ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

金儲け、という疑惑

2019-01-13 08:26:11 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「お金をもらって」1月9日
 『警官 出版社から現金か 昇任試験問題集執筆料「467人に1億円」』と言う見出しの記事が掲載されました。『警察庁と17道府県警の警察官が、昇任試験の問題集を出版する企業からの依頼で問題や解答を執筆し、現金を受け取っていたとの一部報道』について報じる記事です。この記事が訴えているのは、地方公務員法が定める「兼業の禁止」に抵触するのではないかという指摘です。
 記事によると、警察庁は『現時点で公務員の兼業の禁止や職務専念義務違反には当たらないと見ている』、広島県警は『単発で原稿料をもらう行為は副業に当たらず、届出の必要もない』との立場です。一方で、熊本県警は『執筆料が謝礼ではなく報酬だった場合、副業禁止規定に抵触する可能性がある』という見解のようです。
 公立校の教員も地方公務員です。もっとも、この問題については、教育公務員特例法の規程が適用されますが、同法においても、「兼職及び他の事業等の従事」に関する規程はあります。つまり、今回のような問題は、教員においてもおこるのです。
 私自身、教員時代に、様々な出版社から原稿料をいただいたことがあります。子供向け歴史物語、子供を対象にした歴史事典、4年生が使う郷土東京の副読本、高学年用の社会科資料集、夏休みの自由研究の手引きなどです。休みの日を何日も費やし、実際に玉川上水や鎌倉街道に足を運んだり、参考文献を購入して読み込んだりして執筆したものでした。
 まだ若かった当時のことを思い返してみると、法律の禁止事項などほとんど理解していませんでした。出版社から電話をもらい、「ぜひ、子供のことをよく知り、社会科の研究で実績を上げている先生にお願いしたい」というようなお世辞を聞かされると、外部の第三者に自分の力量や実績が認められたような気がして、嬉しかったというのが本当の気持ちでした。
 そのうちにそうした子供向けの書籍だけでなく、教員を対象にした指導事例集や教科書の指導書なども執筆するようになりました。自分が書いた指導書を基に、全国の多くの教員が授業に臨んでいると思うと、私のプライドは大きくふくれあがっていたものでした。浅ましい限りですね。恥ずかしいです。
  それはともかく、教員のそのような行為は、私程度であれば、法の規定に反したことにはなりません。一般の地方公務員と異なり、教員においては「兼職及び他の事業等の従事」の規程が緩いのです。それは、子供向けの書籍執筆も、教員対象の指導書等執筆も、学校教育の充実に寄与する行為であり、それは経験豊富な現職教員によることに一定の妥当性があるという考え方によるからです。ですから教育に全く関係のないアルバイト、飲食店でウェーターをするというような兼業はもちろん禁止ですし、家庭教師をするというのも謝礼ではなく報酬とみなされますから、アウトです。
 とはいえ、執筆に時間と労力を取られ、授業や学級経営が疎かになるということは許されないことです。法的には問題がなくても、教員について今回のような記事が出れば、保護者は不信感をもつことでしょう。「うちの先生、原稿書きに忙しくて子供のことよく見ていないのじゃないかしら」と思われては、教職は務まりません。教委は、管轄下の学校の教員について、誰がどのような書籍の執筆をしているのかを把握し、市民からの疑問や問い合わせにきちんと答えることができるようにしておくことが望ましいと考えます。

 

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