Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<雪と淳>豪雨

2015-08-31 01:00:00 | 雪2年(学祭準備~学祭)

雪は未だモヤモヤした不快を抱えながら、黙々と広報の仕事をこなし続けていた。

大学から店へ続く道に、一定の間隔でステッカーを貼って行く。



踏まれても汚れないように、雨が降っても濡れないように、

紙のそれを貼ってから、ビニールテープを上から貼りつける。



地味で地道な作業を、雪は黙って繰り返した。

同じ作業を続ける内、段々と気持ちは落ち着き、頭の中はクリアになる。



そして考えないようにしていたあの言葉が、再び脳裏に響いた。

やったからって誰も見てないって



そしてその言葉に引き摺られるかのように、様々な記憶が溢れ出す。


「掃除したのか?この際蓮の部屋もやりなさい。

プレゼントも送っておいてやれ」




胃の痛みを我慢して、両親の為に掃除した。

けれど父は自分を見ること無く、弟のことばかり気にかけた。


「逃げるよ!」

「アンタってホント気に食わない子ね」



ホームレスに食って掛かる平井和美を連れて逃げた結果、そう言い返された。

挙句和美から自分の劣等感さえも指摘され、その行動を後悔した。


「元気出せよ!」 「お前ってマジムカツク女だな」

 

皆から総スカンされた横山を哀れに思い、声を掛けたのが災難の始まりだった。

結局散々な目に合って、付けられた傷は未だに癒えない。


「い‥意見あります」

「派手なだけな企画なら、やらないほうがマシじゃないか?」



この学祭のプランを提案した時もそうだった。

要らぬお節介を焼いた結果、衆人環視の中でバッサリ否定されて。


気にかけるのは、首を突っ込むのはもう止めようと思うのに、いつも気がついたら渦の真ん中だ。

今はもう違うと思っても、事あるごとに同じことを繰り返している。



青田淳に仕返しするつもりで、仕事を完璧にこなしてやろうと思った。

重たくて引き摺って、クタクタになりながら大量の段ボールを運んだ。

けれど何一つ‥

何一つ、伝わっていないじゃないか。



ステッカーを貼る、その手が震える。

アイツ‥



顔が熱い。

汗が幾筋も頬を伝って行く。

アイツは‥



脳裏に浮かぶ彼の顔。

いつも皆に囲まれて、常に人当たりの良い笑顔を浮かべている。



けれど不意に視線がぶつかった時、彼はいつもこんな目で雪を見る。

人を観察するような、

心の奥底を見透かすような、

まるですべてを知っているかのようなー‥。









気がつけば、息が荒くなっていた。

全身が火照り、頭の回転が徐々に鈍くなる。



するとポツリ、と雨の気配を感じた。

手の平を上に向けると水滴がニ三粒、手の平を打つ。



「雨‥?」



するとポツ、ポツ、と降って来た雨は、見る間にその音を大きくして行った。

まばらだった水滴が、勢いを持って線のように降ってくる。



そしてあっという間に、土砂降りになった。

目を丸くする雪の頭上から、滝のように雨が降る。

ザーーーーーーーッ



一瞬何が起きているのか分からなくなった。

えーっと今は‥確かポスターを貼っている最中‥




「うわあああああ!」



雪はソッコーでコンビニに走り、100円でレインコートを買って被った。

未だ頭はパニックだが、とにかく早くこの仕事を終わらせなければならない。

「うわあああ!うわああああーーー!」

 

皆が土砂降りを避けて駆けて行く中、雪だけはそこに留まりステッカーを貼り続けた。

雨粒が跳ねる音に紛れて、雪の自虐的な叫びが響く。

「なにこれ?!なにこれぇ?!」



「しんっじらんない‥!」



なんという不運。なんというバッドタイミング。

雪は波立つ感情を放出するように、叫びながら手を動かし続けた。



そしてかなり大雑把ではあるが、なんとかその仕事を終わらせた。

「終わったー!」



雨はどんどん強くなる。

帰りの電車にも影響が出るかもしれない。

「早く帰んなきゃ‥!」



しかしそこであることに気がついた。

なぜか手ぶらであるということに‥。

あーーッ!鞄!!



雪は駅に向かおうとしていた足を、店の方向へと踏み出す。

「なんでバーに置いてきたの~!!」



レインコートのフードを手で掴みながら、雪は走った。

すると空から、低い雷鳴が聞こえてくる。

ゴロゴロ‥ピカッ!



