Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

通告

2017-01-13 01:00:00 | 雪3年4部(狂った計算式〜制裁)


月も星も出ていない夜だった。

河村静香はふぅと息を吐きながら、アパートのドアに手を伸ばす。



このドアを開けても、中にはもう誰もいない。

そう思うとわけもなく帰りたくなくなって、こんな時間になってしまった。



すると背後から、不意に聞き慣れた声がした。

「静香」







静香はにわかには信じられず目を見開き、振り向いた。

まさか彼がこんな所にいるはずがないと。

「?!!」



しかし暗闇に立ち尽くす彼の姿を見つけた途端、静香は思わず息を飲んだ。

青田淳その人が、確かに佇んでいたからである。



「淳?!」



静香は狼狽しながら、キョロキョロと辺りを見回し声を上げる。

「ななな何なの?!アンタの方から会いに来たの?!ありえないんだけど!!」

「お前がうんざりするほど電話してくるから、こっちから出向いたんだ」





「はぁ?」



その淳の台詞は静香にとっては心外だった。

最近しきりに電話を寄こして来ていたのは淳の方だ。



しかし淳は淡々と言葉を紡ぐのみだった。

「時間が無いから単刀直入に言う」



「な‥」



静香の脳裏に雪の姿が浮かんだ。

まさか‥赤山雪‥アイツ結局‥?



ギリッ、と歯を食い縛る静香の前に、無言の淳が立ち尽くしている。

雪が淳に静香の弱みを密告していたとしたら、もうすべきことは一つだ。

「やだぁ〜淳ちゃ〜ん!

会えて超〜嬉しくってちょっとキョドっちゃったじゃーん!連絡も無しに何よぉ!もう!」




「何しに来たか知らないけどぉ、

寒空の下突っ立ってないで早く‥」




静香がヘラヘラと笑いながら一歩踏み出したその時、淳の話は始まった。

「もうすぐ亮も居なくなる」



「俺に未練たらしく迷惑掛けて来るのは静香、もうお前だけなんだよ。

皆の為にも、ここらで俺らの関係を清算すべきだと思ってな」







その冷徹な通告に、思わず静香の笑顔が固まる。

淳は淡々と言葉を続けた。

「正直、もう完全に切り捨てたかったけど、

お前とは良い関係だった時もあったから、我慢してたんだ」




「これ以上連絡して来ることも、つきまとうことも止めてくれ。

自分自身の為にもな」




「特に、大学に来て学生のフリをして雪と勉強するのも止めろ」



淳のその言葉を聞いて、静香はギリッと歯を食いしばった。

は?知ってたの?



雪に対して憎らしい思いが膨らんで行く。

淳は静香を見据えながら通告を続けた。

「そうやって面倒事を起こそうとしてるのも、全部分かってる。

俺を困らせようとしておかしなことを企んでるんだろ。こんなこと一度や二度じゃないからな」




淳がそこまで言った時、静香が割って入った。

「ちょっと!違うってば!NONONO違う違う!

淳ちゃ〜ん、すっごい勘違いしてるよ?そんな意図全然ないから!」




静香は手に持ったテキストを掲げながら、自身の現状をかいつまんで説明する。

「確かに初めはちょっとそう思ってたけどぉ、

でも今学校行ってるのは授業が面白いからだし、就職しろって言う周りの声も聞いたりしてるし、

あたしなりに勉強してんのよ。今度こそあたし本気で‥」




静香がそこまで言った時、淳は息を吐き捨てた。

嘲るような表情を浮かべながら。







その顔を前にして、思わず静香は目を見張った。

淳のこんな表情を初めて見たからだ。

「何‥?その顔‥」「は‥ははは!」



淳は笑い、そして言った。

乾いた、多少自虐的なその響きで。

「お前だったらその話信じるか?」






問いのような呟きのようなその言葉が、静香に重くのしかかる。

「亮の怪我の原因が俺だと、

父さんにそう告げて俺を追い込んだお前を?」




「どうやって信じろって言うんだよ」



「俺が」



「お前達姉弟を」








あの高校生の時に見た花火の光が、チカチカと瞼の裏で光って消えた。

それは胸の中にあった、羨望の光ー‥。








仄かに灯っていたその光は、父への密告を知ったあの時に完全に消えた。

淳は闇しか映さないその瞳を、その真犯人に向けながら二人は向かい合う。






初めて知る淳の気持ちを、ただ持て余して静香は立ち尽くした。

やがて淳はフイと静香に背を向ける。



「もういい加減目を覚ましてくれ。俺達はもう昔のようには戻れない。

これが最後のお前への配慮であり、警告だ。

俺達は互いを傷つけ合う関係にしかなれない。自分の人生を探して、それぞれ生きて行くしか」




「頼む」



背を向けた淳が、掠れた声で最後にそう言う。

立ち尽くす静香を残して、淳を乗せた車は走り去った。






月も星も出ていない夜。

微かに思い出せた昔の淡い光は、淳の通告によって完全に消えた。

静香の胸中に、雪への憎しみの炎がちらちらと燃えるー‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<通告>でした。

ありゃりゃー‥

雪が前へどんどん進んでるのに対して、淳が昔のままなのが良くないですね。

静香も雪の力で変わっていってるのに。

淳は昔の通りで原状回復出来ると頑なになってしまっているからなぁ‥。

そんな登場人物達のボタンの掛け違いが印象的ですね。

次回は<その先へ>です。

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