今日(2月25日)は、「箱根用水完成の日」
1670(寛文10)年2月25日、日本の土木史上重要な意味を持つ箱根用水が完成した。箱根用水は、箱根にある芦ノ湖の水を駿河の国(現在の静岡県)駿東郡(すんとうぐん)に流した用水路。
芦ノ湖は海抜723m。貯水量1億7千万tで宮ケ瀬ダムに匹敵する。この芦ノ湖には二つ水門がある。芦ノ湖キャンプ村近くの逆川口に造られた湖尻水門と西岸にある深良水門である。
湖尻水門は湖水の水位調節を目的とし、深良水門は箱根用水としての役割も持つ芦ノ湖からの取水を目的とした水門だ。
芦ノ湖の清流は隧道(トンネル)を通って山向こうの裾野市深良地域へと流れ出している。隧道の長さは、全長1280m。
新田開発のために湖尻峠の真下に隧道を堀り、箱根用水造りが始まったのは1666(寛文6)年のことである。江戸町人の友野与右衛門らが同郡深良村(現在の裾野市)の名主・大庭源之丞の依頼によって、灌漑に苦慮した村々に引水して、新田を開発しようと計画。幕府の許可を得て着工、湖尻峠を掘り抜く工事は難航したが、4年後の1670(寛文10)年2月25日に完成。この話は、地元の言い伝えでは江戸の町人・友野与右衛門らが、水不足に悩む農民を救済するために私財を投じて幕府や小田原藩の権力に抵抗しながら用水を造り、その結果、開田500町歩(1町歩は約(1ha)、8,000石(一石は150kg)の増収になったといわれてきた。そして、戦後、民主主義実戦のモデルとして、小説や映画(箱根風雲録)で全国に紹介された。映画では、お上にも出来ぬ大工事が、一町人と農民の手で成功すれば幕府の威光は地におちると考えた幕府の役人たちが、陰険な妨害を加えて、与右衛門は2度も3度も捕られ、挙句の果てに、与右衛門は用水貴流と共に幕府の兇刃に倒れたことになっている。
しかし、以下参考の「箱根(町観光振興協会HP)」によると、後の調査で、「箱根用水は耕作期にだけ湖水を渡し、他は、早川に流した。小田原藩が藩米増加のため計画し、友野らは工事請負人、農民は代官の命令で動員された。友野らは工事完成後、新田から年貢米を売り上げて資金を回収し、さらに利益を見込んだが、掘抜工事1年の予定が4年に延び、新田500町歩が200町歩以下と資金繰りに困り、富沢村の「選び出し米代金」として幕府へ納めるお金110両を着服して訴えられた」ことが判明。だから、友野は、義人ではなく横領犯という不幸な結末に終わったというのが史実らしい。
寛文(1661年~1672年)といえば、徳川家綱の時代。戦争が終結し、全国的な支配権を握った江戸幕府や各藩が年貢 の増収をねがい、盛んに新田開発に取り組んでいた時代である。当時の新田開発の主眼は、大きな河川の護岸、川筋の付け替え、溜池の新造などを中心に、距離の長い用水路を掘り、沖積地を水田化することにあった。先ず、領主直轄や豪商請負による大河川の工事があり、次に土豪や町人による用水路開発、さらに寺院や村方、入植者による野場開墾へと進んで、大量に水田が増えた。箱根用水もその新田開発政策を受けての小田原藩管轄の事業で、友野与右衛門らはその工事の請負人だったのである。
近世に於ける平野から山地にまでの開発の進行は、河川に大きな影響を与えるに至った。全国的な洪水の頻発である。「国を治めるには水を治めよ、水を治めるにはまず山を治めよ」行き過ぎた開発の奨励を反省し、1666(寛文6)年、「諸国山川掟」が発布され、初めて開発至上主義から既存の田畑を丁寧に耕作する方向に農政の大転換をはかったときでもある。新田の乱開発から開墾に進む事業の資本と技術を「民間」の町人に求めることもしばしば行われていた。友野与右衛門もその1人であった。
この芦ノ湖の水利権は神奈川県でなくて静岡県にある。江戸時代は箱根も深良も小田原藩の領地であったので何の問題もなかった。しかし、廃藩置県後、両地域は神奈川県と静岡県に分かれてしまった。そのため、水利権をめぐって両県で争いがあったが、裁判により静岡県に水利権があるとされたようだ。
(画像は、映画 > DVD > 「箱根風雲録 」製作: 1952(昭和27)年 。監督: 山本薩夫 。出演: 河原崎長十郎/山田五十鈴)
参考:
駿東郡 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A7%BF%E6%9D%B1%E9%83%A1
第21回 失敗のシミュレーション●箱根用水と友野与右衛門●
箱根(町観光振興協会HP)
http://www.west4.gr.jp/pdf/hakone.pdf
箱根 芦ノ湖編(箱根用水)・・・写真が多い。
http://www.geocities.jp/suityurov/hakone.htm
深良水門(箱根用水)
http://www.shonan-rockets.com/ashinoko/fukara/
[PDF] 農業土木遺産を訪ねて
http://dokaikyo.or.jp/yomimono/isan/244_isn.pdf
箱根風雲録 - goo 映画
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD23415/index.html?flash=1
熊沢蕃山
http://f59.aaa.livedoor.jp/~kanburia/introduce11.html
