ひまわりの種

毎日の診療や暮しの中で感じたことを、思いつくまま書いていきます。
不定期更新、ご容赦下さい。

明日から始動!

2010年01月03日 | 医療
 「めでたさも 中くらいなり おらが春」

小林一茶の句です。
この句の意味は、特別なことはないけど、まぁまぁ、そこそこ平穏な正月だなぁ、
という意味かとずっと思っていました。

でも、南木佳士という人の書いたエッセイ「臆病な医者」によれば、
そういう意味ではないかも、だったのです。
この方は長野県の総合病院に勤務する(今もかな?)内科医なのですが、
死生観をテーマにした小説をよく書いています。
映画にもなった「阿弥陀堂だより」の原作者です。

彼によれば、長野(信州)では「中くらい」を「ちゅっくれえ」と表現するのだそうな。
あるとき彼が、患者さんに温湿布と冷湿布を間違えて処方してしまい、
その患者さんから「ちゅっくれえな医者だ」と言われてしまったそうです。
つまり、信州弁で「ちゅっくれえ」というのは、
「てきとうな」とか「いい加減な」とか「あいまいな」などの意味合いもあるのだとか。
小林一茶も信州の人なので、一茶の表現する「中くらい」というのは、
実は信州弁の「ちゅっくれえ」という意味合いも含んでいるのではないか、
つまり、「ほのぼのとした正月」ではなく、
「めでたいと言っていいのかどうか、中途半端な、いいかげんな正月だなぁ」という、
自嘲気味な思いもあったのでは? という解釈でした。

なるほどなぁ・・・。


この「臆病な医者」という本は、タイトルに惹かれて買いました。
彼のさまざまな思いは、生い立ちもだいぶ影響しているようです。
「ダイアモンドダスト」という小説で芥川賞も受賞しているのですが、
受賞の際の彼のコメントを何かで読みました。

 学校を出たての二十四、五歳の若者が、
 多くの想い出を抱え込んだまま旅立つ死者を見送ることは、苦痛であった。
 この苦しみから抜け出したくて小説を書き始め、もう十年になる。

この気持ちは、わたしもよくわかります。
たしかに、医師になって最初の数年間は大きな病院に勤務することがほとんどですから、
必然的に重症の患者さんを診ることになります。
特に修業時代の数年間は、食事を取る時間も寝る間もなく、患者さんに接する日々です。
日常的に人の死に接していると、感覚が麻痺してくることがあります。
わたしは小児科だったので、子どもの死に馴れるということは勿論ありませんでしたが、
(いえ、他の科が死に対して鈍感だという意味ではありません。)
あまりに忙しい日々が続くと、人の痛みが「他人事」になりそうな瞬間が、ありました。
一方で、患者さんが亡くなっても、医者は涙を見せるな、と先輩から叱られたこともありました。
若い頃、この感覚にどう折り合いをつければいいのか、つらい時期がありました。

第三者として冷静に対処しなければならない立場を保ちつつ、
患者さんの思いに共感する、という、
一見、相反する対応は、今でも難しく感じることがあります。

本の内容からはそれるのですが、
医者はある意味、臆病でなければいけない、とわたしは思っています。
もちろん、生き方そのものが臆病になってはいけないのですが。

いろんなところで、いろんな方々に話すのですが、
医療行為に100%安全・完璧なんてないんですね。
いつも、患者さんを診察したあとに「万が一」のことはアタマの隅にあります。
どんなクスリでもワクチンでも、ルシアンルーレットのような事がいつ起きるか、
それは、神様にだって、わからないかも知れないのです。
不測の事態が起きた時にどう対処するか。
医師の技量はこのような時に問われるのだと思います。

自分は完璧ではない。
だからこそ、臆病なほどに心配りをしなければ・・・。こんな風に思っています。
(いえ、ヤブ医者ではないつもりですが・・・^_^; )

さて、明日からまた仕事開始、です。

休日インフルエンザ外来

2010年01月02日 | 医療
今日の午前中は、市のインフルエンザ外来の当番でした。

当市では、
 平成21年11月15日から平成22年3月28日までの、日曜日、祝日(振替休日含む)と
 平成21年12月29日から平成22年1月3日までの年末年始
に、市の保健福祉センター内にある夜間診療所の場所を使って、
日中にも発熱でインフルエンザを心配なさる方々のための休日外来を設けました。
ただし小学生以上の方々が対象です。
一応、3月までの暫定処置のようですが。

年末の23日の夜間診療所もかなり混んだので、
「よっしゃあ!!」
って気合いいれて出かけましたが、予想外に患者さんは少なく・・・・。
本当に少ないなら、これは喜ばしいことではありますが、
もしかして、市民の方々はこの外来をあまりご存知ないのではないか、
と、少々心配になってしまいました。

