Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

けじめ

2017-01-09 01:00:00 | 雪3年4部(狂った計算式〜制裁)
「ほら、金持って来ましたよ」



河村亮はそう言って、封筒に入った札束を差し出した。

それを元職場の社長・吉川が受け取る。

「もういいっスよね?」



吉川はそれには返答せずにフンと息を吐くと、キョロキョロと周りを見回した。

「ところでお前、この辺に住んでるのか?」



吉川のその言葉に思わずギクッとする亮。

最近彼はこの辺りのシェアハウスに移ったので‥つまり図星だったのである。

「だからどうしたって言うんすか!ピラミッド‥いやプライドはお互い守るべきでしょーが!」

「プライバシー?」「とにかくっ!」



「それじゃこれでオレとは縁切って‥」



そう亮が言葉を続けようとした矢先、吉川はニヤリと笑ってこう言った。

「元金分はあるがな」



「え?」



目を丸くする亮に向かって、吉川は用意して来た切り札を出す。

「利子があんだろ?利子が」



「は‥?」



吉川が出したそのカードは、亮を自身の傍に引き止める為の策だった。

亮は同期の男が吉川への法的措置に備えて準備していることを考慮して、

とりあえず今は吉川の要求を飲むことにし、この場を去ったのだった。






亮はその足で大学へと移動し、練習室でピアノを弾いた。



熱心に鍵盤を叩く亮の姿を、志村教授が見守っている。



亮は先程、志村教授にその胸の内を語った。

利息と言っても、そんな深刻に考える必要はありません。

返す方法は沢山あるわけで。




オレもだてに年食ったわけじゃないですけど、

汚ない仕事もそれなりにやって来ました。




曲の旋律と共に、閉じ込めた苦い記憶が脳裏に蘇る。

ハーフだからっていじめられたし、家庭環境も良くなくて



周りが敵だらけな毎日で



家に憧れ、家に裏切られ、いつしか絶望した。

あの日見上げた空の暗さは、今も瞼の裏にこびり付いて離れない。

きっと一生忘れることなんて出来ないだろう。



信じてた人に見放されて、これ以上失望されたくなくて逃げ出しました。

傍から見たら逃げ回るだけの人生かもしれません。




それでも、そのお蔭で強くもなれました。



指が鍵盤を弾くと、音符をひたすらに追っていくと、それはいつしか曲になる。

先が見えない一日一日を闇雲に走り抜けて、今亮はようやく人生という曲の楽譜を手にした所だった。

その中で悟ったことは、



どこに逃げ出しても彷徨っても‥



オレは最初に捨てた才能とその喜びを、忘れるなんて出来ないということです。

大きな拍手はないけど、自分の演奏の中に吸い込まれそうな気持ちがしています。




今亮の胸の中には、穏やかな気持ちが満ち満ちていた。

あれほど憎んだ過去も、荒れた記憶も、全てが赦されていく。

ここに来てから‥



その発端は、その契機は、彼女との出会いだったのだろう。



顔を合わせれば口喧嘩して、メシを奢れと食い下がって。

「これでお礼はしましたからね?」「おいおいつめてー奴だな!最低二回はおごれっつの!」



冷たい雨に降られたあの夜、彼女は自分に傘を差し掛けた。

何も言わずに、ただ黙って傷ついた自分に寄り添って。



小さな小さな希望の種を、彼女は一粒ずつ渡してくれた。

先の見えない荒れた道筋に、やがて小さな芽が出るようにと。



亮が憧れた”家”の面影を、その温かさを、亮は彼女の中に見る。

「河村氏が忙しいのも分かってるんですけど、もしちょっとでも時間が出来るなら‥、

店の仕事、続けてもらえないですかね‥?」




彼女がくれた希望の種は、彼女自身の光でぐんぐんと芽を伸ばした。

その温かさに触れたくて、手を伸ばしたあの夜。



見開いたその瞳を前にして、どうしても触れることが出来なかった‥。








オレはだんだんまともになって来ました。

自分でもよくやってると思います。




伸ばした手は、そのまま仕舞うことにした。

だからもうどこへ行っても、きっとちゃんと生きて行ける。



太陽みたいな彼女の温かさだけ、宝物のように胸の中に閉じ込めて、

この曲の先を奏でて行く。



亮が語った胸の内を聞いた後、志村教授は彼の演奏をただ黙って聴いていた。

諦めと覚悟を背負ったその背中を、複雑な気持ちで見つめながら。








いつしか曲は終わり、その音の余韻が止んだ後、亮が一言口にした。

「会いに行きたい人がいるんです」



それは亮の、最後のけじめだった。



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<けじめ>でした。

うう‥亮さん‥。なんて穏やかな顔なんでしょうね。

それでも全てを諦めているようで、切なくなります。。

せめて雪ちゃんに想いを打ち明けようよー!バレてるけどさー!

あぁ‥切ないですね‥。

次回は<慣性>です。


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