「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(33)

2013年12月25日 | 今の物語
二人はクリスマス当日、ミウのアパートに二人で帰ってきました。

ミウはたまたま、イブの前の日に掃除をしていたので・・・特に差し支えはありませんでした。


二人で、ミウのアパートの炬燵に入ってお茶を飲んでいると・・・じんわりとしあわせを感じるミウなのでした。


「で、ミウへのクリスマス・プレゼントなんだけどさ」


と、サトルは自分のバックをがさごそ探しています。

「ミウって、酔っ払って僕の携帯に何度も電話かけてきたじゃん?」

と、サトルは言います。

「え?わたし、そんなことしてた?」

と、ミウはびっくりします。なにしろ、記憶に無いのですから。

「やっぱり・・・相当飲んでたからな・・・一度や二度じゃないよ・・・けっこうな回数だよ」

と、サトルは言葉にします。

「あちゃー・・・・あまりに寂しくて、つい、電話しちゃったのね・・・全然覚えていないけど・・・それが怖いわ・・」

と、ミウは言葉にします。

「ミウは口癖のように、「わたしは編集者に戻りたい。素敵な原稿をモノにして、高峰編集長に直談判して、フリーの編集者として、復活したい」って言ってたから」

と、サトルは言葉にします。

「・・・で、それが現実の夢になるか、わからないんだけど・・・完全女性向けのクリスマス向けのラブストーリーを僕も書いてみたんだ」

と、サトルはバックから原稿を出してきます。

「この間も、ミウが言ってくれたじゃん。女性向けの恋愛小説家になるなら、ミウが完全にバックアップ出来るって」

と、サトルは言葉にします。

「・・・題して「月夜野純愛物語」・・・それ本にできないかな?とりあえず、プロの目で読んでみてよ。一応、自信はあるんだ。好きなストーリーだし」

と、サトルは笑顔で言います。


ミウは真面目にその原稿を読み進めます。

ミウとサトルがこれまで辿ってきた純愛物語が、そこには綴られていました。


「これって、私たちの恋物語・・・じゃない。実際にあったことが書かれている」

と、ミウはびっくりします。

「実際に遭った事をベースに少し夢物語的に書いてみたんだ。まあ、その原稿がミウの夢を叶えてくれるかどうかわからないけど、努力はしてみた・・・そんなところかな」

と、サトルは笑顔になります。

「ミウの為に書いたんだ。そのラブストーリーは。ミウの為だけに、ね」

と、サトルはミウを見ながら、さわやかに笑います。


少しの時間をかけて、その原稿を読み終えたミウは真面目な顔で、サトルを見ました。それは、決意を持った表情のミウでした。


「ねえ、サトル・・・サトルは、今日この部屋で休んでて・・・わたし東京の清潮社に行ってくる。高峰さんにこの原稿を見せて・・・自分を試したいの」

と、ミウは真面目な表情で言った。

「ああ・・・そういう流れになると思ってたよ。僕としても、その原稿が本になれば、作家に転身出来るからね。僕の夢も叶う・・・僕もクリスマス・プレゼントが欲しい」

と、サトルは真面目な顔でミウに言った。

「うん。わかった・・・サトルの為にも、全力で高峰さんと交渉するわ・・・サトル待ってて」

と、ミウはすぐに黒いスカートスーツに着替え・・・ネクタイは赤をチョイスすると、強い目でサトルを見てから、

「じゃ、行ってくる!」

と、サトルの原稿をバックにいれて、部屋を出て行った。

「さて・・・結果を御覧じろ・・・ってところかな。二人はしあわせになれるのか、それともなれないのか・・・それを楽しみに、今は昼寝でもしておこう」

と、炬燵に入ったまま、寝っ転がるサトルでした。


「負けられない戦いだわ・・・」

と、ミウは駅までの道を急ぎながら、そんな風に思っていた。

「わたしの為にも、サトルの為にも・・・わたしは人生勝ちにいくの・・・この原稿がわたしとサトルの人生を変えてくれる。そのチカラをこの原稿は持っているわ」

と、ミウは強く思っていた。


「わたし、人生を勝ちにいくの・・・」

ミウはそう強く思いながら、駅への道を急ぐのでした・・・。


数時間後、ミウは東京は新宿区にある清潮社の受付に来ていた。

「懐かしい・・・若い頃、ここでがんばっていたものね・・・わたし」

と、建物を見ながら、受付に声をかける。

「わたし、フリーの編集者で以前ここの社員だった姫島ミウと言います。雑誌「Bon Voyage」の編集長高峰ショウイチさんに姫島が原稿を持って来たと伝えてくれませんか」

