ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

無いものねだり?

2016-01-24 09:29:47 | 日記
哲学が好きになるのは、知恵のない人。

倫理学が好きになるのは、モラルがない人。

宗教学が好きになるのは、信仰心がない人なのです。

昔むかし、だれかがそんなことを言ったのを思い出した。

数日前に老子の18章を読んでいて、である。

要するに、無いものねだり。

この言葉を聞いたとき、私はまだ大学生で、

哲学に興味を持っていた。

大学院に行って哲学を勉強したいと言ったら、

相手がそう答えた。

答えたのは、哲学の授業を受け持っている女性の助教授だった。

では、ボクもあなたも知恵のない人だということですね。

そういう言葉が口から出かかったが、

私はその言葉をぐっと飲み込んで、口には出さなかった。

無いものねだり。

老子は語っている。

「大道廢、有仁義。智惠出、有大僞。六親不和、有孝慈。國家昬亂、有忠臣。」

〔大道廃(すた)れて、仁義有り。

智恵出でて、大偽(たいぎ)有り。

六親(りくしん)和せずして、孝慈(こうじ)有り。

国家昏乱(こんらん)して、忠臣有り。〕

(人間本来の自然な生き方である「道」が失われてしまったからこそ、人々が仁義などと言い出すのだ。

小賢しい知恵を振りかざす者がいるからこそ、人々は偽り合う様になったのだ。

家族が仲良く暮らしていないからこそ、孝行とか慈愛とかが重んじられるのだ。

国がひどく乱れて安定しないからこそ、忠義の臣などがもてはやされるのだ。)

そういえば、一時期、日本のマスコミや論壇で、

「美しい国日本」のスローガンがしきりに吹聴され、

愛国心の醸成が強調されたことがあった。

ちょうど10年ほど前、

安倍晋三氏が第一回目の総理大臣の職に就いたころである。

「美しい国日本」のスローガンを唱えたのは、

他でもない、おちょぼ口のこの人だった。

あの頃、日本はもはや「美しい国」ではなくなり、

「愛国心」を持つ人もいなくなっていたんだろうなあ。

老子の言葉を噛み締めながら、私はそんなことを考えた。
コメント
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