「アンダードッグ 後編」 2020年 日本
監督 武正晴
出演 森山未來 北村匠海 勝地涼 瀧内公美 熊谷真実
水川あさみ 冨手麻妙 萩原みのり 柄本明
ストーリー
宮木(勝地涼)は芸能界を引退し、晃(森山未來)も引退を決意して妻の佳子(水川あさみ)との関係を修復しようとしたが、逆に離婚届を突き付けられ、息子の太郎(市川陽夏)にも落胆され、晃は窮地に追い込まれた。
更に勤め先のデリヘル嬢が引き抜きにあって、仕事も失いかねない。
また、デリヘル嬢の明美(瀧内公美)は同居する新しい男のDVによって母子共に暴力を受け、明美自身も虐待に加担してしまう。
思い詰めた明美が娘の美紅(新津ちせ)を崖から突き落とし、呼び出された晃は美紅を救出して病院に連れて行った後で明美に自首を促した。
晃は明美に待っているからと伝える。
晃が勤めるデリヘルの店長木田(二ノ宮隆太郎)は引き抜き相手を刺し、自らも傷つき入院していた。
一方、龍太(北村匠海)は子どもが生まれ幸せな生活を送っている。
ボクシングも6連続1回KO勝ちという快進撃を続けていた。
しかし龍太が明美を送ってきた田淵(上杉柊平)に顔を見られたことから彼に不運が訪れる。
かつて龍太が悪の時代に半殺しに合わせた相手が車椅子の生活を余儀なくされた田淵で、復讐に現れた田淵によって龍太はナイフで目に負傷を負わされた。
ボクサー生命が危ぶまれるケガだったが、龍太は晃に試合の申し入れを行う。
晃は龍太の妻加奈(萩原みのり)から「理由は心のどこかに末永さん(晃)がいたからだ」と聞かされる。
かつて児童施設で晃と龍太は出会っていたのだ。
二人は試合に向けて過酷なトレーニングを再開する。
寸評
前編とは一線を画す後編となっている。
勝地涼の宮木は登場せず、ボクシングのシーンが極めて少ない。
冒頭の晃と妻の佳子がファミレスで口論しているシーンから始まり、ボクシングに関係のない話が展開される。
前半と違って晃のセリフは多くなっている。
前半では明らかになっていなかったことが次々と明かされていく。
晃は働いている風俗店のために奮闘するのも驚きの展開である。
晃が先ず係わるのがデリヘル嬢の明美である。
もともと明美を顧客の待つ場所までの運転手をしていた晃なのだが、親身になるのは明美が仕事(?)をしている間に面倒を見ていた美紅が息子の太郎と重なったからではないだろうか。
田淵の所で明美がDVにあっていることが示されるが、ひどいのは明美による娘へのDVだ。
それでも娘は母親に従順で、出かける母親に必死でついていく姿が痛ましく思えた。
母親は新しい男によって変わってしまったのだろうが、娘宛ての手紙によって若干救われた気持ちになれたのだが、出所した母親を美紅は受け入れることが出来るのだろうか。
晃は風俗店の苦境も救ってやろうとする。
どうやら50万円を都合したようだが、それだけのことをする理由がどこにあったのだろう。
店長の木田は晃と友だちのようなことを言っているが、晃は友だちなんかではないと木田に怒鳴っている。
しかし晃はかつて木田に救われたことがあったのだろう。
風俗店の共同経営者らしい兼子(熊谷真美)がそのようなことを言っていたが詳細は分からない。
木田と兼子のコンビは愉快な存在で、女の子が居なくなって仕方なく兼子の熊谷真美が代役を務めるところなどは笑ってしまう。
兎に角、後編では晃はボクシング以外のことで奮闘する。
そんな晃を励ますのが意外や意外、幼い息子の太郎である。
太郎にとって晃は母親が拒絶しても自慢の父親なのだ。
前半で別のボクシングジムに所属している龍太が、やたらと晃のジムに現れていたが、何故そうしていたのかの理由も明かされていく。
妻の加奈によって龍太の生い立ちなども語られ、龍太の過去も明らかとなっていく。
前半の退屈しそうな静かな展開に比べれば随分と違う描き方である。
前後半合わせてこれだけの尺が必要だったのかと思ってしまうが、前半で押さえた分を後半で一気に爆発させる意図でもあったのだろうか。
前編と同様にラストのボクシング試合の場面が見どころとなっているが、この様なシーンの映像処理は流石にアメリカ映画に一日の長がある。
戦う以上、勝者と敗者が存在するが敗者が負け犬になるとは限らない。
敗者と敗け犬は同義語ではないと知らされる。
太郎は父親の雄姿を心に刻んだに違いない。
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