ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

毅然として訂正を求める

2022-04-26 08:33:39 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「逃げた?」4月19日
 『「若い娘を薬漬け」牛丼中毒に 吉野家常務が発言』という見出しの記事が掲載されました。牛丼チェーン大手の吉野家の常務が、早稲田大が主催した社会人向け講座に講師として参加し、問題発言をしたことを報じる記事です。
 発言内容は、『田舎から出てきたばかりの若い女の子を生娘なうちに牛丼中毒にする。男に高い飯をおごってもらうようになれば絶対に食べない』というもののようです。この発言は、わざわざ論評する価値もありません。私は、この発言にまつわる関係者の対応が気になりました。
 吉野家は講座の2日後、『多大な迷惑と不快な思いをさせたことに対し、深くおわび申し上げます』と謝罪し、『用いた言葉・表現の選択は不適切であり、人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではありません』と厳正対処を表明しています。2日後というのが気になりますが、事実確認等も必要で仕方がないかもしれません。
 主宰者の早稲田大は、『社会人教育事業室の責任者が講座終了後に受講者にその場で謝罪した』とのことです。この対応はどうでしょうか。私は不十分だと考えます。その理由は、2つあります。まず、終了後の謝罪という点です。講座には、同大の関係者が複数いたはずです。その人たちは、発言を耳にして「これは問題だ」とは思わなかったのでしょうか。もし同大関係者全員が思わなかったとすれば、早稲田大自体の人権感覚が問われます。
 また、問題だと感じたにもかかわらず、放置していたとすれば、そこには厄介な問題には関係せず面倒に巻き込まれたくないという事なかれ体質が感じられます。私も教委勤務時に研修会等で呼んだ講師の問題発言の対応に苦慮したことがあります。講座の休憩時に、講師本人に問題点を指摘し、本人の口から問題となるわけを説明し謝罪し訂正してもらうのですが、多くの場合講師は「大物」で年上ですし、外部からお願いしてきていただいているわけですし、問題点を指摘するのには勇気が必要になります。
 プライドが高く、間違いを認めないという方もいます。無礼だと怒る方もいます。もう二度と(講師として)来ない、自分が属する組織として(教委には)協力しないと言う方もいます。それでも、謝罪と訂正をお願いしなければならないのです。そうしなければ、教委が差別や人権侵害を容認していると言われてしまうからです。正直に言って、この謝罪と訂正をお願いするというのが、指導主事として最も嫌な仕事でした。
 同大の関係者は、吉野家の常務に対して、こうした対応をとっていないように思われるのです。常務はその場では謝罪も訂正も説明もしていないのですから。
 こうした事例は学校でも起こり得ます。特に、地域の人や外部の社会人を講師に呼んで講話などを依頼するケースが増えてくると、こうした問題発言事例が起こりやすいのです。そのとき、その場には校長も副校長もおらず、教員が一人だけ立ち会っているということもあるはずです。その一人があなただった場合、あなたは毅然として講師に謝罪と訂正をお願いできるでしょうか。教員は、自分の胸に聞いてみる必要があります。
 なお、こちらの要請に講師が従わない場合、無理押しすることはありません。会の終了後に、問題点を指摘し修正と謝罪をし、講師にも訂正を求めたが拒否されたという事実を伝えればよいのです。

 

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