「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「月夜野純愛物語」(ラブ・クリスマス2)(31)

2013年12月24日 | 今の物語
それから一週間が瞬く間に過ぎ、12月24日クリスマスイブ当日の木曜日。

時刻は夕方5時を回っていた。


ミウはヨウコやテルコ達と待機所にいて、普通に仕事をしていた。

ミウとヨウコは少しドキドキしていた。テルコ達おばちゃん連中も少しドキドキしていた。


と、待機所に朝日ヘルパーの所長竹島大造(52)が現れる。

「ヨウコ・・・なんか、男が一人、お前を訪ねて受付に来てるぞ」

と、竹島が言う。

「まさか、テツが?・・・ミウ・・・」

と、ヨウコはミウの方を見る。

「わたしも一緒に行くわ。大丈夫って、サトルは、言ってたし・・・」

と、ヨウコはミウを連れて受付に恐る恐る顔を出してみる。


と、一人の178センチくらいの細マッチョな角刈りの男が立っていた。


それは、女衒のテツではなく・・・。


「タカシ・・・タカシじゃないか。田中タカシ・・・例のあいつ」


と、ヨウコがミウに言うと、ヨウコは声をあげながら、その人物に喜色満面で近づいていった。

ミウも後ろからその二人に近づいていった。


「いやあ、ある人がヨウコはこの場所で働いているって教えてくれて・・・それで勇気を出して来てみたんだ」


と、タカシは言葉にしている。

と、タカシはすぐに土下座し、

「ヨウコ許してくれ。俺はあの時必死だったんだ。お前に価値のある独立した男になれって言われて俺は考えぬいて・・・断念していた板前の修業をやり直したんだ」

と、タカシは言葉にする。

「2年間、ある店で修行させてもらって・・・俺は自分に自信が持てるようになった。親方も俺の腕を認めてくれて・・・将来的には暖簾分けすらしてくれるって事になった」

と、タカシは言葉にする。

「細くてへなへなだった身体も鍛えなおして、こうやってマッチョな身体にもなれた。すべてはお前に次に逢うための修行・・・そう思って努力を続けたんだ」

と、タカシは言葉にする。

「俺はヨウコを愛していた。だからこそ、ヨウコを切るくらいの覚悟を持たなきゃダメだと思って。お前の事を忘れるつもりで修行に没頭したんだ」

と、タカシは言葉にする。

「だけど、無駄だったよ・・・俺のお前への思いは消えるどころか、あとからあとから、燃え上がるばかりだった」

と、タカシは言葉にする。

「だから・・・俺の腕が親方に認められたら、なんとしてもお前を見つけ出して・・・かみさんになってもらおうと、ずっと思っていたんだ」

と、タカシは言葉にする。


そして、タカシはすっくと立ち上がると、

「ヨウコ、俺と結婚してくれ。俺のかみさんになってくれ。俺はもう自分に自信が無くて、お前にしがみついているだけの男じゃない。板前として自分に自信が出来たんだ」

「男として、自分の生き方に自信が出来たんだ。その今こそ、俺は言う。結婚してください。ヨウコ・・・」

と、タカシは言うと、小さな青いジュエリーボックスを出し・・・中から指輪を取り出した。

「エンゲージリングだ。受け取ってくれ、ヨウコ・・・」

と、タカシは言う。


ヨウコは・・・いつしか涙を流しながら、笑顔でタカシを見つめていた。

そして、エンゲージリングを見ると、大粒の涙を流しながら、


「タカシーーーー」


と泣き叫びながら、タカシの腕の中に飛び込んでいた。


何事か、と集まってきていた朝日ヘルパーの社員達も、所長の竹島も、いつの間にか笑顔になり、大拍手になった。


「よかった・・・ヨウコ」

と、ミウが涙ぐんだ瞬間だった。


「この湿気た、ご時世に珍しくいい話だねえ」


とそこへ入ってきたのは、ヤクザ風の男5人を従えた「女衒のテツ」こと、倉島鉄蔵だった。

「だが、わりいがヨウコは俺のもんなんだ。俺はヨウコと何度も寝てるからな」

と、テツはタカシに凄んでみせる。身体の大きさはタカシの方が圧倒的に大きかった。

「俺だってヨウコとは何度も寝てるわい」

と、タカシも負けずに言い返した。


「あのな・・・ヨウコは俺に1000万円の借金があるんだよ。あ、それとも何かその金額お前が払ってくれるのか?即金だぜ」

と、テツはタカシに凄んで見せる。身体の大きさはタカシの方が圧倒的に大きかった。