もっとも、冬休みになってからのこの外来の患者さんは、ぐっと少なくなったそうです。
4日からは殆どの医療機関が診療を開始します。
でも、新型インフルエンザが落ち着いたといっても、
当地で季節性のインフルエンザが流行するのは毎年1月下旬頃から。
小さい赤ちゃんがかかるとひどくなる呼吸器感染症もあるし、
冬場に流行する嘔吐下痢症もありますからねぇ・・・。
まだまだ、油断はできません、って。

新しいいのち

2010年01月01日 | 医療
大晦日から元旦にかけて、4人の赤ちゃんが産まれました。
ひとりは36週とちょっと早めでしたが、さほど小さくもなく元気そのものでした。

昨年、年の瀬になってから、お正月をどこかで過ごそうと夫が急に言い出しました。
母も結構な年だし、大学生の子どもたちも、来年の正月はどうしているかわかりません。
家族水入らずで過ごせるのは、今年が最初で最後かもしれない、と思ったようです。
(病院の当直は別として)大晦日を自宅以外のところで過ごすのは、
母はもちろん、わたし達家族も、これまた初めてのことです。
とはいえ、お産がどうなるかわからないし、近いところじゃないと行けません。
うちの助産師も看護師も、ベテランだからこそ、の計画です。

車で20分ほどの温泉宿に、ダメモトであちこち問い合わせたところ、
やっと1軒だけ予約が取れました。
でもそこは、お料理が美味しいことではかなり有名なお宿。

わくわくして出かけたのはいいのですが、
案の定、夜9時過ぎに、夫の携帯が鳴りました。
まぁ、お産の予定日状況からは夫は予想はしていたようで、
(どうりで、あんまりお酒も呑まないと思いましたよ。)
出された料理はさっさと食べ、温泉には2回も入り、
(モトは取らねば! と思ったらしい(^_^;) )
さっさと着替えてタクシーを呼んで病院に戻りました。

お産は1件だけかと思いきや、夜10時過ぎに夫から連絡がはいり、
あと3人ほど陣痛が来てるから、多分今夜は戻れないから・・・。とのこと。
ま、こういうのは、いつものことなので、覚悟の上です。
万が一分娩が長引いたり、赤ちゃんに何かあれば、わたしも戻らなければなりません。
内心ハラハラしながら紅白を観て、その後も心配で寝付けませんでしたが、
赤ちゃんは幸いにもみんな元気で、わたしが呼ばれることはありませんでした。

元旦の朝、ほとんど寝ていない夫は、それでも朝食をとりに宿に戻ってきました。
昨夜からの雪はやんで、家の前の街路樹の枝には雪の花が咲いていました。
すがすがしい元旦です。

 赤ちゃんが無事に産まれること。
 お母さんのからだが無事であること。

この願いさえ叶うのなら、わたし達はどんなことだって我慢できちゃいます。

新しい年の、新しいいのち。
ねぇ、きみたち、きっとこれから先、いろんなことがあるけれど、
しっかり生きてくださいね。

新型インフルエンザワクチンの悩み(3)

2009年12月24日 | 医療
昨日、23日はいつもの夜間救急の当番でした。
先月よりは少ないですが、小児科の患者さんは約65名ほど。
やはりほとんどはインフルエンザと思われる症状のお子さんでした。

一時期ピークを過ぎたかのような新型インフルエンザも、最近またぶり返した感じです。
わたしの外来でも、まだまだ、インフルエンザの患者さんがいます。

腹が立つのは、あぁ、この子もワクチンが間に合わなかったなぁ!
というお子さんが多いこと。

当地では、先月半ばから基礎疾患の子どもと大人、今月初めから1歳~小学3年生、
というスケジュールで接種が開始されました。
小学校高学年と、何らかの理由により接種できないお子さんの保護者の予約が、
今月半ば過ぎから開始、接種は来年4日から、なのです。
中高生は1月8日からになりました。

あのさぁ、基礎疾患の方々以外は、小中高校生も、接種できない子どもの保護者も、
みんなまとめて接種できるようにしちゃえばよかったじゃん!
厚労省からのスケジュールでは、12月末にはこれらの方々もできるはずだよ。
どうしてうちの県は遅いの!?
だってね、例えば10ヶ月の赤ちゃんと、幼稚園年長のお姉ちゃんと、
小学4年生のお兄ちゃんの家族がいるとして、今接種できるのは幼稚園のお姉ちゃんだけ。
小学4年のお兄ちゃんと、そのご両親は来年、って、おかしいですよ。
家族が何度も病院に来るより、来院回数は一回で終わったほうが、効率的じゃないですか。
それに、今月になってまた流行りだして、
ワクチン接種待ちのお子さんがばたばたと感染してます。
冬休みになったら学校も休みになるから流行もストップすると思ったら大間違いです。
最近は小学生だって塾に行くし、スポ少の練習だってあるし、
中高生だって休日は模試や塾で忙しい。
学級閉鎖にしたところで、課外活動や習い事に行って感染してしまうんです。
それに、中高生の8日から、って、どういう基準での8日なの?
4日から開始と8日から開始の、4日間の差、って、なに?
8日から3学期が始まるんだもの、
どうせなら冬休みの間に小学校高学年と一緒に4日からにすればいいじゃん!
中3・高3なんて、学校休める時期じゃないよ。
1月中旬からは私立の入試だって始まるのに。

