霞がかった青空に、白い花弁が舞っていた。
春は彼等にも再び巡ってくる。
その人は何気なく歩くいつもの道に、
ある日突然現れた。
「お‥おはよ」
「元気にしてた‥?あ‥」
「久しぶりね」
ぎこちなく手を振る秀紀の姿を見て、遠藤修の胸の中へ花弁が舞い込んで来た。
止まっていた時が、今再び動き出す。
およそニ年ぶりの二人のやり取りは、まるでそんな年月を感じさせないものだったけれど。
「おい何だその髪型は?!キモいっつの!!」「あーっ!止めてダーリンってば!あー!」
<お隣さん‥もとい秀紀さんは小さな会社を興し、
完全に独立したのだと遠藤さんから聞いた>
互いに寄り掛かり合い倒れてしまった過去を越えて、今再び二人は巡り合うことが出来た。
時に辛く悲しい別れも、その先へ繋がる為に必要な段階だったりもする。
そして恋愛はいつでも人間関係の一つであり、自分の足でしっかり立ってこそ他者を大事にすることが出来るというものだ。
<恵はアメリカへ短期留学>
<本人の夢でもあったけれど、蓮のことは好きみたいだ>
恵は自分の夢を育てることと恋人の蓮を支えること、その両方を叶える未来を選択した。
自分を強く持ってさえいれば、恋は大概人を強くしてくれる。
<聡美は早くも小さなアパレル事業を開始>
太一と離れる時はあれだけ泣いていた聡美も、今や身一つで旅立つまでに成長した。
<どうやら萌菜とコラボしたりするらしい>
「おのれ伊吹!まず提携するかどうか聞きたいのに!
どうしていつもいつもメールの返しが遅いのよ!」
<まだ両者のスタイルが合わなくてゴタゴタしてるみたいだけど>
「ちょっと!うちら一緒にやるわよ!」
なんだかんだと文句を言いながらも、どうやら息は合っているようだ。
そして萌菜は、女性としての幸せも手に入れた。
<萌菜は彼氏との結婚を控えている>
恋の始まりに贈られたピアスと、愛の始まりに贈られた指輪が、
彼女を光り輝く未来へと導いてくれるだろう。
春は新しい出会いも運んで来る。
<ギリギリで就職が決まった柳先輩は、>
<入社してすぐ合コン三昧>
「柳楓です。写真より格段にお綺麗ですね〜」「あら、ありがとう」
古い出会いも時に訪れるけれど‥。
「ゲッ!柳先輩?」「うおっ!糸井!」
<直美さんは大学院へ進学した>
「お知り合いですか?」「後輩です。別に仲良くもねーですけど‥」
「ダーリン、早く行こっ!」
それぞれが新しい道へと踏み出す春。
しかしこの人は未だ袋小路をぐるぐる回っている。
<健太先輩は未だ大学に出没するらしい>
健太は十も年下の後輩達から、生ける化石だと囁かれていた。
同じ所を巡るこんな人も居れば、新天地へと旅立つ人も居る。
<誰もその消息を知らなかった横山は、最近入隊したと聞いた>
「敬!礼!」
「二等兵!横!山!翔!XX小隊に配属されましたことを!申告いたします!」
「初々しいな」「久々の新兵だ」
緊張でガチガチになっている横山に、上等兵がこう声を掛ける。
「おい新兵、A大生なんだって?」「はっ‥はい!そうであります!」
「ならそこの‥」
「そこのアイツもA大生なんだが、知り合いか?」
壁際に佇むその男を見て、横山の目は点になった。
それは髪型こそ違っているが、福井太一その人だったからだー‥!
ほ〜お‥
ヒィーーーーーーーッ!!!
