行政マン・コーチのはじめの一歩

自治体職員でストレングスコーチ&ファシリテーターの丸本です。
人と組織の持つ強みを活かして、応援を続けています。

人事の心得

2007年02月24日 | 人事異動など

昨日、某課長補佐から、安岡正篤の『佐藤一斎「重職心得箇条」を読む』のコピーを渡されました。

重職心得箇条は、外務省との軋轢を繰り広げていた田中真紀子外務大臣に、小泉前首相が薦めた本です。

その中で、おそらくは人事異動に際し、こういった考えでしなさいよという趣旨で、次の一節をコピーしてありました。

『人々に択り嫌いなく、愛憎の私心を去て、用ゆべし。自分流儀のものを取計るは、水へ水をさす類にて、塩梅を調和するに非ず。平生嫌いな人を能く用ると云う事こそ手際なり、此工夫あるべし。』
(現代訳)
『択り好みをせずに、愛憎などの私心を捨てて、用いるべきである。自分流儀の者ばかりを取り立てているのは、水に水を差すというようなもので、調理にならず、味もそっけもない。平生嫌いな人を良く用いる事こそが腕前である。この工夫がでありたいものだ。』

私心を捨て、むしろ嫌いな人を活かす人事をするというのは、まさに心がけないといけないことだと思います。


私自身が人事をするうえで心構えとしているのは、以前も書いた西郷南洲翁遺訓の次の一節です。

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廟堂(びょうどう)に立ちて大政をなすは天道を行ふものなれば、ちとも私しをはさみては済まぬものなり。
いかにも心を公平にとり、正道を踏み、広く賢人を選挙し、よくその職にたふる人を挙げて政へいを執らしむるは、すなわち天意なり。
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人事は魔物で、油断すると自分の力と過信し慢心してしまいます。
あくまでも任命権者の権限の下働きであることを自覚し、天の仕事を行っている、一点の私心も挟み込んではいけないと戒めています。


また、人事を行ううえでの心がけとして、担当になった時から机のデスクマットにはさんでいる言葉があります。
荻生徂徠(江戸時代中期の儒学者・思想家)の「人を用うるの道」から、

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一、 人の長所を始めより知らんと求むべからず。人を用いて初めて長所の現わるるものなり。
二、 人はその長所のみを取らば即ち可なり。短所を知るを要せず。
三、 己が好みに合う者のみを用うる勿れ。
四、 小過をとがむる要なし。ただことを大切になさば可なり。
五、 用うる上は、そのことを十分に委ぬべし。
六、 上にある者、下にある者と才知を争うべからず。
七、 人材は必ず一癖あるものなり。器材なるが故なり。癖を捨てるべからず。
八、 かくして、良く用うれば事に適し時に応ずる人物は必ずこれあり。
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こうやって見ると、昔から言われていることは同じことで、同じことが何度も言われている意味は、常に人事にそういった過ちが生じていることの現われだと感じます。

コメント
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