ワクチンだって、本当に今も足りないの?
わたしのところには、今月中旬になって例の評判のわるい10ml入りのものが、
どどっと配布されました。
でも、直前まで何ml入るかわからなかったから、予約のとりようもなかったのに、
ここにきて毎日何十人も集団接種状態です。
インフルエンザその他の「具合の悪い」患者さんの診察をしながら、
一方では100人前後の人数のワクチン接種、の毎日は、さすがに疲れてきました。
受付さんも看護師も、昼休み返上、毎日残業で、疲労困憊してます。
彼女たちにだって、休み時間をあげたいです。
ゆっくり昼ご飯を食べさせたいです。
もちろん、一番迷惑をこうむっているのは、接種まちの患者さんたちです。
学校や保育園や幼稚園の現場だって、今年は行事の予定が何度もくつがえりました。
学習発表会をとりやめた学校もありました。

それに、どう考えても腑に落ちないのは、「医療従事者」のとらえ方です。
医師・看護師以外には、ワクチンの割り当てはありませんでした。
検査技師や受付やその他の院内で働く人たちの分は、なかったのです。
うちでは、受付さん二人と、中材スタッフの一人が早々に罹ってしまいました。
おかしいといえば、調剤薬局の薬剤師さんも、医療従事者にはなってないのです。
国の施策で院外処方を推奨していながら、この仕打ちはないでしょう。

1回に大人なら約20人、子どもなら40人ぐらい接種できる10mlのワクチン製剤は、
前政権の厚労大臣は、製造許可を出していなかったのだそうです。
でも、政権が替わったら、なぜか商品として出ることになっていた。
このことは、国会でも質疑されたらしいです。
おかしいですね。すごく。
時期的なことを考えると、政権が替わって新しい厚労大臣が許可したのではなさそうで、
となると、すでに内々に10mlのワクチン製剤は製造されていたと考えられます。
ま、それならそれでいいんだけど、
ならば、もっと早い段階で、集団接種を考慮するとか、
なにか対策はなかったのでしょうかね。

各自治体での接種体制もかなり違います。
東京都などは、かなり早くから前倒ししてます。
どうしてうちの県はできなかったの?

今日も、できれば罹らせたくなかったお子さんが、罹ってしまいました。
その子は難治性の中耳炎を繰り返していて、何度も鼓膜切開をしていて、
今は両鼓膜にチューブも入っています。
ワクチンは1回しかやっていませんでした。
あああ! また中耳炎がひどくなっちゃうのかな。

あぁ、この子も間に合わなかった、この子もだ・・・。
毎日毎日、こういうお子さんを診てます。

わたしは今、すっごく腹が立ってます。(`ヘ´)

今夜はクリスマス・イブだというのに・・・。

新型インフルエンザ:日本と海外の違い

2009年12月06日 | 医療
12月6日付のニュースで、
 国内での新型インフルエンザによる死亡者は100名、
 全世界では8700人超、北米はピークに、
という報道がありました。

こういうニュースが出るたびに、みんなが不安になります。
なんて恐ろしい病気なんだろう、って・・・。

確かに、病原性は季節性インフルエンザよりも高いといわれています。
先月の25日に、地区の小児科の勉強会がありました。
その時に、市の母子保健委員長の小児科の先生からご講義いただいたデータによれば、

かつてこれまでに流行したインフルエンザの死亡率は、

    スペイン風邪:1~2%
    アジア風邪:0.5%
    季節性:0.005%
    新型インフルエンザ:0.45~0.61%

というデータですから、たしかに、季節性インフルエンザより高いですね。

しかし!!
全世界でのデータを、そのまま日本に当てはめて国内でも同じ、
と心配するのは早計というもの。
以下に示すのは、11月下旬(第45週)での、国内でのデータです。

