Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<淳>その生い立ち(4)

2013-07-03 01:00:00 | 雪と淳の生い立ち
檜山がトイレから戻ってくると、

手塚が皆から囃し立てられながら作業しているところだった。



しかし檜山はそれよりも、気になっていることがあった。

淳を前に、そわそわと後ろ手に組んだ腕を震わせた。



話があるんだけど、と言って檜山はあるものを淳に差し出した。

「これ‥」



それは廊下に飾ってあった小さな額縁だった。檜山はこれを譲ってくれないかと言う。

趣味で映画俳優やハリウッド女優の写真を集めている彼は、これに入れて飾りたい女優の写真があるんだと言った。

(それは当時大ヒットした映画「タイタニック」の、ローズ役ケイト・ウインスレットの写真だった)



しかし淳は、ダメだと即答した。



お母さんが昔から大事にしていたものだから、と。



檜山はしぶしぶ、淳にその額縁を返した。

しかし心の中は、モヤモヤとした不満でいっぱいだった。

額縁一つくれねーのかよ‥。みみっちい奴。





隣では、手塚が超緊張状態で標本作りに取り掛かっていた。



失敗しちゃいけないと思えば思うほど手は震え、ピンはあらぬ方向へとその先端は向かった。

結局出来上がった標本は、先ほどの美しい蝶々はどこへやら、お粗末なものになってしまった。



手塚は恐る恐る、班長である淳を振り返った。



彼は自分を見ている。

手塚はへへへと笑って見せると、淳もニコリとしてそれに応えた。



手塚は困惑していた。どうしようどうしようと、その心の中は焦燥感でいっぱいだった。



じきに淳の父親が、お菓子を用意したから皆おいでと言った。



わいわいとリビングに向かう子供らの中で、手塚だけはその場に残った。



淳は気にしながらも、そのまま檜山と父親と共に歩き出した。





父親は淳にうまくいっているかと声を掛けた。

しかし和やかな空気は、檜山の一言で一変する。

「あの‥おじさん!廊下にあった小さい額縁、あれオレにくれませんか?!」



その時淳の表情は凍りついたのだが、誰もそれには気が付かなかった。



「俺が集めてるハリウッド女優さんの写真を飾るのに、ピッタリなんです!

もし無理なら、母に言ってお金を持って来ます!」




檜山の子供らしくも、ボンボンの傲慢さも出た発言に、淳の父親は豪快に笑った。

抜け目のない奴だな~と言いながら、彼の頬をぎゅうっと掴んだ。



淳にはない、この奔放さを彼はどこか愉快に感じたのだ。

「いいよ、持って行きなさい」







「嫌です!」



淳は強く言い切った。

母親が昔から大切にしていた額縁だ。譲るわけにはいかなかった。




父親は、大丈夫だと言った。ママも昔捨てようとしたんだけど、そのまま置いておいただけのものだと。

淳はそれでも嫌だと言う。

父はそんなに大事なものなのかと問う。

そうじゃないけど‥と言葉を濁す淳に、父は一体何が問題なんだと問いかける。



檜山は押し問答を繰り広げる親子を前に、気まずい思いをしながら小さくなった。

「それでも‥嫌なもんは、嫌です」



頑固にもそう主張する息子に、父親は怒りを覚えた。

「淳、何を言っているのか分かってるのか。」



小さな肩をぎゅっと掴み、その目を見下ろしながら強い口調で諭した。

「こうやって我を張る年齢はとっくに過ぎただろう」



「お前が欲しいものならこの家に全部あるだろう?

なのにあんな取るに足らないものにいらぬ我を張って、一体何になる?」




「淳、よく考えろ」



「考えるんだ」






やがて、淳はその口を開いた。

「ごめんなさい‥」



もう言いません、と言って淳は謝った。

その態度に、父親は満足気に笑顔を見せる。



父親は心の中で、河村教授に話しかけるように呟いた。

少しでも疑わしいことがあれば、あれからこうして芽から切ってきました。



彼は、息子が感情を自制出来ることを誇りに思った。そしてそれこそが、正常なことだと信じていた。



檜山が父親に大きな声で礼を言った。

ふと淳を見ると、彼は虚ろな表情で黙り込んでいた。



父は淳の頭を抱えると、ぐしゃぐしゃと撫でながら怒ってごめんなと声を掛けた。

友達だろ?と言いながら。



檜山は額縁が自分のものとなり、ヘラヘラと笑いながら鼻歌を口ずさんでいた。










彼は、ふと胸騒ぎがした。

再び窺った淳の表情に、何か不穏なものを感じたからだった。






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<淳>その生い立ち(5)へ続きます。






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