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起こるべくして起きたX線天文衛星「ひとみ」の失敗 その1 ~組織が時代遅れ~

2016年06月26日 | 科学・技術

「成功には偶然があり、失敗には必然がある」と言いますが、全くその通りです。

例えば、われわれは偶然も重なり大成功を収めると、その成功体験を捨てられず同じやり方を続けようとする。これは、従来通りしていれば安心ということもあるし、違う方法をやって失敗すると非難されることになるので、続けざるを得ない状況になる場合もある。そして、成功体験を漫然となぞっていると、しばらくは順調ですが、そのうち成功の陰に隠れていた欠点が徐々に大きくなり、結局失敗することが多い。後からその失敗を振り返ると、失敗が必然と思えるような原因が次々と出てくる。

 

2014年2月6日のブログ「日本のいびつな成功体験「はやぶさ」」で、「はやぶさ」の成功が「裏口技術」(私が名付けました)をもてはやす日本の「いびつさ」を指摘しました。

 

「はやぶさ」の成功の大きな要因の一つとして、「推進装置を制御する正規の回路の他に、もしかのための配線をしておいた」というのがありました。しかし、このような「裏口技術」を異様に誉めそやす日本の風土には問題があります。あの「はやぶさ」の成功後の異様な興奮状態をTVで見ると、日本人にはまともな技術開発ができないのでは?と思いました。このようなことを続けていると、次の計画ではまともに成功しない懸念があると上記ブログで書きました。

 

幸か不幸か、この懸念が表面化することは二年ほどありませんでしたが、ついに300億円の費用と8年の準備をかけたX線天文衛星「ひとみ」が失敗しました。

 

6月8日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)は「X線天文衛星「ひとみ」の異常事象に関する小委員会」の報告書を公表しました。これは今流行りの第三者委員会だそうですが、「ヤメ検」ではなく科学者が委員なので内容はまともで、失敗の問題点を明らかにしています。(二人いる主査の一人に「佐藤勝彦」氏の名前を見た時はビックリ。彼はノーベル賞級(ノーベル賞はちょっと難しいかな?)の宇宙物理学者ですよ。委員会の実務をどれほどしたかわかりませんが)

 

先ず書いておかなくてはならないのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)といっても内情は複雑なこと。X線天文衛星「ひとみ」を打ち上げたのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の中の「宇宙科学研究所」。 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2003年に宇宙開発事業団、航空宇宙技術研究所と全国の大学の共同利用機関の旧宇宙科学研究所の3組織を統合して誕生しました。その旧宇宙科学研究所は、東京大学にあった宇宙航空研究所が源流です。

 

私のようなJAXA内部ではない者でも、宇宙科学研究所(ISAS)はJAXA本体とは一線を画している(もっとはっきり言えば独立というか孤立を保っている)なあと思います。宇宙科学研究所(ISAS)はJAXA本体の筑波市から離れた相模原市にあり、打ち上げ場も昔からの内之浦です。そして、ここのメンバーだけは「教授」「准教授」「助教」という肩書が付いています。「教授」という名前にステータスシンボルを感じるのでしょう。チーフとかディレクター、マネジャーなどの横文字よりも、「教授」のほうがえらいように思いますから。大学院教育を行っているという理由をつけるでしょうが、関係ないですよね。

 

昔からよく言われるように、「教授」なんていう人種に大プロジェクトのリーダーが務まるか?という話です。今回のX線天文衛星「ひとみ」のプロジェクトの責任者(プロジェクト・マネジャー)も高エネルギー宇宙物理学が専門の「教授」でした。

 

次回は「X線天文衛星「ひとみ」の異常事象に関する小委員会」の報告書を読んで、そこで指摘された問題点と対策を考えます。

 

2016.06.26

 

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