 第45週までに、国内で約738万人が発症、6.300人が入院、57人が死亡
 
これを計算すると、
         発症率:6.2%
         入院率:0.085%
         死亡率:0.0008%
となります。

今はもう少し数字が違っているかと思いますが、
割合はあまり変わらないのではないかと思います。

もうひとつ。
海外では、発症してもすぐに抗インフルエンザ薬を[誰もが]投与される環境では、
どうもないらしい、ということ。(全てではないでしょうが・・・)
これは、医療保険制度の有る無しによるところが大きいでしょう。
ある先進国での患者さんのお話です。
肺炎で入院し、インフルエンザと診断され、タミフルを投与したのは、
発症からなんと8日もたってから、ということだったそうな。

だからといって、じゃあ日本では安心と油断していい訳では決してありません。
が、報道の数値のみに煽られてパニックになるのではなく、
落ち着いて、日常生活の中での予防をきちんと心がけることが大切、
ということが言いたかったのでした。

新型インフルエンザワクチンの悩み(2)

2009年12月01日 | 医療
1歳から小学3年生までのお子さんの新型インフルエンザワクチンの予約が、
今日からようやく開始しました。
電話問い合わせが殺到するだろうなぁ、と予測してはいましたが、
予想をはるかに越え、午前中ですでに「チケット即日完売」状態でした。
午後になっても電話が次々に入ります。

当院には一度もかかったことのない方々からの問い合わせが入ります。
聞けば、かかりつけ医でもすでに予約が一杯になり、
あと数週間待つか、他をあたって下さいと言われたとのこと。
当院でも同じ状況なんです・・、とご説明しても、
かかりつけじゃないとできないのはナンデだ!? と声を荒げる方もいらっしゃる・・。
申し訳ないですが・・・、
と、ひたすらお断りするしかありませんでした・・・。

それに、基礎疾患の方々の2回目の分は、取り置いていません。
先月の時点で、2回目の分は来月供給されます、と保健所からの説明があったからです。
でも、その方々の分も心配になり、お昼休みに保健所に電話でたしかめました。
担当の方は、地区の母子保健委員会などでもたびたびお会いする方です。

このところの新型インフルエンザ流行状況を考慮して、
各自治体で前倒し接種を取り決めたのはいいけれど、
結局のところ、新型インフルエンザワクチンの国からの供給予定は、
前倒しではなく、当初の厚労省の予定のままなのだそうな・・・。
結果として、「今現在」接種したいのにできない、という状況に陥っているらしい。
いろいろお話を伺って、うちで予約した方々の分は、どうにか間に合いそうでしたが、
でも、あくまでも「予想」であって、確実なことは言えないとのこと・・・。

一般市民の方々や医療関係者から、毎日のように苦情や問い合わせが寄せられ、
うんざりしているでしょうに、担当の方はいつも丁寧にお話をして下さいますが、
地方行政の方々も、国と市民との板挟みに困惑し、疲労困憊しているようでした。

国からの通達によれば、12月はあと3回、ワクチンが供給されます。
12月7日、12月18日、12月28日。
国からまず各県に供給され、そこから私たちの手元に届くには1週間から10日かかるそうな。
となると、12月28日の分は、来年ですかぁ
正月返上して接種する訳にはいかないし、どうなるのでしょうか・・・。

さて、来週の7日(月)から接種開始、なんですが、
7日と8日の2日間に、殆どの希望者が集まっています。
日にちを振り分ける暇もないぐらいに電話が来てしまったため、これまた、どうしよう状態。
先月の基礎疾患対象の方々の時は、時間をやりくりして、
水曜午後の外来休診時間帯に集めたのですが、
今度の水曜日(9日)は、市の3歳児健診(3時半頃までかかる)と、
その後に、保育園の健診が2カ所、入ってます。
とてものこと、この間みたいな集団接種はできません。
外来の一般診療の時間帯とどう分けたらいいか、・・・・・。

はてさて、困りました・・・・。

ともかく、やるっきゃないぞ



新型インフルエンザワクチンの悩み

2009年11月28日 | 医療
当市では、初めの予定よりも前倒しで今月16日から、
喘息など基礎疾患のある方々への新型インフルエンザワクチン接種が開始されました。
それでも東京都などよりは遅いようです。
隣県でも、基礎疾患のない1歳以上のお子さん達への接種がすでに始まっているようです。

接種開始に伴い、1回分だけですが、市からの補助も出ることになりました。
3600円が2600円になります。
わずか1000円といえども、これは嬉しいことです。

でも、問題もあります。
うちのように接種対象者がある程度多いところには、
ワクチンの薬液が1本10ml入りのものが配られるのです。
これには正直、参りました。
だって、子どもの1回接種量は、0.2mlとか0.3mlなのです。
10ml入りなら、約40人分に相当します。
しかも、一度開封したら、24時間以内に使い切らなければなりません。
10mlのうち、もしも4ml(15~20人分)余ったら、捨てなければなりません。
それでは勿体ないので、初めの週は、急遽あちこち電話をしておいでいただきました。