<‥上等兵になった太一から。>
ヒィィと叫ぶ新兵横山に、太一は「こっちに来て下サ‥いやこっちにコイ」と上等兵らしく命令した。
新天地にてまた一つ物語が紡がれて行きそうである‥。
<私は時々時間が出来た時、愛ちゃんに会いにボランティアへ行っている>
「今週末は雪お姉さん来るよ。良かったね」
<愛ちゃんは今はもう20まで数を数えられるようになった>
「ゆきぃ‥おねえちゃん‥」
一昨年偶然に繋がれたその縁を、雪はずっと大切に繋ぎ続けていた。
信じることとたゆまぬ努力は、時に不可能を可能にする。
そうして必ず未来は輝くのだと、私達はまた信じて進むのだ。
<麺屋赤山は不景気に関わらずなかなかの盛況だ>
<蓮はアメリカに馴染む為に努力している最中だと言う。
本当に喜ばしいことだ>
かつて喧嘩ばかりしていた両親は今や休日に二人で出掛けるようになり、
あれほどアメリカに戻りたがらなかった蓮は、持ち前の人懐っこさで楽しく日々を過ごしていた。
不協和音ばかりを奏でていた赤山家を今の方向へ導いたのは、娘である雪の努力と、
そんな赤山家を繋いでくれた彼の存在なくしては語れないだろう。
<そして‥>
海の見えるその街に、
最近話題になっているダイニングバーがあった。
噂になっているのは、最近現れた一人のピアニスト。
彼がピアノを弾き始めると、鮮やかな色の粒が空間に溶けて踊るようだった。
客は皆その音色に耳を澄ませる。
まるで世界が色を変えて輝き出すかのような、その多彩な音に。
メロディに合わせて、色素の薄い髪が揺れる。
ラフな格好でピアノを弾くその姿は、独特の雰囲気があった。
女性客達の囁きが聞こえてくる。
「あの人かっこよくない?」「あ、ホントだ」
「ここますますお客さん増えて入りづらくなっちゃうねー」
曲の合間に、客の一人が彼に話し掛けた。
「あの、ポップスもリクエスト出来ます?」
彼は彼女に身体を向け、愛想の良い笑顔を浮かべて頷く。
「はい?あ、勿論!」
「お望みの曲があれば、なんなりと。どんな曲でも弾けますんで!」
”河村亮”
そのピアニストの名が街に知れ渡るのは、そう遠くない未来だろう。
<河村氏はどこへ行っても上手くやっていけるだろうと、私はそう信じている>
瞼を閉じてみると、容易に想像することが出来る。
河村氏が笑いながら、楽しそうにピアノを弾いている姿を。
雪が目を開けると、そこには新しい春が彼女を迎えていたー‥。
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<最終章(5)ーそれぞれの春(2)ー>でした。
色々な人の”春”を垣間見ることが出来た回でしたね。
ちょっとつらつらと感想書いて行きます。
遠藤さん&秀紀兄さん。
いや〜も〜本当良かったですね〜〜!
辛いこと、苦しいこと、二人ともちゃんと乗り越えたんだなぁと感慨深かったです。
詳しくは青さんにコメントお願いするとしましょう!(いきなり丸投げ)
恵。
まだ言いますが‥恵‥本当に蓮でいいの‥?!
良い子過ぎてまるで毒が出ることがなかったですね恵は‥。
他の登場人物にクセがありすぎて‥ちょっと物足りなかったような‥
それこそ静香みたいに恵が美術を諦める時が来たら、またちょっと変わったりするのかもしれません。
(どこまでもダークサイドを求めてしまう私‥)
聡美&萌菜!
この二人がコラボしてアパレルショップを!ビックリですよね
モデルは太一ですかね^^すごい会社になりそうです。
そして萌菜、あのカメラマンと結婚かいな!実は萌菜が一番手堅い女だったという‥
柳と直美
大変!今すぐ合コンへ行かなくちゃっ‥!しかし柳髪固めすぎ‥。
直美(糸井真理子直美)は大学院へ進んだんですね。。
なんかすごいネチネチ言われそうで嫌ですレポート出したのとかロッカーの鍵返せとか‥
遠藤さんの下で働くことになるのかな〜?
健太については‥もう何も言うまい‥化石‥
横山&太一!
今回一番笑いました。横山が太一の部下に!
いつかコメ欄で騒がれた「モムチャンペギノッシとウンテギ物語」は
「ミチゲソオヨンゴンとモムチャンウンテギ物語」に変更です!
くらのあいちゃん
もう一度出てきて嬉しいです。雪ちゃんボランティア通ってるんですね。なんて律儀な‥
いつか淳は「時間の無駄」とか言ってましたが(改めてヒドイ‥)、数も20まで数えられるようになって!
うう‥なんだか涙が‥
麺屋赤山&蓮
赤山家、最初に比べたら格段に良い家族になりましたよね。
あれほどプライドと体裁を大事にしていたお父さんも、自らエプロンを身に付けて働いて‥。胸熱です。
全て雪ちゃんが頑張ったからと、亮さんのおかげ‥
亮さん
うう‥うおおおおおん!!
そう!こんな風に笑顔でピアノを弾く河村氏が見たかった‥っ!(しかもM字じゃない!イケメン!!)
コンクールじゃなくても、亮さんが幸せにピアノを弾いてる所が見られれば、もう本当に満足です。
そうそう、本家で最終話が掲載された当時は、PCで見ると亮さんの所でピアノが流れたんですよね‥
ampstyleというアーティストの「봄이었어」(春だった)という曲で。
日本語版でもそういう仕掛けがあればいいのにな‥
次回は<最終章(6)ー卒業式ー>です。
いよいよ雪ちゃんの”春”が描かれます‥!
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