末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー

2017-07-10 08:44:39 | 映画のはなし
またまた、素敵なドキュメンタリー作品に出会えました。

1950年代の終わりから2000年代初頭にかけて、
ハリウッドの裏方職人として活躍した、
ハロルドとリリアンのマイケルソン夫妻。

文章で記された脚本を、"映画" という視覚要素メインの作品として
完成させるには、スタッフ陣による映像化イメージの共有が
不可欠となりますが、監督のビジョンを的確に絵コンテで表現し、
イメージの共有を具現化することで、数々の名場面誕生に繋げていった、
ストーリーボード・アーティストのハロルド。

"神は細部に宿る" という言葉があるように、
作品の隅々まで確かな裏付けに基づいて、はじめて、
その作品はリアリティーあるものとして成り立つ訳ですが、
映画の題材そのものから、画面に映る衣装、美術などに至るまで、
社会背景や時代考証を十分に調査・反映するための、
映画リサーチャーを務めていたリリアン。

本編では、二人がハリウッドにもたらした功績を、
彼らの結婚生活も織りまぜつつ語っていくのですが、
どちらも、必ずしも順風満帆ではなく、それでも、お互いを大切にしながら、
夫婦として、仕事上の同志として、生き抜いてきたことが、
見ていてとても良く伝わってくる、非常に味わい爽やかな作品でした。
かつての二人のやり取りを、雰囲気ぴったりな絵コンテで描いていく演出も、
この映画の個性として存在感抜群で、すごく楽しかったです。

切ないのは、これだけ業界に尽力した二人なのに、
スタッフとしてクレジットされることのなかった作品が、数多くあるという事実。
見る映画を決める際、監督や出演者の名前で判断することは多々ありますが、
その裏には、実はどれだけの、作品を支える無名な職人たちがいるのかを、
このドキュメンタリーは、我々観客に思い至らせてくれます。

だからこそ、名作映画の名シーンが、如何にハロルドの描いた絵コンテ通りであるか、
リリアンのリサーチ・ライブラリーを、巨匠と呼ばれる名監督たちが如何に重宝していたかが、
映像で記録され、ひとつの映画作品として公開されたことは、とても意義のあることです。

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   映画 『ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー』

  ◇原題:Harold and Lillian: A Hollywood Love Story
  ◇関連サイト:公式サイト ( 日本版 )、IMDb ( 関連ページ
  ◇鑑賞日:2017.7.1. 映画館にて

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