その問題を解消すべく、今度は集団接種を県が考慮、という話が地元紙に報道されました。
これも、現場のわたしたちには、寝耳に水、です。
なぜならば、インフルエンザワクチンは任意接種ですから、基本的には自費です。
BCGや3種混合ワクチンのような無料の定期接種なら、集団接種も可能ですが、
金銭のやりとりはどうするのか、場所はどこでやるのか、
スタッフは?、救急の体制は?・・・・・・。
各医療機関で持っているインフルエンザワクチンを持ち寄るのか、
その具体的な方法は、まったくわかりません。

なぜ10ml入りのワクチンを製造したのか、コストの問題なのか、
集団接種を考慮に入れてのことだったのか、今もって不明です。

集団接種するならするで、国の方針として初めから計画を立てればよかったのに。
全部無料にしてさ。以前のように。
前にも書いたけど、いろんなところで予算を削るようだから、
緊急対策として、補助予算はつけられなかったのでしょうかね。
それとも、国をあげて無料で接種したとして、
万が一重大な副反応が出た時に、責任を取りたくなかったのでしょうかね。

悩みはもうひとつ。
こっちの方が切実です。
基礎疾患のあるお子さんに、小さい弟や妹がいるとします。
でもその子たちは、まだ何も基礎疾患と思える病気は発症してない。
保育園にも行っている。できれば一緒に接種させたいのが、親心。
できればわたしも接種してあげたい。
でも、できない。
大っぴらに行政からの指示を逸脱することは、だめらしい・・・。
ごめんね、お母さん。あと少しだけ、待って・・・。
毎回、苦しい言い訳をします。
子どもに優先順位なんて、どうしてつけるの?
「子ども」というだけで優先じゃないの?
そう思うけれど、地方の行政側も国の方針を逸脱することは難しいらしい。

あぁぁ!!!
いったいこの騒動は、いつまで続くんだろう!

ともかくも、今できることを粛々とこなす、
それしかない・・・。

インフルエンザ外来

2009年11月23日 | 医療
22日は休日当番、23日は市の夜間診療所の当番でした。
当市では、休日の救急外来は各開業医が自院で診察、
夜間救急は市の保健福祉センター内に設置されている夜間診療所に開業医が出向いて診察、
という形で行っています。
今月15日の日曜日から来年の3月まで、日曜祝祭日と年末年始の日中も、
夜間診療所の場所を借りて、インフルエンザ外来を行うことになりました。

来週の月曜も夜間診療所の当番。
3月までは、わたしは月に2回の当番があります。
来年の1月2日は、午前中の休日インフルエンザ外来の当番です。

さて、昨日の休日当番では、約170名近くのお子さんがおいでになりました。
そのうちの約8割がインフルエンザでした。
今日の夜間診療所では、夜7時から診察開始なのですが、少し早めに行ったつもりが、
もう入り口の外まで患者さんたちが並んでいました!
こんなことは、これまで初めての状態です。
88名のお子さんが受付をしたそうですが、8名がキャンセル、
わたしは80名の患者さんを診察しました。
今までのわたしの夜間診療所での記録では、一番多い人数でした。
インフルエンザじゃない患者さんは、ほんの4~5名でした。
夜7時少し前から開始して、終わったのは11時30分でした。

今夜の夜間診療所の当番薬剤師さんは、当院の調剤をお願いしている先生でした。
薬剤師になったばかりの息子さんも、一緒に来てくれていました。
わたしは慣れてるからともかく、昨日もうちの休日当番で大変だっただろうに、
今日も、本当にお疲れさまだったと思います。

しかし、なんといっても・・・・、
大変だったのは、2~3時間近くも待つことになった患者さんたちでしょう。

夜間診療所が開設された当初は、いくらなんでもこんなことは想定していなかったので、
受付や看護師さんの人数も足りない(でも今夜はいつもより看護師さんが多かった)、
薬剤師さんだって、自分のところの慣れた調剤器や薬剤ではない、調剤場所も狭い、
待合室も狭い、椅子も足りない、・・・・・・まるで満員電車のよう。
内科の先生も、外科の先生も、受付さんも看護師さんも、もちろんわたしも、
一生懸命、息つく間もないぐらい、頑張っているのだけれど、追いつかない、
・・・そんな状態でした。

でも、非常事態だからなのかどうか、
例年だと、混雑してくれば必ず、待ちきれなくなった患者さんのひとりかふたり、
怒鳴ったり文句を言ったり、という場面に遭遇するのですが、
昨日も今夜も、そういう方々はひとりもいませんでした。
(具合が悪すぎて文句も言えなかったのかも、・・・とも思いますが・・・)
じっと待っててくださった方々、本当にありがとう、お疲れさま、です。