「おまえ、昨日は500万円とか言ってたじゃねーかよ」

と、ヨウコも凄む。それをタカシは制する。

「1000万円出せばいいのか?即金で。そしたら、ヨウコは綺麗な身体になるのか?」

と、タカシは言った。

「兄ちゃん辞めときな。そんだけお金があったら、あんた自分で店だせるだろ。その金を使っちまったら、元も子もないだろうが」

と、テツは言った。

「ヨウコが綺麗な身体になるなら、そんな、はした金。いくらでも出してやる。俺にはこいつが必要なんだ」

と、タカシは言う。

「こいつさえいてくれたら、1000万円なんて金すぐに働いて作ってみせるわ」

と、タカシは言い切った。

「タカシ!」

と、ヨウコは感激の涙にむせぶ。


「ったくめんどくせえなあ。妙に舌のまわりのいい野郎だ。まあ、いい。とにかく、そっちがその気なら、気は進まねえが、力ずくということにしようや」

と、テツは一歩下がると、

「おう。兵隊たち、ちっとあのデカイの、のしてこい」

と、テツが命令するが、兵隊達は、タカシのデカさに躊躇している。

「おめえら、何やってんだよ。速く仕事しろよ。そんなだから、おめえら、給料安いままなんだぞ」

と、テツが言った瞬間だった。


「そこまでよ。倉田鉄蔵、いや「女衒のテツ」さん・・・あなた達の方が先に確保される順番なの」

と、黒い戦闘服を着た髪の毛の長い美人捜査官が、公安警察の手帳を見せながら、近づいてきた。


その後ろを固めるのが15人の、こちらも黒い戦闘服を着た屈強な猛者達だった。


おまけにその15人は見たこともないようなスパルタンな銃火器をテツらに照準を合わせて構えている。


「「女衒のテツ」さん・・・あなた、貸金法すら知らないようね。その他数々の法令違反により、逮捕します。全員確保!」

と、その美人捜査官が命令すると、黒い戦闘服の男たちは、「女衒のテツ」を含む6人の男たちを即確保し、疾風のように、その場を離れた。


結果に満足した美人捜査官は・・・ヨウコとタカシ・・・そしてミウの方へ近づいてくる。


「わたしは、東堂リョウコ(32)といいます。公安警察でチームのキャップをやっています。えーと、あなたがヨウコさん?」

と、リョウコは色白で美人な笑顔で、ヨウコの前に立つ。

「あの男はもう金輪際あなたの周辺に出没することはありません。ま、きついお灸を据えておくし、その気になれば、向う50年は隔離施設行きだから」

と、リョウコは笑顔でヨウコに言う。

「あ、ありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいか・・・」

と、ヨウコは言葉にする。

「お礼を言うのなら・・・鈴木サトルくんのいとこ、鈴木タケルさんに言ってください。わたしは彼の差配で来たので・・・」

と、リョウコは笑顔で言う。

「で、でも、どこでお礼を言えば?」

と、ヨウコが当然の疑問を示す。

「ま、彼の事だから、今日中に会えるでしょう。彼、そういう男だから」

と、リョウコは笑顔になる。

「それからあなたがミウさん?サトルくんから話は聞いてるわ」

と、リョウコは今度はミウに話しかける。

「あなたのSOSを受けて、鈴木サトルくんと鈴木タケルさんが共同して、今度の事にあたったの。あなたの為に仕事が出来て、サトルくん喜んでたわ」

と、リョウコは言葉にする。

「そ、そうですか。サトル、そんなこと言ってましたか・・・」

と、ミウは感激気味。

「それでは、わたしはこれで・・・日本政府は常に日本国民の平和と安寧の日々を守っていることをお忘れなく。それでは失礼します」

と、リョウコは敬礼すると、かっこ良く去っていった。


「なあ、それより、ミウ、もうサトルが駅に着く時間じゃないのか?」

と、腕時計で時間を確かめたヨウコがミウにせっつく。

「しまった・・・そうだわ・・・え、でも、わたし32歳のおばんよ・・・ねえ、どうしよ・・・」

と、急にうろたえ始めるミウだった。

「何言ってんだよ、ここまで来て。俺はこんな風にしあわせになれたんだから、今度はミウの番だろ!」

と、ヨウコが言ってくれる。

「そんなこと言ったって・・・こんな事初めてなんだもん。32歳のおばんが28歳の細身のスポーツマンと、なんて絶対合わないわよ」

と、ミウのこころは乱れる。

