おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

愛の渦

2023-07-04 06:54:28 | 映画
「愛の渦」 2014年 日本


監督 三浦大輔
出演 池松壮亮 門脇麦 新井浩文 滝藤賢一 三津谷葉子
   中村映里子 駒木根隆介 赤澤セリ 柄本時生 信江勇
   窪塚洋介 田中哲司

ストーリー
秘密クラブ「ガンダーラ」
時間:0時~5時まで
料金:単独男性2万円、単独女性1千円、カップル5千円
ルール:コンドームを必ずつけること。
    行為の前には必ずシャワーを浴びること。
    女性の意思を尊重してHすること。
閑静な住宅街にあるマンションの一室。
バスタオル1枚で気まずそうに思い思いの場所に座っている男女8人。
暗い顔の親から仕送りをもらっている引きこもりニート(池松壮亮)、茶髪のフリーター(新井浩文)、真面目そうなサラリーマン(滝藤賢一)、工場勤務の太った男(駒木根隆介)、地味なメガネの女子大生(門脇麦)、気の弱そうな保育士(中村映里子)、かわいらしい今どきのOL(三津谷葉子)、大量のピアスをつけ痩せぎすの女(赤澤セリ)などで、社会では友達関係になりえない、バラバラな風貌だ。
ここは「セックスがしたくてたまらない人たちが集まる」店。
行為に及ぶまで、ぎこちないやり取りがあるが、一度してしまえば欲望は気持ちいいほどむき出しになっていく。
しかし同時に、「やりたい相手」と「やりたくない相手」、それにともなう駆け引きや嫉妬など、それぞれの本音も露になっていく。
そんな中、ニートは女子大生に特別な感情を持ち始める。
ぶつかり合う心と体、真夜中に途中参加してくるおかしなカップル、欲望渦巻く一晩は一体どこへ向かうのか…


寸評
乱交パーティに集った男女8人の物語というだけでかなりセンセーショナルだ。
客である8人の出演者は、ほとんどの時間をバスタオルを巻いた姿で過ごし、時たまセックスにふける。
最初はぎこちない会話で始まりなかなか打ち解けられない。
やがてそれぞれが行為を終えると、少し和やかな雰囲気が出てくる。
再度、行為に及んだあとはそれぞれのエゴが出てきて、他人を誹謗中傷するようになってくる。
こんなクラブがあれば、そのような進展を見せるのかもしれないなと納得させられる。
いわゆる会話劇の範疇に入る作品で、2時間をしっかりと見せてくれる。
力作と言っていい作品なのだが、しかし中身は何もなくて、したがって後に何も残らない作品でもある。

8人の男女に店長と従業員、途中で加わった1組のカップル。
合計12名の心の概念のようなものはどこにもない。
わずかに、多少恋しかけた青年の湧き上がる心の動きはあるけれど、それもあっけなくしぼんでしまう。
途中で加わった男の勝手な言い分も出てくるが、そのカップルもあっけなく消え去ってしまう。
なんだかイラつく展開なのである。
僕には三浦のこの映画への意図がはっきりしてないのが今苛つく原因だったと思う。
映画では何を撮りたいのかが作品から自然と湧き出てくるはずなのだが、この作品にはそれがない。

際立った場面設定なのだがリアリティのないのも乗り切れない一因だ。
わざとらしい女子大生・門脇麦の喘ぎ声だけではない。
あんな場所で本当の職業なんていう奴がいるわけがないし、出身地だって明かすはずはないと思うのだ。
嘘ついたり、見え張ったりすると思うのだが、そんな心理を表現していたわけではない。
そもそもこの8人がここに来た背景も不明で、単なる助べえの集まりでは映画としてどうなのかなあ…。

アクセントはあることはあるのだ。
一番は池松壮亮のニートと、門脇麦の女子大生の関係で、心を通わせた感がありながらも、偽りの自分と本当の自分の出会いで結びつくことはない。
そのはかなさは余りのあっけなさのために消化不良である。
サラリーマンの滝藤賢一に奥さんから電話がかかってきたり、コンドームを片付ける従業員の窪塚洋介に子供が生まれたメールが入ったりする家族を意識させるシーンもあるのだが、それが彼等にどう影響したのかを描くことも拒否している。
僕が印象に残ったシーンは結局、窪塚洋介がメールを見るシーンと、女子大に戻った門脇麦が普通の女子大生の笑顔を見せるシーンだけだった。
不思議なことに、出演者が男女ともに裸を見せて頑張っていたのに、そのシーンが何も残っていない。
映像ではあらゆる行為は見せてはいても風景的だったことに起因しているのだろう。
だからこれはポルノ映画ではない。
その点においては作者の意図は伝わってきた。


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