11時半、わたしの当番時間が終わって帰る時、
もう1時間以上も前に診察したお子さんのお父さんが、会計やクスリを待っていました。
センセイ、おつかれさまでした、
と声をかけていただいて、逆に恐縮してしまいました。
こちらこそ、大変ですね、どうぞお大事に・・・。
こんな言葉しか返すことができませんでした。

救急外来で診察するのは、ほとんどが初対面、その日限りの出会いです。
あとはかかりつけの先生が診ることになりますから、
その後のことは、ほとんどは、わかりません。
今日診察したお子さんたちが、肺炎や脳症を併発しないといいな、
明日はもっと楽になってるといいな、
今夜も、そう願いながら帰ってきました。

ドクターヘリ

2009年08月15日 | 医療
観光有料道路を通って近くの高原に行ったら、ドクターヘリがいました。
どうやら近くで交通事故があり、地元の大学にヘリを要請したようです。


観光に訪れていた人たちも、遠巻きに心配そうに集まっていました。


このドクターヘリ、実は出動すればするほど、赤字になるらしい。
でも、当県は面積が広いので、ヘリの存在はかなり救命率も高いようです。

そういえば先日、市内で交通事故にあったという私の患者さん(子どもです、もちろん)が、
近くの競馬場に救急車で運ばれ、そこからドクターヘリで大学病院まで搬送されたそうな。
事故の様子を聞けば、よくぞ助かったねぇ、という状況でした。
お母さんも、今だから落ち着いて話せるけど、といって教えて下さったのでした。

ドクターヘリが当県で運行されるようになって、約1年半。
今年の7月には1ヶ月で45回ぐらいの出動要請となっています。
大学の救急センターのスタッフは限られているし、ヘリだって1台しかありません。
件数がふえれば、疲労も重なるでしょう。
あれに乗っているのが、もしもわたしの家族だったら・・・。


患者さんの無事とともに、救急にかかわる方々の無事も祈りながら、
飛んでいくヘリを見送りました。




大きくなったねぇ

2009年08月01日 | 医療
昨年から、中学1年生と高校3年生(18歳に相当する年齢の方)に、
公費で「麻しん風しん混合ワクチン」が接種できるようになりました。

中学生・高校生は、部活やら塾やらで毎日忙しいので、
この時期は、夏休みを利用して予防接種においでになるお子さんが増えます。

開業して今年で14年目。
開業した年にうちで産まれたお子さんも、今年は中学1年生です。
体格的にはもう「お子さん」なんて表現できないんですけけどね。 (^_^)

小学校を卒業する頃になると、だいぶ丈夫になってくるので、
小児科外来においでになる機会も、ぐっと少なくなります。
せいぜいが、こういう予防接種の時ぐらいの受診になります。
カルテの最終受診日は平成16年だったり、17年だったりのお子さんもいて。

「大きくなったねぇ

わたしの第一声に、みんな恥ずかしそうに、にこっ と笑います。

保育園の赤ちゃん組の時は、健診のたびに泣かれたっけねぇ。
ちょっとチクッとするけど、泣かないでよ~(^_^)

こんな冗談を言うと、また にぃっ と恥ずかしそうに笑います。

お母さんは、あいかわらずみんな、若々しいままです。
わたしも外来の看護師たちも、10年以上の歳月の流れなんて日頃自覚しないのですが、
しばらくぶりに成長したお子さん達と出会うと、
嬉しい反面、あぁ、年をとったんだなぁ、・・・、なんてしみじみしちゃったりして。

いやいや、クリニック内は竜宮城じゃぁ

・・と思って過ごすことにしよう。(^_^;)

家族旅行・2

2009年07月26日 | 医療
数日前、小さいお子さんを連れての旅行のことを書きました。

週末、まるで台本でもあったかのようにそっくりの状況のお子さんが来院しました。

2歳になるそのお子さんは今週の初めに発熱でおいでになって、一旦は解熱しました。
数日後の再診のときはまぁまぁ元気でした。

センセイ、週明けに2泊3日の旅行に行くんですけど、大丈夫でしょうか?
お母さんが心配そうに訊きました。

う~ん、このままだったら行って行けないこともないけど・・・。
(でもちょっと不安・・・)

もしお出かけになる時は、お子さんんの体調に合わせて、スケジュールは変更してね。
ホテルの中で過ごすことになることも予想しててね。

そんなお話をしてお帰りいただきましたが・・・。
わたしの不安は的中、その夜からまたちょっと微熱。
翌日もおいでになりました。
お母さんはお仕事が休めなくて、お父さんが都合つけての来院です。
来院時の体温はもう38度になってました。
今度は咳も鼻水も出てきました。食欲もまだ本調子ではありません。

診察が終わって帰る頃には、お母さんもお仕事を早めに終わらせておいでになりました。
お父さんから、来院時にはもう体温が38度になったという連絡を受けたらしく、
すでに旅行のキャンセルの手配もしてきたのだそうです。

