ハイカーホリックの介護日記~機能訓練指導員の一日~
体の衰えは筋肉の衰えです。筋肉を復活させる事に全力を尽くします。
打倒サルコペニア。まずはウェブで!
 



一般的な常識として使われている事柄の中には結構間違っているものが多く見受けられます。最近ネット上で多く見かけるのが「確立」。「当たる確立」などと使われています。これはいくらなんでも「確率」でしょうと思うのですが、この間違いは非常に多いです。

それから以前「続柄(つづきがら)は?」と人に尋ねたときに「それは”ぞくがら”でしょ」と訂正されました。目上の人だったので「はい」と返事をしておきましたが、これも明らかに間違いです。でも「ぞくがら」の方がどうも市民権を得ているようなのです。

このように間違っているんだけれども、すでに間違っているほうが市民権を得ているという事は結構多くあるように思います。医療の中でも多く見受けられます。そんなものをぼちぼちと紹介していきたいと思い立ちました。新しいカテゴリーを作ろうかとも思いましたが、面倒くさいので「体・健康」カテゴリーでいきます。

患者さんに既往歴を尋ねていると、「昔、複雑骨折を起こして骨がバラバラになったことがある」とおっしゃられる方が結構いらっしゃいます。詳しく話を聞いてみると、どうも普通の骨折のようなのですが、昔の病歴は大げさに語られることが多いようです。そのときの口ぶりは不思議なことに自慢気です。別に誉められたことでもないと思うのですが、ここで「そんなものは大したことではありません」などと言うと気分を害されるので、こちらも大げさに「そんなすごいことになったのですか、それは大変でしたねぇ」といかにも感心したように答えます。それがサービス業というものです。

ところで「複雑骨折とは骨がバラバラになることだ」と思っていらっしゃる方が多くいらっしゃいます。イメージ的には普通の骨折とはグリコのポッキーを「ポキッ」と折った状態、複雑骨折は森永のマリーというビスケットを床に落として3、4個の破片に割れてしまった状態、こんな感じではないかと思います。ところがこれが全然違うのです。

骨折は折れ方や折れた状態などによっていろいろな分類のされ方があります。その中で骨折したときに折れた骨片が皮下に留まっているものを「単純骨折」あるいは「皮下骨折」といいます。このとき単に1ヶ所で折れていようが、骨がバラバラになっていようがそれはまた別の分類ですので、このようにいいます。これに対して折れた骨片が皮膚を突き破って外界と交通した場合を「複雑骨折」あるいは「開放性骨折」と呼ぶのです。ですから単に1ケ所だけ折れた場合でも、その骨片が皮膚を突き破っていれば複雑骨折ですし、どんなにややこしく折れていていても、治療が難しくても、骨が皮膚の外に出ていなければ複雑骨折とは呼びません。

これはおそらくほとんどの方が間違って認識されています。テレビを見ていても、芸能人やニュースのアナウンサーなどは正確に言っているのを聞いたことがありませんし、医療関係者と思われる人でも間違った使い方をしている場合があります。もはやこうなってしまうと、人との会話の中で正しい意味で「複雑骨折」と使うほうが混乱することになります。

それでは1つの骨が2ヶ所以上で骨折した場合は何と呼ぶかと言うと「二重骨折」とか「重複骨折」などと呼びます。2本の骨が同時に骨折することを「多発骨折」と言いますが、どれも聞き慣れない言葉ばかりです。また強い外力が骨に加わってそれこそ骨がバラバラになった場合には「粉砕骨折」と呼びます。これら全て非常に治療は難しく厄介な骨折です。でもどんなに大変な骨折でも骨が皮膚から飛び出していない限り複雑骨折と呼ぶことはありません。でもほとんどの人がこういった場合には複雑骨折と呼んでいるという、とても複雑な話でした。

コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )