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記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

「瓢々忌」小説家・尾崎士郎の忌日。

2006-02-19 | 人物
2月19日「瓢々忌」。小説家・尾崎士郎の1964(昭和39)年の忌日。
代表作『人生劇場』の主人公・青成瓢吉から瓢々忌と呼ばれる。
やると思えば どこまでやるさ それが男の 魂じゃないか
義理がすたれりゃ この世は闇だ なまじとめるな 夜の雨・・・
昭和初期から歌われつづけている『人生劇場』の歌である。作詞:佐藤惣之助、作曲:古賀政男。尾崎士郎の同名の小説を下敷きにして作られた歌で、昭和13年(1938)発表。男の世界を豪快に歌い一世を風びした歌手村田英雄の代表歌でもあり、私の大好きな歌でもある。『人生劇場』は、愛知県吉良町出身の作家尾崎士郎の自伝的大河小説。映画化されること10数回、流行歌にも歌われ、戦中・戦後のロングセラーとなり、尾崎士郎の『人生劇場』が広く世に知られたのは1935(昭和10)年だったという。『人生劇場』は、「青春篇」、「愛慾篇」、「残侠篇」、「風雲篇」、「離愁篇」、「夢幻篇」、「望郷篇」、「蕩子篇」からなる。
吉良から上京、早稲田大学に入学した骨太い熱血漢・青成瓢吉の生き様を、義理と人情にからめて織り上げた大河小説であった。1898(明治31)年、愛知県に生れ、中学時代から政治に関心を持ち、高等予科入学後、社会主義運動に傾倒し、1917(大正6)年の早稲田時代には早稲田騒動の指導者となっていたようだが、早大政経学部を中退して、1923(大正12)年に長篇『逃避行』発表後、運動から離れていく。1933(昭和8)年、都新聞(現『東京新聞』の前身)に連載され始めたころは、さほど話題にならず、竹村書房から単行本として刊行されるようになり、川端康成が読売新聞紙上で、絶賛したことからブーム現象を起こすほどになったという。1935(昭和10)年4月16日付け読売・文芸欄の全紙を埋めてすこぶるつきの賞賛をしたというがその内容は次のようなものである。
「彼岸の中日、雲の日、(特にその日をここに誌して置きたいほど)私は、よき日の思いに溢れた。尾崎士郎氏の『人生劇場』に感動したのである。その日の後、私はこの小説とこの作者を思って幾度か幾夜か眠れず、房総の旅に出たが、まだ眠れぬほどであった。(中略)このような大小説が我が文壇に生まれえたこと、余りに文壇に知られず書き続けられていたことが、不思議でならないということになる。実に我が国では脅威に価する、長編小説らしいまことの大小説である。比肩し得る作品は容易に見当たるまい」(朝日クロニカル・週刊20世紀より)・・・。後にノーベル賞作家ともなった有名作家に、全国紙上でここまで、絶賛されると、ブームにならないほうがおかしいよね。
川端康成が激賞するだけあって、作者尾崎士郎の面影を宿す正義感と侠気にあふれた主人公・青成瓢吉(あおなり・ひょうきち)の、人生如何に生きるべきかを求めて彷徨する姿には、大正ロマンの哀歓がみなぎっている。早稲田大学に入学し、折からの大隈候夫人の銅像建設に端を発した学生運動(早稲田騒動)に主人公は青春の情熱を注ぎ込む。これに絡まってはじめての恋を体験する。この小説の面白さはやはり、1935(昭和10)年刊行の最初の「青春編」が圧巻だ。多くの読者の支持を集め、「青春編」の刊行直後、古賀政男作曲の歌謡曲「人生劇場」が発表され大流行、翌年には日活によって映画化、1937(昭和12)年には新国劇が劇化・上演して、尾崎士郎は文壇の寵児から世間の寵児に上り詰めていく。これを手本としたものに、同じ早稲田大学の後輩五木寛之の自伝的な大河小説『青春の門』がある。「人生劇場」は、14回も映画化されているそうだが、今では、最もよく知られているのが、「人生劇場-飛車角と吉良常」(1968年・東映)内田吐夢監督 と「人生劇場-青春・愛慾・残侠篇」(1972年・松竹)加藤泰監督 の2作ではないか。
早稲田騒動のことは以下参考の「尾崎士郎のこと ・大学騒動事始」が詳しい。このブログを書くので調べていて分ったことだが、古賀政男作曲、佐藤惣之助作詞で発表され、大ヒットとなった。『人生劇場』は早稲田の学生たちの心意気を示すものとして同行の『第二校歌』とも呼ばれているらしい。この歌は、通常3番までのものだが、「幻の4番」といわれる歌詞があるのだと言う。佐藤惣之助が作った歌詞か、あるいは別の人があとで付け加えたものかはわからない。3番と4番の間奏の部分にセリフが入っているガ、誰が作ったものかは正確にはわかっていないが、歌が発表される前に上演された『人生劇場』の宣伝文句が原形ではないかといわれているそうだ。
以下参考に記載の「二木紘三MID歌声喫茶」にある>「人生劇場」には、MIDIだけではなく1番から4番までの歌詞とセリフ、歌の説明などがあるのでどうぞ。
「人生劇場」
(画像は、日本近代文学館提供の「人生劇場」アサヒクロニクル・週刊20世紀より)
参考:
人生劇場 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E7%94%9F%E5%8A%87%E5%A0%B4
NO.886 Nov.18,1999『早稲田大学と文学』 (早稲田大学HP)
http://www.waseda.jp/student/weekly/tokusyu/tok886-2.html#top
早稲田ウィークリー/尾崎士郎のこと ・大学騒動事始
http://rokugou.cside.com/sub348hantihankai.htm
日々激動/55 人生劇場
http://www.tokyo-np.co.jp/120th/henshu/gekidou/gekidou_040914.html
尾崎士郎 (オザキシロウ) - goo 映画
http://movie.goo.ne.jp/cast/89717/index.html
二木紘三MID歌声喫茶
http://www.duarbo.jp/songs.htm