キャンセル料は多少かかったけど、子どもが心配ですから・・・。
そう言ってお子さんを抱っこしてお帰りになるお母さんの表情は、
1回目の再診の時に旅行の相談をしていた時よりも、明るくなってました。

その後どうしたかな。
お熱がちゃんと下がってるといいな。
食欲も戻って、機嫌も良くなってるといいな。
週明け、そのお子さんは当院に「プチ旅行」の予定です。

来年、再来年は、もっともっと丈夫になってますからね。
近い将来、必ず家族旅行ができますからね。

お父さんとお母さんの勇気に拍手! です。


家族旅行

2009年07月22日 | 医療
真冬に比べればこの時期の小児科外来は割合すいているのですが、
毎日高熱の患者さんがおいでになります。
ほとんどはいわゆる「夏かぜ」なのですが、実はこの夏かぜ、くせものです。
咳やはなみずはそれほど出ないのに、高熱だけが、3~4日続きます。
そのあとは、けろっと治ってしまうことが多いのを、わたしはわかっていますが、
数日はお熱が続くかもね~、3日後ぐらいにはおいで下さいね~。
とご説明していても、やっぱり、そこは親心。
熱が下がらないのが心配で、このところ毎晩のように、電話問い合わせがあります。

さて。
例えば3日目の再診で、だいぶ快方にむかってきたところ、
あと数日で元気になるでしょう、と予想される小さなお子さんがいるとします。
でも、夏のこの時期は、お熱が下がってそれで終わり、にならないのが小児科外来。
この時期は、親御さんから次のような質問が多いです。

 センセイ、あさってから数日出かけるんですが、いいでしょうか?

 え? どこに?

昨今はあまり立ち入らないほうがいいのかな・・・、と思いながら、
実はわたし、結構あれこれ詳しく聞きます。

 誰と? いつから? 何泊?
 目的は? 旅行? 里帰り? 
 場所は? ホテル? 実家? 友人の家?
 交通機関は? 新幹線? 飛行機? 車?

ご実家、とくにお母さまのご実家なら、治りかけならオッケー。
勝手知ったる実家なら、何かあっても気を遣うことはないでしょうから。
でも、旅行となると、ちょっと事情は変わってきます。
小学生・中学生なら、自分でも具合が悪いことを言葉で表現できますが、
2~3歳までの小さなお子さんはそうはいきません。
治りかけと思っても、体力的にはまだまだ、安静が必要なことがあります。
自家用車での遠出なら、何かあれば途中で予定変更ができます。
でも、新幹線の車中で、万が一、熱がぶり返したら?
おなか痛いと泣いて、吐いてしまったら?
新幹線や飛行機は、途中で止めて、って訳にはいきませんものね。
ホテルなら救急病院を教えてもらえるけど、それに家族だけの問題だけど、
泊まるのが友人の家なら? そこに同じくらいの小さいお子さんがいたら?
もし立場が逆だったら? うちの子にうつらないかな、って、内心は不安にならない?

細かいことを先回りして心配しすぎても、人生楽しくないですが、
小さいお子さんの場合は「何かあるかも」と想定して計画を立てたいものです。

ん~・・・、あさってからは、ちょっと無理っぽいんだけどなぁ・・・、
と思うのですが、
忙しいお父さんやお母さんが、仕事の調整をして休みをとって、
おそらく何ヶ月も前から切符やホテルの手配をしてたんだろうな~、
上のお兄ちゃん(お姉ちゃん)も楽しみにしてるんだろうな~、
その気持ちは、わたしにもとってもよくわかるので、
なるべくなら、行かせてあげたいのが、親心、もとい、小児科医心。

いつもより長めにお薬を処方して、
母子手帳と保険証は忘れないでね、絶対、無理はしないでね、
とお話しして、行ってらっしゃいと言います。

でも、時には、心を鬼にして、ストップをかけざるを得ないこともあります。
こういうときは、楽しみにしていたご家族の気持ちを考えると、
わたしもとても残念です。

ただね。
実は、小さいお子さんは、無理して遠出しなくても、
休みの日に家族とそのへんにちょっと「お出かけ」するだけでも、
じゅうぶん楽しいはずなんですよね。

よくよく考えると、
休日に遠くに出かけたいのは、実は親のほうだったりするんですねぇ。
何を隠そう、我が家もおんなじでした。
子どもたちがまだ保育園の赤ちゃん組・年少組の頃に、
親子のふれあいと称して週末になると連れ歩いて、
結局週明けに体調を崩してしまって、何度も実家が保育園になりました。
(ぶつぶつ文句を言われながら・・・^_^; )

 子どものためというより、親が出かけたいんじゃないの?

