ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

地位 その名と実と

2016-08-23 13:46:49 | 日記
悲しいことだが、歳をとれば誰でも心身の能力は衰えてくる。若
かった頃と同じようには仕事が出来なくなる。それなのに、背負
わなければならない仕事の重みは増す一方だ。辞めたい、と思
う。職を辞して、後進に道を譲りたい、とあなたは思う。

しかし、組織を統率する役割をあなたに期待する相手は、まだ辞
めないで欲しい、と言う。いま辞めてもらっては困る、と言う。
仕事を続けるのが体力的に厳しいのなら、名前だけでも構わない、
職務の大半はだれかに代行させることにしますから・・・。わが社を
統合するために、いわばシンボルとして、我々はあなたの名前が
欲しいのです、――そういう返事が返ってくる。

さて、どうしたものだろうか。名前を貸す。そのことにあなたは
大きな抵抗を感じるのだ。名と実が伴わなくなるのは、老人にな
ればよくあること。名実の不一致に目をつぶるのも、仕方がない
ことなのかも知れない。会社側の要求を呑んでも良いのかもな。
でも、それもこれも、俺の職務を代行してくれる後任が、俺と同じ
ぐらい申し分なく、俺の職務を代行してくれれば、の話だ。しか
し、そんなことはまず望めないしなあ、とあなたは考える。

俺の気持ちを分かってもらうためには、とあなたは言うだろう。
美空ひばりでも、北島三郎でもいい、抜群の歌唱力を持った演歌
歌手のことを考えてもらうのが良い。ひばりやサブちゃんは、
「美空ひばり歌謡ショー」や「北島三郎歌謡ショー」と銘打っ
て、ショーの中身を若手演歌歌手に代行させることを、認めるだ
ろうか? そんな羊頭狗肉の詐欺商法に、自分の名前が使われる
ことは嫌だ、と彼らは思わないだろうか? 二人とも、そんなこ
とはやめて欲しいと思うに違いない。自分ほど上手に「川の流れ
のように」を唄える歌手はいない、自分ほど上手に「与作」を唄
える歌手はいない、と思うからだ。

あるいは、とあなたは考えるかも知れない。たいへん畏れ多いこ
とだが、天皇陛下が生前退位にこだわられるのも、同じお気持ち
からではないだろうか。「天皇による被災者の慰問」は、天皇に
しかできないのだ。摂政が代行したのでは、それは「摂政による
被災者の慰問」になってしまって、「天皇による被災者の慰問」
でなくなってしまう。「北島三郎歌謡ショー」が北島三郎にしか
できないように、「天皇による慰問」は、天皇にしかできないの
だ。

心身の衰えのために「与作」が上手く唄えなくなったら、「演歌
のサブちゃん」はもはや「演歌のサブちゃん」でなくなる。同様
に、心身の衰えのために「天皇による慰問」ができなくなったら、
天皇は天皇でなくなる。だからそうなったときには、自分は退位
して、別の有資格者に天皇の位を譲ったほうが良い。陛下はそう
お考えなのではないだろうか。

さて、それはそれとして、問題はこの俺の身の振り方だが、どう
したものだろうかなあ・・・。
コメント
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