「‥‥‥‥」

作業を続けながらも、雪の頭の中はハテナでいっぱいだった。
思い浮かぶのは、先程青田淳から言われたあの言葉‥。
「昨日のことだけど、わざとじゃないから」

「‥‥‥‥」

雪は壁にポスターを貼り付けながらこう思った。
アイツ‥おかしくなっちゃった‥?何の話か全然分かんない‥

”昨日のこと”が一体何のことなのか、”わざとじゃない”とは何を指して言ったのか、
雪には何一つピンとくる出来事が思い浮かばなかった。
首を傾げ続ける雪であったが、次の瞬間目を剥くことになる。
「俺もう帰るわ!」「!」

不機嫌を引き摺る健太は、イライラした空気を纏いながらそう言った。
健太のその言葉に驚いた雪は、慌てて立ち上がる。
「これ終わらせてからポスター貼りですよ?
健太先輩広報チームですよね?」

しかし健太は携帯に目を落としながら、どこかソワソワしている体だ。
「設営手伝ってやっただろ?
広報の仕事なら来なかった奴らにやらせろっつーの!
なんで俺だけ大変な思いしなきゃなんねーんだよ!ムカつくわー」

聞く耳を持たない健太に、雪はなんとか説得を試みる。
「条件は私も同じですよ!これから本格的な広報チームの仕事がー‥」
「ったくよぉ!
」

健太はツカツカと雪の方へ歩み寄ると、彼女の額に人差し指を突きつけこう言った。
「俺はやるだけやったっつの!アフター‥いや約束もあるってのに、
いつまで居なきゃいけねーんだよ!」

「悔しけりゃお前も帰るか、バックレた奴らに連絡つけるんだな!」

開いた口が塞がらない。
学祭準備の話し合いの時点から、健太は携帯片手に女の子とのデートしか頭に無かったことを思い出す。

唯一の広報部員を、このまま行かせるわけにはいかない。
雪は統括者である青田淳の方を振り返った。

しかし彼は二人の方を見ようともせず、そのまま行ってしまった。
雪は言葉にならない声を上げながら、目を丸くする。
説得しないの?帰らせるの?

健太は「分かったか?」と言ってその場に佇んでいる。
雪は青田淳の背中をじっと見つめていた。
この騒ぎが聞こえてないわけないのに‥。

そんな雪と、健太は馴れ馴れしく肩を組んだ。
甘い口調で彼女を誘う。
「じゃなきゃ一緒に逃避行‥」「嫌です」
「そうか。んじゃ俺は帰る」

そう言って、健太は帰って行った。
その巨体が店を去るのを、皆非難めいた視線を送りながらも黙認する。

雪は煮え切らない気持ちを噛み殺しながら、健太が去るのをじっと見ていた。
これでこの場に居る広報チームは自分一人だけということになる‥。(厳密に言うと設営チームなのだが‥)


健太が帰った後、糸井直美は苦々しい顔を露わにしていた。
出来上がったポスターを持って、彼女は雪にこう話し掛ける。
「ねぇこれ、大学の周りで配ればいいの?」
「はい」

「それじゃ雪ちゃん、これはあたし達が帰る時に駅方面で配っとくから、
雪ちゃんにはポスターと案内ステッカー貼って行ってくれる?」

雪は思わず「えぇ?」と声を上げた。
出来るだけ冷静に、当初の計画を口にする。
「あの‥ポスターは皆で貼りましょうよ。ビラは二人一組で配って‥」
「ごめんけどあたし達にも約束があるの。広報チームの子らが来なかったからって、
その仕事まで請け負えないよ」
「そうだよ!この時間に来れないなら、明日早朝に来て貼ればいいじゃん!」

直美も、その友人も、積もった不満がどんどん口をついて出る。
雪は来なかった広報チームメンバーの矢面に立たされることとなった。
「ビラ作ってあげただけでも感謝してほしいくらいよ」「そ‥そうだけど‥でも‥てかなんで私に怒るの‥」
「だからどうして私達がしなきゃいけないの?ムカツクわー」

タジタジと言葉に詰まる雪。
すると後ろから、聞き覚えのある声が掛かった。
「それじゃポスターは俺と雪ちゃんで貼っとくよ。みんなおつかれな」

青田淳はニッコリと笑いながらー‥いや、ニッコリとした顔を作りながら、皆に労いの言葉を掛けた。
雪はそんな虚飾の表情から目が離せず、思わずヒッと息を飲む。
「皆約束あるんだろ?設営の仕事してくれてありがとうな」
「ホントですよー」「こればっかりに時間割いてもいられないわよ、まったくー」