と、受付の女性に言葉を出した。

「わかりました。雑誌「Bon Voyage」の編集長高峰ショウイチさんですね」

と、受付の女性は笑顔になりながら、内線で相手とやりとりをしている。

「5階の第3会議室まで来てくれとのことです。エレベーターはあちらになります」

と、受付の女性はさわやかに笑い、右手でエレベーターの場所を指し示した。

「ありがとう」

と、ミウは言うと、

「エレベーターの場所くらい、覚えているけどね」

と、苦笑しながら、かつて知ったる自分の職場に向かうミウだった。


清潮社5階の第3会議室に入ったミウは、

「ここで何度も会議をしたわよね・・・喧々諤々・・・いろいろな議論をしたっけ・・・遠い昔の話だけど・・・」

と、ひとりごちていると、ドアが開き、かつての同僚・・・潮田ユカ(32)と小菅ミキ(32)が入ってくる。

「ユカ、ミキ」

と、ミウが懐かしそうに言葉にすると、

「ミウ」「ミウ」

と抱き合う3人だった。

「ミウ・・・少し痩せた?っていうか・・・美しくなったじゃない、ミウ・・・」

と、潮田ユカが驚く。

「さては、ミウ・・・新しい恋人が出来たでしょ?」

と、小菅ミキがにやりとしながら冷静に言葉を出す。

「へへー、内緒」

と、笑顔のミウに、二人共恋人の存在を確信するのだった。

「高峰編集長に原稿を持ってきたんだって?」

と、小菅ミキが聞く。

「うん。これ・・・ミキも読んでみる?編集長最優先ではあるけれど・・・」

と、ミウが言う。

「今、編集長は来客中だから・・・それが終わったら、すぐ来るって言ってたから、15分くらいはかかりそうよ」

と、潮田ユカが言葉にする。

「じゃあ、先に読んで・・・編集者としての感想も聞きたいし」

と、ミウは原稿を一部ずつ、二人に渡す。

「「月夜野純愛物語」か・・・ラブ・ストーリーね」

と、小菅ミキが言葉にする。

「なんとなく、幻想的な、女性が好きそうな題名ね」

と、潮田ユカも言葉にする。

「じゃ、読んでみるわ。なんか題名からしておもしろそう」

と、小菅ミキが言葉にする。

「うん。完全に女性向けね・・・」

と、潮田ユカも言葉にした。


さすがに本を読むことを仕事にしている二人は15分ほどで、すべてを読み終えてしまう。


「これ、事実をベースに、書いてあるでしょ?」

と、まず、小菅ミキが真面目な顔して、ミウに聞く。

「うん。説得力半端ないもんね。創作というより、ドキュメントって感じがする。とても読ませる内容よね」

と、潮田ユカも言葉にした。

「いろいろな経験から出た言葉が書いてある・・・しあわせになる原理みたいなものも書いてあるじゃない」

と、小菅ミキも言葉にする。

「うん。深い内容だわ・・・たくさん経験を経てないと書けない内容・・・創作とは違うものだわ」

と、潮田ユカが言葉にする。

「これ・・・ミウが素敵に輝くようになった理由はこういう経験だったのね?」

と、小菅ミキが、言葉にする。

「まあ、そういうことかな」

と、ミウが笑顔になったところに、雑誌「Bon Voyage」の編集長高峰ショウイチが第3会議室にどたばたと入ってくる。


そこには少し細身になり、すっかり美しい大人の女性になった元の部下で、ショウイチが将来を最も期待していた、若手編集者姫島ミウの大人の女性に成長した姿があった。


「姫島・・・おまえ、すっかり大人の・・・いい女になったな」

と、ショウイチはどこか涙ぐみそうな雰囲気があった。

「ショウさん・・・」

と、ミウも感慨深かった。最も目をかけてくれ・・・最後までミウを守ろうとしてくれた部下思いの元上司・・・ミウは彼に感謝していた。

「っと、この原稿か?姫島?」

と、ショウイチは小菅ミキが差し出した原稿をひったくるように手に取るとパイプ椅子に座り、気迫を見せて読み始めた。


たちまち20分近くの時間が過ぎ・・・最後にため息をひとつついたショウイチは、ミウを正面から見た。その目は怒っているようでもあった。

「何かまずかったかしら?」

とミウは思ったが、もうどうしようもない。


と、次の瞬間、ショウイチは満面の笑みをたたえて、立ち上がると、ミウに握手を求めた。

「姫島、よく帰ってきた。この原稿、人を本気にさせて読ませるいい原稿だ・・・こんな原稿発掘出来たのは、おまえの才能だ」

と、ショウイチは手放しの褒めようだ。

「あの時、この二人が、おまえに自主退職を薦めたろ。あれは俺が二人に頼んでやった芝居だ。俺はお前を千尋の谷に突き落とすつもりで、仕方なくあれをやった」

と、ショウイチはミウの自主退職は、実は自分が仕組んだモノだったことを白状した。

「お前がうちの営業部にいつまでも燻っているのは、もったいなかった。他で編集者として修行させたかったのが、俺の本意だ。そして、おまえはその修業を終えた」

と、ショウイチは目を細める。

