Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<淳>風光る

2013-07-27 02:00:00 | 雪3年1部(開講~二人の写メ)
さて、雪と淳が二人で携帯写真を撮った日のことを、淳の目線にてなぞってみよう。

その日、淳は真新しいスーツを身に纏っていた。

「おーい!青田さんよ!」



声を掛けて来たのは柳である。

「いや〜キマってるね〜!どこのモデルかと思ったぜ!」

「何だよお世辞なんか」「お世辞じゃねーっての」



「青田先輩かっこいい」と遠くで黄色い歓声が聞こえる。

柳はそちらを指しながらスーツ姿の淳を褒めちぎった。

「ほら見ろ、皆お前に釘付けだっつーの!マジでイケメてるからよ。自分でもそう思うだろ?」

「思ってないって」



「あ、俺ちょっと事務室に書類確認しに行かなきゃ」

「おう」



そう言って歩き出した時だった。

ポケットに入れていた携帯が、一通のメールを受信する。



先輩 

授業のプリントを渡したいのですがどこにいますか?








「雪ちゃん?!」



淳は初めて彼女から送られて来たメールに心底驚いた。

周りの人が思わず振り向く程の大声で、その名を口にしてしまうほどに。







まるで吸い寄せられたかのように、淳はその画面に釘付けだった。

ようやく文章の内容が頭に入ってくる。

「あ、プリント‥」



あれほど切望していた彼女との接点が、再び現れようとしていた。

淳はその指先で、それを繋ぐ。

学館の二階まで持って来てくれると嬉しいな^^



そう返信した後も、淳はずっと携帯を手から離さなかった。

胸の中に、風が吹いているかのように落ち着かない。



ピロン



はい



一文字だけのその返信が、淳の心を躍らせる。

淳は早足で学館の二階へと上がって行った。







落ち着かない胸の内を持て余しながら、淳はジャケットを脱いだ。

無造作に髪の毛を整える。







するとガラスに映る自分の姿が、ふと彼の動きを止めた。

いつもより少しよそ行きの、その自分の姿が。



先程の柳の言葉が蘇る。

「お前マジでイケメてるから!」



胸の中に吹く風が、ふと甘い期待を煽った。

今の自分の姿を、彼女に見せたとしたら‥。








‥と考えた所で、淳は我に返った。

考えを打ち消すように、髪の毛をぐしゃぐしゃにする。

何考えてんだか‥







すると眼下に広がる風景の中を、彼女がこの建物に向かって歩いてくるのが見えた。

淳の視線は彼女に惹き付けられる。



オレンジ色の豊かな髪が、晩春の中で柔らかになびいていた。

彼女は今、淳の元へと向かっている。








まるでキラキラ光る風が胸の中を吹き抜けるような、そんな気持ちに包まれた。

彼女の表情、動き、その一つ一つが、全て特別なものに思えて‥。







春だからだろうか



俺はもうすぐ卒業する。

残された時間は、あと僅かだ




光る風が吹き抜けて行った後で、ふと現実に返って胸が鈍く傷んだ。

時の流れは変えられない。



一日一日を意味あるものにしたいと思った。




たとえ、今この瞬間が刹那に過ぎ去ってしまうとしても、


「‥先輩?」



「一緒に写真撮ろうよ」「はいぃ?!」




意味あるものとして、それを意義として刻みたいと。


カシャッ



「ゲッ?!」



「へ、変な顔してるじゃないですか!」「え?どこが?」

「目がラリってるじゃないですか!髪の毛ボサボサだし!間抜けな顔してますよ!」

「何もだよ?」「私だけ悔しいじゃないですか〜!先輩はアイドルみたいでいいかもしれないですけど!」



必死な顔をしてピョンピョン飛び跳ねる彼女。

まるで兎みたいなその姿に、思わず淳は笑顔になる。



「先輩の前髪屋根みたい!」「何っ」




その日淳は、一つ一つをメモしてあげるみたいに、

彼女と過ごす一時一時を、胸の中に刻んで行こうと決めたのだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<<淳>風光る>でした。

淳目線の話ですね〜^^

2017年の2月に更新された淳の回想編より、記事として時系列順に入れてみました。

行動全てに意義を持たせる生き方をしている、という風に雪の目に映った淳でしたが、

実は淳としては雪と出会ってからのことが大切で、それを意義として刻んで行こうという意志の現れだったのですね。

こうして並べてみると面白いですね〜^^

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その意義(2)

2013-07-27 01:00:00 | 雪3年1部(開講~二人の写メ)
青田先輩と一緒に取っている授業だが、今日の雪の隣は空席だった。

なぜかというと、四年生は皆卒業写真の撮影が入っているのだ。教室も所々空席が目立つ。

教授は「あのイケメンの子が居ないから寂しいわ」と言って、雪にプリントを渡す役目を任せた。









卒業写真撮影の建物の周りには、スーツ姿の四年生達で賑わっていた。

雪は携帯画面を見ながら、幾分の緊張を持て余す。



実は自分から青田先輩にメールを送るのは初めてだったのだ。

考えに考えて、とりあえずシンプルな文面を作成した。

先輩 プリントを渡したいのですがどこにいますか?”