ぎゃあっと叫びながら、雪はがむしゃらに雨の中を駆けた。

「もうっ!これじゃ今更傘買ったって無駄か‥。ビショ濡れじゃん!」



被っているレインコートの間から雨が入り、髪も体も濡れてしまっている。

雪はその豪雨の中を、バシャバシャと水しぶきを上げながら一人走った。

「うう‥なんなの‥」



道路の上に薄く張る水たまりを踏みながら走ると、

スニーカーのつま先が水に浸り、中の靴下が湿って行く感覚を覚えた。

雨に濡れて行く自身のように、心には絶望が侵食して行く。



響く雷鳴。降り続く豪雨。

雪はその中で一人、小さな声で呟いた。

「なんなの‥ホント‥」



ふと地面を見下ろすと、自分が貼ったステッカーが一定の間隔で店へと続いている。

こんな仕事、やったからって誰も気づいてくれないし、誰も見てはいないのに‥。




誰もいない孤独の縁。

今雪は一人きりでそこに、取り残されている。




豪雨の中で、雪は全身ずぶ濡れになりながらそれを見ていた。

そしてもう一度それを辿りながら、雪は店へと走って行った‥。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<雪と淳>豪雨 でした。

雪ちゃん‥可哀想すぎる‥

私も雨女&運が悪い方なので気持ち分かります‥。

それでも最後まで仕事をやり切るところが雪ちゃんですよね。偉いな‥。


次回は<雪と淳>幻 です。


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6 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2015-08-31 12:18:55
ゆきちゃんほんとに頑張りやさん!そりゃ胃炎や過労でぶっ倒れますって…(涙)
先輩もそれ以上に頑張ってるんでしょうが、バイトと家事しなくていいぶんゆきちゃんより余裕ありますし
真っ向勝負ばか正直のゆきちゃんのほうが、ストレス体力ダメージきますよね。
先輩は何だかんだ他人操作したり上手く抜け道見つけたりして省エネしてるんでしょうね。
現に今もひと休み中だし…
ゆきちゃんに好意もつまでは、そういうどんくさい?ところにイラっと来てたんだろうなあ。
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作者のブログで (mimi)
2015-09-02 15:31:41
LINE漫画のチートラのコメント欄でどなたかが、「作者がブログで青山先輩とはくっつけませんって言ってる方が問題だわ…」
って書いていたのですが、作者はブログでそんな言及をしているのでしょうか?
ブログは読めないので悶々としています。。。
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Unknown (Yukkanen)
2015-09-03 21:50:59
Wunknownさん
お名前が‥涙
二人は周りから被害を被るときの受け方が全然違う感じですよね。
まさに世渡り上手と世渡り下手という感じで。
萌菜が雪を見てヤキモキしてるのも分かりますよねー。

mimiさん
以前にも他の方から同じ質問を受けたのですが、私は作者さんのブログでそのような内容を読んだことはないです。
最終回については、わりと新しめのインタビューでこう仰っていたので参考になさって下さい。↓
「すごく特別な結末ではないです。
登場人物の葛藤は、特定の悪役一人だけの影響ではなく、本人と周りの人々から発生するものです。
ですので、悪役一人を成敗して終わるという結末ではありません。
勿論皆が不幸になる結末でもありません」
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Unknown (mimi)
2015-09-04 02:31:02
詳細に教えてくださりありがとうございます。
取り敢えず、ホッとしました。
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お久しぶりだなん (ちょびこ)
2015-10-09 15:17:58
ご無沙汰こいてます。
なかなか集中して読める時間がなくて、今やっとここまで読みました。

いやー、隠されてた新しい過去(早速パクる)のエピソードは、不器用な頃の2人が思い出せて、よきかなよきかな。その後好き合うコトを知ってるから、微笑ましいし、ちょっとずつナゾが解ける感じで。

ところで、師匠。記事中の先輩のセリフ↓
雪「い‥意見あります」
青「派手なだけな企画なら、やらないほうがマジじゃないか?」

マジじゃないか!!
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姉様 (Yukkanen)
2015-10-12 21:33:40
ぶはっ!やらないほうがマジ!
笑笑
ご指摘ありがとうございます。修正致します!

コメントもありがとうございます。
これからもお待ちしてますよ!!
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