「いくらメールで仲良くなったって・・・男性って、会った瞬間、女性の外見次第で、恋ゴコロが消えたりするって言うじゃない・・・わー、どうしよう」

と、激しく不安になるミウ。

「もう、いいから・・・所長、バン借りるよ。タカシ、ミウを連れてバンに乗れ、俺が運転する」

と、ヨウコはテキパキと対処していく。


「どうしよう・・・どうしよう」

バンが発車しても、ミウは不安を訴えていた。

「もう・・・なるようにしか、ならねーよ、ミウ」

と、ヨウコは言葉にして・・・ヨウコの運転するバンは、「月夜野」駅前に滑りこんでいく。

「ほら、行くぞ・・・」

と、ヨウコとタカシは不安がるミウを連れて駅の待ち合わせ場所に立つ。

「ほら・・・ミウ、もう電車来るから・・・俺とタカシは少し離れたところから見てるから、しっかりやれよ」

と、ヨウコはミウに言うと、タカシと二人、少し遠い場所に控えた。


「どうしよう・・・わたしなんて、ただのおばんよ・・・28歳のイケメンスポーツマンとバランス取れるわけないじゃない・・・」


と、不安を口にするミウだが・・・改札口から入ってくる人々へ視線は注がれていた。

「うわ・・・電車着いたんだ・・・」

と、ミウは口にすると、不安から、改札口に背中を向けてしまう。

「こわい・・・すっごい、こわい・・・口から心臓が飛び出そう」

と、ミウは言葉にする。


と、その時、

「ミウ・・・この背中、ミウでしょ?サトルです。鈴木サトル」

と、声が聞こえてきた・・・ドキドキは最高潮・・・ミウは・・・恐る恐る、後ろを向き、サトルの顔を確認しようとした。


そこには175センチ程のイケメンの細身のスポーツマンが満面の笑みで立っていた。


「やっと逢えたね、ミウ」

と、サトルが笑顔で言った時、ミウは思わずその腕の中に飛び込んでしまった。ミウは嬉しくて仕方がなかった。


ミウは、

「もう死んでもいい」

と本気で思った。


サトルの腕の中は暖かだった。ぬくもりが心地よかった。

「ミウって、柔らかいな」

と、サトルも笑顔になる。

「っていうか、ミウって、20代だっけ?僕とあまり変わらない感じがするけど・・・」

と、サトルが言ってくれる。

「それとも、童顔なのかな・・・かわいいね、ミウって」

と、サトルが言ってくれる。


ミウは本当に、心から嬉しかった。

心から笑顔になった。


「もう死んでもいい」


ミウは、そう本気で、思うくらい、こころから嬉しかった。


「ギュウって抱きしめちゃお」


と、サトルは言うと、頬をミウの頬にあてて、本当にミウをギュウっと抱きしめるのだった。


それが心から嬉しい、ミウだった。


「もう死んでもいい・・・」


ミウは心から笑顔だった。


・・・と永遠にも近い、長い時間が過ぎた。


「ごほん、ごほん」

と、咳声が聞こえ・・そこには30代前半のタクシーの運転手スタイルの細身の男性が立っていた。

「?」

とミウは思ったが、

「あれっ、タケルさん、来てたんですか?この「月夜野」に・・・」

と、サトルが言ったので、ミウはそれこそが、すべてを差配した、鈴木タケル(32)だと知った。

「そりゃあ、かわいい、いとこの様子が心配だったし・・・まあ、いろいろ予定もあったからなー」

と、タケルは言葉にした。


その様子を見ていた、ヨウコとタカシも合流する。

「ヨウコ・・・この方が鈴木タケルさんだって・・・」

と、ミウが言葉にする。

「す、鈴木タケルさんですか・・・今回は本当にお世話になってしまって・・・」

と、ヨウコは緊張気味にお礼を言う。

「君が咲田ヨウコさんか・・・タカシくんの・・・彼の料理は絶品だよ」

と、タケルはタカシの修行している店に直接顔を出したらしい。

「タケルさん・・・なんとお礼を言ったらいいか・・・プロポーズも成功しましたし、俺達、絶対にしあわせになりますから」

と、タカシも丁寧にタケルにお礼を言っている。

「いやいや、イブはこうでなくっちゃ」

と、タケルは言った。

「イブってのは、女性が好きな男性と一緒に熱く過ごす日だろ?それを実現する日だもんね」

と、タケルは笑った。


ミウは、そのタケルを嬉しそうに見るサトルの笑顔に夢中だった。


つづく


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