は身重の体であり、まもなくピートの世話で赤ん坊を生み、3人に赤ん坊のことをくれぐれも頼みながら死んでいった。
3人は途方にくれたが、婦人の残していった子育て本と聖書に力を得てニュー・エルサレムに赤ん坊を連れて行くことにした。
しばらくしてテラピン・タンクに来たスイートは幌馬車の中に残されていた婦人の衣類が彼の姪のものであると知って、3人が彼女を殺したものと思い、ますます彼らに対する憎悪に燃えた。
その頃3人は死の苦しみと闘っていた。
キッドは死に、ボブとピートは赤ん坊をいたわりながら砂漠をさまよったが、突然ピートは足を折り、いまはこれまでと自殺した。
ボブは1人、最後の力をふり絞り、倒れては立ち遂々ニュー・エルサレムに辿り着いたのだが・・・。
寸評
話は単純だが背景には宗教的な筋書きが施されており、クリスマスを祝う描写などもあるから、もしかすると本国では公開時期が12月だったのかもしれない。
母親が死んでしまった新生児を男三人が何とか育てる微笑ましい話であると同時に、三人の逃亡劇でもある。
三人は銀行強盗をやった悪人なのだが、登場した時から人のよさそうな雰囲気がある。
三人組は街へ入って来た時に庭の手入れをしていたオヤジに遭遇する。
そこでのやりとりはお互いの人の好さが出たものである。
重要なのはこのオヤジと奥さんの会話である。
二人によると、到着すべき姪が到着していないし、オヤジは姪のダンナをあのバカ呼ばわりしている。
これが大事な伏線となっていることは、大抵の映画ファンは感じ取るだろう。
そしてオヤジが保安官であることが分かり、ボブは顔を曇らせる。
導入部としては要領を得ていて、僕はこのなにげない処理にジョン・フォードの職人技を見る思いがする。
三人組は逃走時に大切な飲料水袋を撃たれてしまい水を求めて鉄道の貯水場に向かうが、そこには保安官とその助手達が先回りして警戒に当たっていたので、仕方なく貯水池を目指すことになる。
到着すると貯水池はなく捨てられた幌馬車があり、その中には出産が迫っている瀕死の女性が居てピートの助けで赤ん坊は無事生まれるが、女性は息が絶えてしまう。
死の直前に女性から三人は子供の名付け親として立派に育てると約束をさせられてしまうのだが、その妊婦が何故幌馬車に一人居るのかの説明はボブによってなされる。
映像がない手抜き的な描き方に感じるが、なんとか冒頭の伏線が効いていて脚本の上手さがうかがえる。
先ずは赤ん坊を託された三人の微笑ましい行動と、名付け親としての愛情表現が手際よく描かれる。
そこから砂漠を相手に生き残りの生存競争になって行くのだが、彼らが仲たがいして争いごとが起きることはなく、傷ついたキッドを残る二人がいたわりながら旅を続ける。
過酷な逃亡劇を描きながらジョン・フォードはユーモアを盛り込み重苦しい雰囲気を和らげている。
代表的なのがボブがメキシコ人のピートに「スペイン語を話すな。この子はアメリカ人なのだからスペイン語を覚えてしまったらどうするんだ」と言い放つことだ。
言われたピートの表情が何とも言えないが、完全な人種差別である。
そして生まれた赤ん坊の”ロバート・ウィリアム・ペドロ”という名前に関するやり取りも面白い。
ユーモア部分はピートが一手に引き受けていて、ジョン・ウェイン以上に存在感がある。
最後に聖書に記載されている通りにロバが突然出てくるなど宗教色が強い作品なので、本当の悪人は出てこなくて、三人組も救われるべき人物たちである。
ピートは三人の中では一番神を信じている人物で、キッドは赤ん坊の為に子守唄を歌ってあげるのだから、おそらく子供の頃にはそのような環境で育っていたのだろう。
キッドの歌を聞いたボブも故郷の子守唄だと言っているので、彼も子守唄を歌ったことがあるのかもしれない。
三人を追う保安官と赤ん坊を連れた三人組の運命はどうなるのかと話を進める手際はジョン・フォード監督の独壇場であるが、最後に頭取の娘がボブに駆け寄るのだけは「何なんだ?」と思ってしまう。
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