Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<雪と淳>幻

2015-09-02 01:00:00 | 雪2年(学祭準備~学祭)



ポタッ、と水滴の落ちる音が聞こえるくらい、そこは静まり返っていた。

雪は雫の落ちるレインコートを手に持ちながら、びっしょりと濡れた身体でそこに佇む。






窓の外では未だ豪雨が降り続いていたが、店へと続く廊下は驚くほど静謐だった。

電気のスイッチを点ける気にもならず、雪はその暗い廊下をトボトボ進む。



一歩進む度、濡れたスニーカーから水気の多い生地を踏む音がした。

レインコートからは依然として水が滴り落ち、雪が通った後に幾粒もの水滴がその後を残す。






まるで鉛を背負っているかのような疲労感と、心へ侵食してくる孤独感が、雪の英気を奪っていた。

虚ろな表情で暗い廊下を渡り切り、雪は店への入り口に佇む。



ガラスのドアの取っ手を掴み、押す。

何の音もしない。



耳の奥まで薄い膜で覆われているような、奇妙な感覚。

まるで夢の中にいるみたいに、現実感が無い。

そのまま暗い店内へと歩を進める。









そこに佇んでいた彼は、何の表情も浮かべていなかった。

その瞳の中にあるのはただ、暗い闇だけ。






まるでブラックホールのように、何もかも吸い込んでしまいそうな二つの穴が、雪を見ている。

薄い膜で覆われたような感覚の中で、雨音だけが聞こえていた。



痛いくらい、心臓が大きく脈を打つ。

ドクン 

ドクン

ドクン



ドクン 

ドクン

ドクン

「だから 言っただろ」



ドクン

ドクン

ドクン



ドクン

ドクン

ドクン

「お前の そんな姿」



ドクン

ドクン

ドクン






「誰も見ちゃいないって」





外では雨が降っていた。

薄い膜で覆われたようにくぐもっていたその音が、

急にスピーカーの音量を上げたかのように大きくなったー‥。






はっ‥



ビクッ、と身体が大きく強張り、ぼんやりとしていた意識が急にクリアになった。

雪はバッと顔を上げる。



ガラスのドアの向こうに、暗い店内がうっすら見えた。

そこには誰の姿も無い。






キョロキョロと周りを見回してみるも、やはり誰も居ない。

辿って来た廊下は、しんと静まり返っていた。



雪は信じられない思いで、その場に佇んだ。

確かに目の前にあの男が居たはずなのに‥。



髪の毛をぐしゃぐしゃと掻きながら、自分を戒める。

バカじゃないの!なんでこんな‥



結局先程の彼‥青田淳は、幻だったのだ。

雪は火照る顔を叩きながら、自分に活を入れた。

しっかりしろ!








キイ、とドアを開け、中に入った。

学祭を明日に控えた、華やかな内装の店内。出て行く時と変わっていないように見える。



ほの暗いそこはとても静かだった。

青田淳が作業している気配は、どこにも感じない。



雪はキョロキョロと店内を見回した。

帰った?ドアに鍵も掛けないで?



変な気分だ。

引き続き雪が店内を見回していると、

やがて自分が店を出て行く時とは異なる箇所が目に入るようになった。

「お」



皆で作ったメニューが、案内しやすいカウンターに置いてあった。

雪が後でやっておこうと思っていたことだ。

「お?」



先ほど雪が道路に貼り付けて行った、足跡のステッカーが店内にも貼ってあった。

机の上のセットアップも十分にしてある。

「おぉ‥」



重たいビン類も、きちんとまとめてあった。

そのマメな仕事ぶりに、雪は思わず目を丸くする。

それなりに整理してあるじゃん‥



そしてソファの辺りに差し掛かった時、雪は目当ての物を見つけて声を出した。

「あっ!私の鞄ー‥」

 

それを拾い上げようとした、その時だった。


ヒッ!



