行政マン・コーチのはじめの一歩

自治体職員でストレングスコーチ&ファシリテーターの丸本です。
人と組織の持つ強みを活かして、応援を続けています。

二つの白書

2008年07月23日 | ニュース記事
同じ日に発表された「労働経済白書」と「経済財政白書」の、日本型雇用慣行に対する捉え方の違いが面白かったので取り上げてみました。

経済財政白書は、従来の「成果主義が日本を救う」という典型的な捉え方で、日本型雇用慣行を批判。

成果主義に基づく賃金・雇用体系への転換を訴えています。

労働経済白書側は、最近の成果主義賃金・雇用体系への批判論と同様、行き過ぎた成果主義の修正と日本型雇用慣行の再評価といったところでしょうか。

改革に揺り戻しはつき物とはいうものの、私は経済財政白書のスタンスには否定的です。

リスクを取る人が高いリターンを得ることは当然のことであり、それを求める人はそうすればいい。

しかし、経済財政白書のスタンスは、「日本人全ての人がリスクをとって高いリターンを求める行動をとる」もしくは「とるべきだ」というもので、あまり現実的な考え方ではないと思います。

色んなタイプの日本人がいる中で、「現在」成功している人のカテゴリーに押し込めると様々な問題が生じてくるし、実際生じています。

労働経済白書は、そのことを踏まえ、軌道修正したものなんでしょう。

「成果主義賃金は適用範囲を見直し、意欲の向上に役立つ部門に限定する」ということが、実際にどれだけ機能するのか、逆に中途半端な成果主義の弊害が予想されるだけに難しいところです。

しかし、仕事自体や達成感、周囲からの承認によりモチベーションを高めてきたこれまでの日本型の「働き甲斐」を高める仕組みも、もっと見直されてもいいのではと思います。

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日本型経営、良いか悪いか 二つの白書「閣内不一致」
2008年7月23日朝日新聞

 厚生労働省が22日発表した労働経済白書は、長期雇用など日本型雇用慣行について、生産性の向上につながると再評価した。一方、内閣府が同日発表した経済財政白書では、終身雇用を中心とする日本企業のリスクを取らない体質が低成長の一因だと批判しており、長期雇用の評価を巡り「閣内不一致」とも言える対照的な内容となった。

 労働経済白書は、90年代以降、日本型雇用慣行が修正されたことで、労働者の「働きがい」がどう変わったかを分析した。84年から05年にかけて、「仕事のやりがい」に満足な人の割合は31%から16.6%と大幅に低下した。
 満足度の低下の背景には、非正規労働者の増加と、成果主義賃金の導入があると指摘。実際、パートや契約・派遣社員などの非正規労働者は特に90年代半ばから急増し、07年には1732万人と雇用者数の3割を超えた。

 成果主義についても、「3年前に比べて仕事への意欲が低下した」と答えた人の理由のなかで、「評価の納得性が確保されていない」が35.6%を占めており、「評価基準があいまいで、労働者の納得感は低下した」と見ている。

 今後は、長期雇用を再評価して計画的な人材育成を行うとともに、成果主義賃金は「適用範囲を見直し、意欲の向上に役立つ部門に限定する」ことで「働きがい」を高めることが、生産性の向上にもつながると結論づけた。
(略)
 一方、経済財政白書では、終身雇用を中心とする「日本型企業システム」が、経営上のリスクを取りづらい体質をうみ、成長率の低さにつながっていると分析した。
年功賃金や退職金制度については、「成果主義的な賃金体系に比べ、リスクテークによって得られる成果が賃金に反映されにくいため、従業員がリスクをとるインセンティブに欠ける」と批判している。

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コメント
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