ハイカーホリックの介護日記~機能訓練指導員の一日~
体の衰えは筋肉の衰えです。筋肉を復活させる事に全力を尽くします。
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「キャッ!、動いた!」
「どうしたの?」
「今、この子が私のおなかをボコッボコッって蹴飛ばしたの」
「まあ、元気のいい証拠ね」
A子は現在妊娠8ヶ月、結婚して2年、初めての出産である。検診では母子共に順調、特に体調面でも気になるところはなかった。
新興住宅地の小春日和の昼下がり、お隣のB子と庭の塀越しにかれこれ30分ほど世間話をしていたのであった。
「最近、よくおなかを蹴飛ばすの。結構ビックリするのよねぇ」
「きっとJ男さんに似て元気一杯、きっと男の子ね」
まだ男の子が生まれてくるのか、女の子が生まれてくるのかはわからなかったが、もうすぐ生まれてくる我が子に早く会いたいと思うA子だった。

とまあ、テレビなどでもよく見かける光景です。赤ちゃんがおなかの中で動いただけでこれだけ盛り上がってしまうのがこの時期です。
ところで、「赤ちゃんがおなかを蹴飛ばす=J男さんに似て元気一杯」とお隣のB子は言いましたが、果たしてそうでしょうか。あっと、ここで問題にしているのは「J男さんに似て」という部分ではありません。生まれてくる子供(仮にQ太郎君ということにしておきましょう)はA子とJ男の愛の結晶ということは間違いないという設定です。問題はQ太郎が元気一杯だからおなかを蹴飛ばしたのかということです。
赤ちゃんはお母さんのおなかの中では羊水という液体の中で過ごしています。8ヶ月にもなれば人間の形が出来上がっていて、羊水の中で動くというのは正常なことです。ところが激しく蹴ったり、あるいはシャックリを頻繁に起こすというのは、赤ちゃんの出しているサインだと言われています。それでは何のサインかというと、

「寒い!」

というサインだったのです。つまりQ太郎に代わって代弁すると、

「母ちゃん、いつまで隣のオバさんと外で話してるんだよ。こっちは寒くて眠れないだろ、早く家の中に入って温まってくれよ」

と言っているのです。その証拠にお母さんがお風呂で湯船につかっているときの赤ちゃんの胎動というのは非常に穏やかだそうです。ということはお母さんはおなかを冷やしてはいけないのです。

自分が眠るときのことを考えてみてください。寒いと眠れないものです。そして寒いと非常に不機嫌になります。それが一日だけならば「昨夜は眠れなくて今日は寝不足」で済ませることもできますが、一週間も続けばおそらくノイローゼのような状態になるはずです。衣食住が充実している日本においては寒ければ暖かくすることは簡単ですから、そのようなノイローゼになることはないはずです。ところが胎児はそうはいきません。自分で押入れから毛布を引っ張り出してきて包まるということはできませんから、すべてはお母さん次第なのです。

先日、数人の助産師さんや看護師さんの談話が新聞に載っていました。そこでは最近、切迫早産や切迫流産で病院に担ぎ込まれる数が急増していると書かれていました。そしてその原因は「冷え」ではなかろうかとも書かれていました。この方たちの目にする妊婦の中には妊娠前と同じように肌を露出したような服装の妊婦だとか、食生活の乱れている妊婦が多いそうです。お母さんの体が冷えていれば、当然赤ちゃんのいるおなかの中も冷えているはずです。

ここからは僕の仮説ですが、切迫早産だとか流産というのは全てではないにせよ、赤ちゃんがあまりの寒さに耐えかねて、外に出たがったために起こっているのではないかと思うのです。つまり、

「こんな寒いところにいつまでもいられるものか、とっとと外に出てやる」

ということではないかと思うのです。西洋医学的な見地から言えば、噴飯ものの話かもしれません。西洋医学には「冷え」という概念はありませんから、いろいろな理由がつけられていますが、僕はこの「寒さに耐えかねて」という説が最も説得力があるように思うのです。

でもいくら西洋医学に「冷え」という概念がないとはいえ、日本人の生活の中には「冷え」という概念はしっかりと根付いています。科学的で明確な定義や基準が曖昧なために西洋医学の考え方に合わないだけなのです。だからといって無視してよい問題ではありません。実際に患者に接している助産師さんや看護師さんは「冷え」の存在を認識しているのです。患者を診ないで検査結果やレントゲン写真ばかり見ている医者に「冷え」というものがわからないだけなのです。

現在、日本の少子化問題は危機的な状況にあるといえます。妊娠する人自体も減っているのに、せっかく妊娠しても流産してしまってはますます少子化になってしまいます。何度か流産して出産を諦めざる得なくなる人もいるでしょうし、早産でつらい思いをして2人目を諦める場合もあるかもしれません。ですからせめて妊娠したのならば無事に出産までこぎつけるようにしなくてはいけないのです。そのためにはおなかを冷やしてはいけないのです。残念なことに医師にそういう指導を徹底している人は少ないように思います。

また現在の医療では不妊治療とか体外受精とか、そういう理科の実験みたいなことは一生懸命やります。残念なことに患者の側も妊娠しないと安易にそういう治療に走る人も少なくないようです。ところが妊娠できないのは生活習慣に問題がある場合も少なくないと思うのです。体が冷えるような悪しき生活習慣を全く改めずに、そういう不妊治療を受けてもダメだと思うのです。現代は普通に暮らしていても体が冷えてしまう世の中です。ですから妊娠しよう、あるいは妊娠した人はとくに「冷え」というものに対して敏感にならなくてはいけないのです。

以前出会った患者さんに不妊治療を何年も受けて妊娠できない人がいました。その人の手足はとても冷たく、食事の内容を聞いてみると、これが無茶苦茶でした。夕飯はチョコレート3枚とか、アイスクリームだけとか、とても食事とはいえない内容でした。そんな状態で不妊治療を受けてもダメだと言ったのですが、不妊治療にお金をかけることは平気でも、食生活を変えることはできないようでした。不思議な人でした。でもきっとこの人は極端な例ではないはずです。

現代では妊娠しようと思ったら妊娠できる体作りから必要のようです。赤ちゃんはお母さんのおなかの中で約290日を過ごすわけですから、赤ちゃんのベッドであるおなかは常に温かい状態でないといけないのです。先に述べたように寒いと人間は不機嫌になります。胎児とて同じはずです。胎児にとっても「寒い」ということはストレスです。ストレスにさらされ続けたらどうなるでしょう。寒い状態がずっと続けば極端な話、人格形成にも影響が出てくると思うのです。今、子供の中に低体温の子供が非常に増えています。しかし実は胎児のときからすでに低体温なのかもしれないと思うのです。

話が長くなりますので続きはまた明日にいたします。

※当院のホームページに「逆子(骨盤位)の治療」のページを開設いたしました。こちらからどうぞ。

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