ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

斎藤幸平著『人新世の「資本論」』から

2024-05-15 10:58:00 | 日記
最近はデイサの隙間時間に、斎藤幸平著『人新世の「資本論」』(集英社新書)を読んでいる。
この本は、論理の組み立てが緻密な上に、400頁もある大部の本なので、なかなか読み終わらない。
新書ということもあるし、ベストセラーだと聞いていたので、すぐに読み終えるだろうと思っていたが、とんでもない。デイサの喧騒の中で読むのにはちょっとハードルが高すぎたきらいがある。

きのうデイサでこの本を読んでいたら、こんな文章に出会った。

資本がその支配を完成させる、 もう一つの人工希少性がある。それが『負債』によって引き起こされる貨幣の希少性の増大である。無限に欲望をかき立てる資本主義のもとでの消費の過程で 、人々は豊かになるところか借金を背負うのである。そして、負債を背負うことで、人々は従順な労働者として、 つまり資本主義の駒として仕えることを強制される。」(254頁)

著者が「資本主義のもとでの消費」の特徴としてあげるのは、ここでは人々が欲望に駆り立てられて大きな負債を背負い、それを返済すべく(奴隷のように)「従順な労働者」として飼い馴らされるということである。

ふむふむ。たしかに資本主義のもとでは、人々は腕時計の「ロレックス」が、あるいは自動車の「ベンツ」が、さも魅力的なモノであるかのように思わされ、それを買うために無理な借金をして、あくせくと働かされることになる。

たしかにそうだ。しかしなあ・・・。

頁をめくる私の脳裏をよぎったのは、最近なにかと話題にのぼる「カスハラ」という言葉だった。カスハラ。カスタマー・ハラスメント。ネットには、こういう説明がある。

「 顧客が企業に対して理不尽なクレーム・言動をすること をいいます。 具体的には、事実無根の要求や法的な根拠のない要求、暴力的・侮辱的な方法による要求などがカスハラに当たります。」

つまり、「カスハラ」をはたらく一部の「カスタマー(顧客)」は、「従順な労働者、従順な消費者」という自分の(奴隷のような)殻を破り、その意味では、自分を飼い馴らそうとする資本主義体制そのものに激しく(暴力的な方法で)異議を申し立てているのだ。そう、彼らは資本主義体制を激しく憎悪し、この体制をぶち壊そうとまさしく反乱を起こしているのである。

彼ら個々人を糾合する扇動家が現れたら、彼らは容易に資本主義を転覆する革命の闘士になるに違いない。

と、まあ、そんなことを妄想していたら、女性のPTさん(理学療法士)が「**さん、リハビリの時間ですよ」と私に声を掛けにきた。妄想の時間はあえなく中断である。きのうは好い天気だった。


コメント
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