風になりたい
中学一、二年生の頃近所の裕福な先輩がバイクと言うより、
エンジン付き自転車と呼ぶのがふさわしい代物を持っていた。
そのバイクを借りて乗ったのが、私のオートバイ人生の記念すべき日であった。
就職して経済的余裕ができ、ようやく中古のCB90を購入したのは二十歳を過ぎていた。
これを言うと年齢が分るのだが私が十八歳で運転免許を取った年に、
法令改正があり普通自動車免許で乗れるオートバイは原付きバイクのみになった。
現物に一度も乗らずに自動二輪の免許を手に入れた最後の年代である。
その後、トレールのヤマハHT190、ホンダCB450、
結婚後ヤマハSR250、スズキサベージ650と乗り継ぎ、
数年前に現在のホンダスティード600に落ち着き今に至っている。
欲を言えば、オーバーナナハンに乗りたいと夢見ているが体力と、年齢を考え思案中である。
以前は、タンデムの後席は二人の娘が交互に乗っていたが、年頃になって照れるので、
最近は専ら家内の指定席となっている。なにヘルメットで顔さえ隠せば、年なんて分らないさ、
と年甲斐も無く揃いのジージャンで出かけたりしている。
天候に恵まれたツーリングは本当に気持ちが良い。
思わず口ずさむ歌が、ザ・ブームの「風になりたい」である。
「風になろう」と宣伝文句にもあるとおり、風になるような気分のよさがオートバイにはあるのだ。
気の合う仲間でのマスツーリングは楽しいし安心感、開放感がたまらない。
しかし社会人ともなると行程の調整が難しく、めったに実現できない。
(続く)