青田淳は虚飾の笑顔で、思ってもいないことを口にする。
雪はその違和感を感じて、怪訝な表情で彼を見ていた。
「てか忙しいのは先輩も同じじゃないですか。バックレた子達にさせればいいのに」
「そうですよ、先輩も帰りましょーよ」
「それは出来ないよ」

しかしその一言を口にした時の彼は、少し毛色の違う雰囲気を醸し出した。
長い前髪で、どんな目をしてそう言ったかは分からなかったが。
「青田君たら~」

直美が淳の名を呼ぶ。雪は彼から目を逸らし、下を向いた。
「気にしないでもう帰っていいよ。
俺らで仕上げしてくから」

青田淳はそう口にした後、雪の方を向いた。上辺の笑顔と言葉を掛ける。
「もしかして雪ちゃんも今日約束があったりした?」「!」

突然自分にその話題が振られたので、雪は一瞬言葉に詰まる。
「あ‥それは‥」

その続きを口にしようとすると、自分の方をじっと見つめる直美達の視線に気づいた。
今嘘でもつこうものなら、一瞬でボロが出てしまいそうな感じ‥。

そして結局、こうなった。
「無いです」「じゃ、大丈夫だね」

その雪の言葉を聞いて、直美達は安心したように頷いた。
それじゃ大丈夫そうだね
うん、一緒にやるみたいだし

帰り支度を済ませ、彼女達は店を後にする。
「それじゃあたし達はここで失礼しますね」「先輩また明日~」
「うん。ビラ配りお願いして悪いね」「はーい先輩もー」

去りゆくメンバー。
雪は虚しくそれを見送る。

そして店には誰も(青田淳以外)いなくなった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<雪と淳>去りゆくメンバー でした。

健太の言う「アフター」というのは‥同伴??
健太とデートとか‥物好きもいるものですね(ヒドイ)
直美は安定の保身キャラですね‥残念‥
次回は<雪と淳>図星 です。
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作業を続けながらも、雪の頭の中はハテナでいっぱいだった。
思い浮かぶのは、先程青田淳から言われたあの言葉‥。
「昨日のことだけど、わざとじゃないから」

「‥‥‥‥」

雪は壁にポスターを貼り付けながらこう思った。
アイツ‥おかしくなっちゃった‥?何の話か全然分かんない‥

”昨日のこと”が一体何のことなのか、”わざとじゃない”とは何を指して言ったのか、
雪には何一つピンとくる出来事が思い浮かばなかった。
首を傾げ続ける雪であったが、次の瞬間目を剥くことになる。
「俺もう帰るわ!」「!」

不機嫌を引き摺る健太は、イライラした空気を纏いながらそう言った。
健太のその言葉に驚いた雪は、慌てて立ち上がる。
「これ終わらせてからポスター貼りですよ?
健太先輩広報チームですよね?」

しかし健太は携帯に目を落としながら、どこかソワソワしている体だ。
「設営手伝ってやっただろ?
広報の仕事なら来なかった奴らにやらせろっつーの!
なんで俺だけ大変な思いしなきゃなんねーんだよ!ムカつくわー」

聞く耳を持たない健太に、雪はなんとか説得を試みる。
「条件は私も同じですよ!これから本格的な広報チームの仕事がー‥」
「ったくよぉ!


健太はツカツカと雪の方へ歩み寄ると、彼女の額に人差し指を突きつけこう言った。
「俺はやるだけやったっつの!アフター‥いや約束もあるってのに、
いつまで居なきゃいけねーんだよ!」

「悔しけりゃお前も帰るか、バックレた奴らに連絡つけるんだな!」

開いた口が塞がらない。
学祭準備の話し合いの時点から、健太は携帯片手に女の子とのデートしか頭に無かったことを思い出す。

唯一の広報部員を、このまま行かせるわけにはいかない。
雪は統括者である青田淳の方を振り返った。

しかし彼は二人の方を見ようともせず、そのまま行ってしまった。
雪は言葉にならない声を上げながら、目を丸くする。
説得しないの?帰らせるの?