思わず目玉が飛び出し、雪はその場にフリーズした。

身体が硬直状態である。



そして少し遅れて、ようやく心臓がバクバクと音を立てた。

雪はくるりと彼に背を向け、心臓を押さえてうずくまる。

ちょっ‥びっくり‥いなっ‥居ないと思っ‥



なんて心臓に悪い男なんだろう‥。

雪は暫し息を潜めた後、こっそりと彼の方を窺ってみる。



すると微かに、スゥスゥ、と静かな息遣いが聞こえた。

くぅ、と小さな声も聞こえる。



雪はその場に立ち上がると、信じられない思いで彼の方へ身を乗り出した。

‥寝てんの?



どうしてこんなところで寝ているのか‥?

そう思った時、寝息に混じってズッという音が聞こえた。おそらくそれは、鼻をすする音。



そして青田淳は目を閉じたまま、小さく咳をした。

ゴホッ‥ゴホッ‥



見るからに熱がありそうな、赤い顔。

幾筋も、頬に伝う汗。

予想だにしなかったそんな彼の姿を見て、思わず雪の頬にも汗が一粒‥。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<雪と淳>幻 でした。

ホ‥ホラーーーーー



更新時、夜中に一人で読んでいたので、思わず背筋が凍りましたよ‥。

この時の雪ちゃんの淳に対するイメージって、こんななんですね‥

よく恋愛に発展したもんですよね‥

一年後はこれだもんなぁ‥



すごい変化‥。


次回は<雪と淳>共鳴 です。


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6 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
1年後には… (パルッチョ。)
2015-09-02 01:37:23
先輩と雪ちゃんが仲が悪かった過去から突然現代に戻って、イチャイチャしているシーンに入った時、ちょっと気持ち悪いなぁって感じてしまいます笑
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わかる…(´-ω-`;) (ちょこ)
2015-09-02 07:21:01
雪さん、当時、淳の付き合おうよに対してよく勢いではいって応えたなぁと改めて感心(笑)え、そこせめて理由は聞いてみようぜwwwって突っ込んだ事思い出しました(笑)
それにしても淳さんまじホラー(◎-◎;)
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オバケ扱いかい… (Unknown)
2015-09-02 08:14:15
確かに今まで感じ悪かったかもだけどゆきちゃんもたいがいな態度だったわけで、
そこまで恐がられるとか先輩まじ不憫(笑)
これまでもさんざんバケ淳とか言われてましたけどお。

ここから挽回して好きって言わせた先輩の執念がすごい。てか恐い。
先輩のモットー:緻密に計画して努力して目標達成。

にしても風邪ひいて弱ってる先輩、萌えます(ズキュン)
返信する
じゅん君もまめ・・・(-- (papurika)
2015-09-02 08:18:53
認めちゃくれない?

だいじょぶ。皆知ってる。

水面下で右往左往。パタパタ一生懸命に動かしている足の裏
くすぐりたくてうずうずしてるのは、きっと私だけじゃない(--

白いじゅん君、初お目見え?
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翻訳ありがとうございます! (8!0)
2015-09-02 18:43:04
くらい展開が長く続きますね、、、。
いちゃいちゃな二人をみかえして来て癒されよう、、、
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Unknown (Yukkanen)
2015-09-03 22:08:35
パルッチョ。さん
落差もの凄いですもんね。
一年前にタイムスリップして現在の姿見せてあげても、2年生の雪ちゃん絶対信じないだろうな、っていう 笑

ちょこさん
淳さんホラーですよね‥。怖い‥。
でも本当、この時点でここまで本音で言葉を交わしてたんなら、淳→雪をご飯に誘うあたりでもっと踏み込んでも良かったんじゃないかって思いますよ。

Unknownさん
どなたでしょう‥涙
>先輩のモットー:緻密に計画して努力して目標達成。
確かに!吹きましたww

papurikaさん
おお‥なんだか詩のような素敵な言葉ですね。
本当の白淳は、中学生男子並みの幼い感じですよね‥

8!0さん
何とお読みすれば良いのか‥。不思議なHNですね。
二人の互いの意識が変わった時のエピソードですからね、暗い感じですよね。
天気も豪雨ですし‥。
でもきっとここを乗り越えたからこその今なんでしょうね。
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