「お帰り、姫島・・・おまえと、フリーランスの編集者として、わが編集部は契約を結びたい。編集者として現役復帰だ。姫島よかったな・・・」

と、ショウイチはミウの手と何度も握手して、笑顔になる。

「また、一緒に仕事が出来るね、ミウ」「ほんと、また、一緒に仕事出来るのね、よかったわ、ミウ」

と、潮田ユカと小菅ミキも、満面の笑みを見せる。

「でも、わたしが戻ると・・・この会社、まずいんじゃ?」

と、ミウがショウイチに聞く。

「え、何が、だ?」

と、ショウイチは、わからない。

「葉山クミコさんがまた・・・会社に圧力をかけるんじゃ、ありません?」

と、ミウは恐る恐るショウイチに聞いてみる。

「お前、知らなかったのか?エジプトでの、あの事故・・・葉山クミコも池澤ユウマも、もうこの世にはおらんよ」

と、ショウイチは言った。

「へ?」

と、ミウは一瞬固まる。

「あの二人、亡くなったんですか?」

と、ミウの中には、いろいろな感慨が駆け巡った。

しかし、一瞬でミウはこころの態勢を立て直す。

「ま、でも、そういうことなら・・・わたし、一時期、ひどい生活してたから・・・新聞も読んでなかった時期があったし・・・」

と、ミウは言葉にした。

「半年くらい前だよ。エジプト旅行中の池澤夫妻は地元のトラックに後ろから追突され・・・完全にぺしゃんこで、死を意識する時間もなかっただろうとのことだ」

と、ショウイチが説明した。

「そうですか・・・痛みも感じず、瞬間的に天国へ行ったんですか。それなら、彼も・・・」

と、ミウは言葉にする。

「ということだから・・・年明けから正式に来てくれ・・・編集の方、また、頼むからな」

と、ショウゾウは笑顔で言い、もう一度、

「お帰り、姫島」

と言いながら、ミウを抱きしめた。


ミウは少しこそばゆかったが、顔は満面の笑みだった。

潮田ユカと小菅ミキも笑顔でその様子を見守っていた。


クリスマスの夕方5時過ぎになって、ミウは自宅アパートに到着した。

「サトルー、帰ってきたわよー」

と、ミウは自分の部屋の戸を明ける。

「おー、ミウ、お帰り・・・その笑顔・・・どうやらうまくいったみたいだね」

と、熱心に本を読んでいたサトルは顔をあげて笑顔になる。

「サトルの原稿、えらく激賞されちゃって・・・まあ、一部手直しの必要があるけど、全体的には問題ないって。サトル、作家デビュー出来るわよ。よかったわねー」

と、ミウはサトルに抱きついて、そういう言葉にする。

「そうか・・・そうか・・・夢が叶ったのか・・・僕の夢が・・・」

と、サトルも感慨深げ。

「すべてはミウのおかげだよ・・・あの時、ミウが僕のブログにコメントしてくれて・・・それが夢の実現のきっかけにつながったんだ」

と、サトルは言葉にする。

「ううん・・・わたしは、サトルの肩甲骨のカタチに惹かれて・・・それがわたしをあの地獄から救い出す結果になってくれたの」

と、ミウは言葉にする。

「すべてはサトル・・・あなたが、月の世界の王子様になってくれたから・・・月の世界の王子様・・・」

と、ミウは言うと、サトルの唇にくちづけした。


サトルはそんなミウを抱きしめて・・・さらに長い時間キッスをした。


窓の外に見える、「月夜野」の月が、そんな二人をやさしく照らしていた。


「・・・と、お腹すいたよ、ミウ。僕、昼も抜き出し・・・」

と、サトルのお腹がキスの途中で鳴り・・・サトルはミウに甘えた。

「あ、ごめん・・・いろいろ買ってきたから、夜ご飯すぐ作るね・・・」

と、ミウは立ち上がり、キッチンに立つ。


真っ赤なかわいいエプロンをしたミウはキッチンで手早く食事を作っている。

「とりあえず、これでビールでも飲んでいて・・・」

と、瓶ビールとガラスのコップ、キムチの乗った冷奴を出すミウ。

「ほう。男の好きな酒の肴を知ってるね、ミウは・・・」

と、サトルは喜ぶ。

「はい、最初くらいお酌するわ」

と、サトルのビールを甲斐甲斐しく注ぐミウ。

「ありがとう」

と言うと、ビールを飲むサトル。

「美味い・・・空きっ腹に冷たいビールはめちゃくちゃ美味い!」

と、サトルは、はしゃぐ。


ミウはひとりでキッチンに立ち、夕飯を用意している。今日は手軽に出来るちゃんこ鍋だ。

と、一生懸命用意しているミウの後ろからサトルがミウを抱きしめる。

「サトル・・・」

と、笑うミウ。

「暖かいな、ミウ・・・こうしているとしみじみと幸福・・・」

と、言葉にするサトル。

「いっその事、一緒に暮らし始めちゃおうか?それもありじゃね?」

と、笑ったサトルだった。


と、ミウは満面の笑顔で、包丁を置いて、後ろを向くと、サトルの唇にキスをする。

サトルもミウにくちづけをして・・・二人はまた抱きしめ合うのだった。


ミウは最高の笑顔だった。


「月夜野」の月がそんな二人をやさしく照らしていた。


つづく


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