1670(寛文10)年2月25日、日本の土木史上重要な意味を持つ箱根用水が完成した。箱根用水は、箱根にある芦ノ湖の水を駿河の国(現在の静岡県)駿東郡(すんとうぐん)に流した用水路。
芦ノ湖は海抜723m。貯水量1億7千万tで宮ケ瀬ダムに匹敵する。この芦ノ湖には二つ水門がある。芦ノ湖キャンプ村近くの逆川口に造られた湖尻水門と西岸にある深良水門である。
湖尻水門は湖水の水位調節を目的とし、深良水門は箱根用水としての役割も持つ芦ノ湖からの取水を目的とした水門だ。
芦ノ湖の清流は隧道(トンネル)を通って山向こうの裾野市深良地域へと流れ出している。隧道の長さは、全長1280m。
新田開発のために湖尻峠の真下に隧道を堀り、箱根用水造りが始まったのは1666(寛文6)年のことである。江戸町人の友野与右衛門らが同郡深良村(現在の裾野市)の名主・大庭源之丞の依頼によって、灌漑に苦慮した村々に引水して、新田を開発しようと計画。幕府の許可を得て着工、湖尻峠を掘り抜く工事は難航したが、4年後の1670(寛文10)年2月25日に完成。この話は、地元の言い伝えでは江戸の町人・友野与右衛門らが、水不足に悩む農民を救済するために私財を投じて幕府や小田原藩の権力に抵抗しながら用水を造り、その結果、開田500町歩(1町歩は約(1ha)、8,000石(一石は150kg)の増収になったといわれてきた。そして、戦後、民主主義実戦のモデルとして、小説や映画(箱根風雲録)で全国に紹介された。映画では、お上にも出来ぬ大工事が、一町人と農民の手で成功すれば幕府の威光は地におちると考えた幕府の役人たちが、陰険な妨害を加えて、与右衛門は2度も3度も捕られ、挙句の果てに、与右衛門は用水貴流と共に幕府の兇刃に倒れたことになっている。
しかし、以下参考の「箱根(町観光振興協会HP)」によると、後の調査で、「箱根用水は耕作期にだけ湖水を渡し、他は、早川に流した。小田原藩が藩米増加のため計画し、友野らは工事請負人、農民は代官の命令で動員された。友野らは工事完成後、新田から年貢米を売り上げて資金を回収し、さらに利益を見込んだが、掘抜工事1年の予定が4年に延び、新田500町歩が200町歩以下と資金繰りに困り、富沢村の「選び出し米代金」として幕府へ納めるお金110両を着服して訴えられた」ことが判明。だから、友野は、義人ではなく横領犯という不幸な結末に終わったというのが史実らしい。
寛文(1661年~1672年)といえば、徳川家綱の時代。戦争が終結し、全国的な支配権を握った江戸幕府や各藩が年貢 の増収をねがい、盛んに新田開発に取り組んでいた時代である。当時の新田開発の主眼は、大きな河川の護岸、川筋の付け替え、溜池の新造などを中心に、距離の長い用水路を掘り、沖積地を水田化することにあった。先ず、領主直轄や豪商請負による大河川の工事があり、次に土豪や町人による用水路開発、さらに寺院や村方、入植者による野場開墾へと進んで、大量に水田が増えた。箱根用水もその新田開発政策を受けての小田原藩管轄の事業で、友野与右衛門らはその工事の請負人だったのである。
近世に於ける平野から山地にまでの開発の進行は、河川に大きな影響を与えるに至った。全国的な洪水の頻発である。「国を治めるには水を治めよ、水を治めるにはまず山を治めよ」行き過ぎた開発の奨励を反省し、1666(寛文6)年、「諸国山川掟」が発布され、初めて開発至上主義から既存の田畑を丁寧に耕作する方向に農政の大転換をはかったときでもある。新田の乱開発から開墾に進む事業の資本と技術を「民間」の町人に求めることもしばしば行われていた。友野与右衛門もその1人であった。
この芦ノ湖の水利権は神奈川県でなくて静岡県にある。江戸時代は箱根も深良も小田原藩の領地であったので何の問題もなかった。しかし、廃藩置県後、両地域は神奈川県と静岡県に分かれてしまった。そのため、水利権をめぐって両県で争いがあったが、裁判により静岡県に水利権があるとされたようだ。
(画像は、映画 > DVD > 「箱根風雲録 」製作: 1952(昭和27)年 。監督: 山本薩夫 。出演: 河原崎長十郎/山田五十鈴)
参考:
駿東郡 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A7%BF%E6%9D%B1%E9%83%A1
第21回 失敗のシミュレーション●箱根用水と友野与右衛門●
箱根(町観光振興協会HP)
http://www.west4.gr.jp/pdf/hakone.pdf
箱根 芦ノ湖編(箱根用水)・・・写真が多い。
http://www.geocities.jp/suityurov/hakone.htm
深良水門(箱根用水)
http://www.shonan-rockets.com/ashinoko/fukara/
[PDF] 農業土木遺産を訪ねて
http://dokaikyo.or.jp/yomimono/isan/244_isn.pdf
箱根風雲録 - goo 映画
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD23415/index.html?flash=1
熊沢蕃山
http://f59.aaa.livedoor.jp/~kanburia/introduce11.html