健太は「分かったか?」と言ってその場に佇んでいる。
雪は青田淳の背中をじっと見つめていた。
この騒ぎが聞こえてないわけないのに‥。

そんな雪と、健太は馴れ馴れしく肩を組んだ。
甘い口調で彼女を誘う。
「じゃなきゃ一緒に逃避行‥」「嫌です」
「そうか。んじゃ俺は帰る」

そう言って、健太は帰って行った。
その巨体が店を去るのを、皆非難めいた視線を送りながらも黙認する。

雪は煮え切らない気持ちを噛み殺しながら、健太が去るのをじっと見ていた。
これでこの場に居る広報チームは自分一人だけということになる‥。(厳密に言うと設営チームなのだが‥)


健太が帰った後、糸井直美は苦々しい顔を露わにしていた。
出来上がったポスターを持って、彼女は雪にこう話し掛ける。
「ねぇこれ、大学の周りで配ればいいの?」
「はい」

「それじゃ雪ちゃん、これはあたし達が帰る時に駅方面で配っとくから、
雪ちゃんにはポスターと案内ステッカー貼って行ってくれる?」

雪は思わず「えぇ?」と声を上げた。
出来るだけ冷静に、当初の計画を口にする。
「あの‥ポスターは皆で貼りましょうよ。ビラは二人一組で配って‥」
「ごめんけどあたし達にも約束があるの。広報チームの子らが来なかったからって、
その仕事まで請け負えないよ」
「そうだよ!この時間に来れないなら、明日早朝に来て貼ればいいじゃん!」

直美も、その友人も、積もった不満がどんどん口をついて出る。
雪は来なかった広報チームメンバーの矢面に立たされることとなった。
「ビラ作ってあげただけでも感謝してほしいくらいよ」「そ‥そうだけど‥でも‥てかなんで私に怒るの‥」
「だからどうして私達がしなきゃいけないの?ムカツクわー」

タジタジと言葉に詰まる雪。
すると後ろから、聞き覚えのある声が掛かった。
「それじゃポスターは俺と雪ちゃんで貼っとくよ。みんなおつかれな」


青田淳はニッコリと笑いながらー‥いや、ニッコリとした顔を作りながら、皆に労いの言葉を掛けた。
雪はそんな虚飾の表情から目が離せず、思わずヒッと息を飲む。
「皆約束あるんだろ?設営の仕事してくれてありがとうな」
「ホントですよー」「こればっかりに時間割いてもいられないわよ、まったくー」

青田淳は虚飾の笑顔で、思ってもいないことを口にする。
雪はその違和感を感じて、怪訝な表情で彼を見ていた。
「てか忙しいのは先輩も同じじゃないですか。バックレた子達にさせればいいのに」
「そうですよ、先輩も帰りましょーよ」
「それは出来ないよ」

しかしその一言を口にした時の彼は、少し毛色の違う雰囲気を醸し出した。
長い前髪で、どんな目をしてそう言ったかは分からなかったが。
「青田君たら~」

直美が淳の名を呼ぶ。雪は彼から目を逸らし、下を向いた。
「気にしないでもう帰っていいよ。
俺らで仕上げしてくから」

青田淳はそう口にした後、雪の方を向いた。上辺の笑顔と言葉を掛ける。
「もしかして雪ちゃんも今日約束があったりした?」「!」

突然自分にその話題が振られたので、雪は一瞬言葉に詰まる。
「あ‥それは‥」

その続きを口にしようとすると、自分の方をじっと見つめる直美達の視線に気づいた。
今嘘でもつこうものなら、一瞬でボロが出てしまいそうな感じ‥。

そして結局、こうなった。
「無いです」「じゃ、大丈夫だね」

その雪の言葉を聞いて、直美達は安心したように頷いた。
それじゃ大丈夫そうだね
うん、一緒にやるみたいだし

帰り支度を済ませ、彼女達は店を後にする。
「それじゃあたし達はここで失礼しますね」「先輩また明日~」
「うん。ビラ配りお願いして悪いね」「はーい先輩もー」

去りゆくメンバー。
雪は虚しくそれを見送る。

そして店には誰も(青田淳以外)いなくなった‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<雪と淳>去りゆくメンバー でした。

健太の言う「アフター」というのは‥同伴??
健太とデートとか‥物好きもいるものですね(ヒドイ)
直美は安定の保身キャラですね‥残念‥
次回は<雪と淳>図星 です。
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中身知ったら幻滅ですよ(^^)
逃げろーお前見る目ないぞー
どんな女性なんでしょうね‥
良い人だったら全力で止めたいですね。
CitTさん
訳で「アフター」と出たので、同伴喫茶的な何か?と思ってました‥。
そうか、紹介された女の子とデートすることになったんですね。
いつもはスタジャンの健太も、この日はジャケット着てますもんね。