するとすぐに返信が届いた。

学館の二階まで持って来てもらえると嬉しいな^^



雪は学館へと向かう。






学館といってもその建物は大きく、今日は人が多く集まっていることもあり、

雪は先輩の姿を探してしばし彷徨った。



すると通りがかった空き教室から、カシャッと携帯のシャッター音が聞こえ、

雪はそちらの方を見る。



振り返ると、青田先輩が自分に向けてカメラを構えているところだった。



「せ‥先輩?」



「‥あ」








先輩は撮影の順番まで結構あるから暇でさ‥と決まり悪そうに頭を掻いた。



二人の間をなんとも気まずい空気が流れる。

「学校でスーツ着ることなんて滅多にないだろ。記念にね‥」



恥ずかしいとこみられちゃったな、と先輩は照れていた。

雪は先輩が言っていることには共感出来るけれど、この人がこういうことをすることの違和感を、

訳もなく覚えてしまう。

「あ、そうだプリント。ありがとな!」



こんなに戸惑った彼は初めて見る。

でもその笑顔はなんとも爽やかで、雪はなんだかムズムズした。



自分があの顔なら確かに毎日自撮りしてるかも‥

こうして見るとやっぱりかっこいいかもしれない‥。

‥って何を考えてるんだ!赤山雪!



雪は再び自分を諌めた。あの笑顔に騙されてはいけない、と。




プリントを渡しながら、先輩はブログかなんかやってるんですか、と雪は尋ねた。



先輩は笑いながら否定する。

そんなに俺が自撮りしてるのが不思議だった?と。

「普段は写真なんて滅多に撮らないよ。

あんまり好きじゃないんだけど、たまに気が向いた時、撮ったりするんだ」




先輩は彼を見上げる雪を見て、その気持ちを語る。

「今、この瞬間は今しかないだろ?今しかない特別な瞬間を、メモしてあげるみたいにね」



「そうすることによって、意義を感じられるだろう?」




意義‥。



雪の心には、その”意義”という言葉が強く残った。


今日は”卒業写真を撮る日”ということで一枚撮ったと先輩は言う。

どこかにアップこそしないけれど、心の中のブログみたいなもんだとも。



とにもかくにも、もう話すネタも無くなってしまった。



雪はそそくさとこの場を去ろうとした。

すると、先輩は雪を呼び止め言う。

「ねぇ雪ちゃん、一緒に写真撮ろうよ」



「は‥はぃぃ?!」



雪は動揺した。この人はいきなり何を言い出すのだ‥。

しかし先輩は雪を手招きして、こっちにおいでと微笑んでいる。



その笑顔を前にしては断り切れず、雪は彼の隣りに並んだ。

私は写真写りが良くないと言う彼女に、先輩は気にすることないと笑う。

「雪ちゃんと撮りたかったんだ」



「‥‥‥‥」



雪は彼がなぜこんなことをするのか分からなかったし、幾分戸惑ってはいたが、彼の要求に応じた。

なぜならその言葉の裏に、腹黒いものを感じなかったから。

彼は「自撮りしてるの見つかっちゃったから、その口止め料な^^」と無邪気に冗談まで言っている。



雪は緊張の面持ちで、カメラの前に立った。

シャッターが切られる。



出来上がった写真を二人して覗き込んだ。



「ぎゃっ!!」



雪は写真の出来を見て取り乱した。

髪の毛はボサボサだし、目はラリッてるし、マヌケな顔してますよとテンパっている。



先輩は変なところは何もない、俺だって前髪で目が隠れてるでしょ?と言うと、雪に携帯を取られないよう高く掲げた。

(雪が「先輩の前髪はいつも屋根みたいじゃないですか」と言うと、彼は少しショックを受けた。


半泣きの雪に対して、先輩は誰にも見せないし自分が記念に取っておくだけだと言った。

「それに全然変じゃないよ!可愛いよ」



雪は赤面した。きっとからかっているだけだろうけど。







雪は街を歩きながら、やっぱり撮るんじゃなかったと後悔していた。

あれじゃあ芸能人と写メ撮った一般人みたいだ。

雪は恥ずかしさに悶絶した。



ふと、見覚えのあるショーウインドウの前を通りがかった。

「あっ!ブーツ!」



幸いあのブーツはまだ残っていた。

値段は張るが、これは雪に履かれる為に生まれてきたものと考えて、雪は店に入った。



レジまで進み、お金を出そうと財布を開けた時だった。



ふと、紙幣を取り出す手が止まる。

店員さんはもう箱詰めされたブーツを手に雪の支払いを待っていたが、

雪はお金を置いてきちゃったと言うと、そのまま店を出た。












雪は父親から貰ったお小遣いを封筒にしまうと、

それを本の間に挟んでページを閉じた。



布団に入って目を閉じると、父親の小言が鼓膜の内側に反響する。

父の後ろ姿は、暗く陰っていた。

女の子は高いお金を出してまで大学に通う必要は無いからな

またすぐ行かなくちゃならないんだよ 蓮のこともよろしく頼んだぞ




しかし振り向いた父は、その表情が窺えるほど明るく、頼もしく見えた。

お前は父さんに似て賢いからな 久しぶりに顔を見たんだ。お小遣いでもやらないとな



雪の脳裏に、続いて青田先輩が映った。

今しかない特別な瞬間を、メモしてあげるみたいにね。

そうすることによって、意義を感じられるだろう?




雪は誰に話すでも無く、心の中で呟いた。

すみません。

褒められてお小遣いをもらったのが久々過ぎて‥。

いや初めてで‥。

もったいなくてお金を使うことができませんでした。




意義?

それはよく分かりません。

けれど‥

それが何だって言うんだろう。




意義を付けるなら、ブーツを買って所有欲を得れば良かった。

意味を持たせるなら、通帳に入れて学費の足しにすれば良かった。


けれど雪が大切にしたかったのは、大事に仕舞っているのは、初めて貰った父親からの気持ちだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<その意義(2)>でした。

行動全てに意義や意味を持たせようとする先輩と、それが問題じゃないと思っている雪。

並んで映った写メでは二人の距離は近いですが、その価値観はやはり離れているように感じます。


次回は<憂鬱な環境>です。


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