というのは、当時わたしの親から叱られた言葉です。
親に言われたことだから反発もしたし、わたしたちはイシャだよ!という、
今にして思えば中身の伴わない自信もありました。

でも、今になって振り返ると、
もっと落ち着いて子どもとかかわってあげた方が良かったな、
と反省することはたくさんあります。

おっきな遊園地はないけど、幸い当地には近くに小高い山があります。
お弁当持ってハイキングのまねごとだっていいし。
日帰り温泉だってたくさんあるし、近くの公園だっていいんですよね。
特別なイベントや遠くに出かけなくても、楽しめることはたくさんある。
身の回りのことで楽しむ工夫をするのも、楽しみのひとつかも。

お子さんが小さいうちは、親も我慢なんだなぁ。

これって、大事なことだと思います。

木曜日の外来

2008年09月18日 | 医療
  わたしの住む市内には、全部で20軒の小児科医院があります。
 うちの近所の小児科医院では、木曜日の午後が休診にしているところが4軒あるので、木曜日の私の外来は、いつもよりちょっと混みます。
 その上、今日は、途中に緊急の帝王切開があって、約1時間ほど外来を中断してしまいました。
 赤ちゃんは無事、元気に、おぎゃー!と産まれました。
 急いで外来に戻ると、カルテは20人分以上も溜まっていました。
 すでに1時間以上もお待たせしてしまったお子さんたちが、たくさんいました。
 中には、39度も熱のあるお子さんもいました。

 お待たせして申し訳ありませんでした。
 一人ひとりにお詫びしながら、診察を再開しました。

 「センセイ、赤ちゃんだいじょぶだった?」
 熱っぽくて待ちくたびれて目を充血させた小学生の男の子が、診察室に入るなり、開口一番に聞いてきました。その子は、赤ちゃんのときから来てくれているお子さんです。妹思いの、優しいお兄ちゃんです。
 「うん。元気だったよ。遅くしてごめんね。」
 「そうか。なら、良かった。」

 5歳と4歳の兄妹を連れて入ってきたお母さんが、聞いてきました。
 「赤ちゃん無事でしたか?」
 「はい。元気でした。遅くしてすみませんでした。」
 「いいえ・・・。緊急手術なんて聞くと、わたしもドキドキしてしまいました。無事で良かったですね。」

 初めて来てみたら、あるいは、しばらく振りに来たら、こんなに待たされて・・!
 ・・・と、内心は憤慨して診察を受けた方も、中にはいらっしゃったかも知れません。
 でも、多くの方々が、赤ちゃんが無事でありますようにと思いながら待って下さったんだなぁ、と思うと、本当にありがたいことだと感謝で胸が一杯になりました。

「助産院は安全?」

2008年08月18日 | 医療
 表題のタイトルのブログがあります。
http://plaza.rakuten.co.jp/josanin/

 このブログの初めの挨拶文に書いてあるように、管理人さんは、助産院でお子さんを出産し、亡くされた方です。
 このブログこそ、当院のHPを訪れる方々に是非読んで欲しいとずっと思っておりました。

 管理人さんの意図は、決して助産院や助産師さんたちを誹謗中傷するものではありません。ブログをお読みになる方々には、まず最初にそのことをどうか、お心にとめて、読み進んで下さい。
 もちろん、紹介した私自身も、助産師という仕事に携わる方々を非難する気持ちで掲載するのではありません。

 それから、このブログは、あちこち拾い読みしただけでは、管理人さんの意図がうまく伝わらないかも知れません。
 最初の日付から(2005.09.06)、できればたくさんのコメントも含め、時間をかけて読んで下さるよう、お願いいたします。

 この方の赤ちゃんは、逆子ののひとつの形で、「足位」という状態でした。
 普通の妊娠・出産では、赤ちゃんの頭は、お母さんの子宮の中で下になっています。
 そうでないと、ちゃんと産まれにくいのです。
 いわゆる逆子というのは、赤ちゃんの頭が上になっていて、足は膝を曲げて、お尻の部分が一番下になっています。これを「骨盤位」といいます。赤ちゃんの骨盤が下に来ているからです。
 ところがこの方の場合は「足位」という状態で、これは、お尻ではなく、足が下になっているのです。
 文章だけでは分かりにくいかも知れませんが、産婦人科の教科書的には、「足位」ということが判明した段階で、その分娩は帝王切開の適応なのです。
 仮に妊婦さんの強い希望で経膣分娩(いわゆる自然分娩)を試みるとしても、その場合は、迅速に帝王切開に切り替えられるような施設において、産科医が行わなければなりません。
 その助産院が医療機関と提携していたとしても(実際にはしていなかった?)、分娩が始まってから病院までの搬送には、どんない近いところでも、どんなに急いだところで30分以上はかかってしまいます。これでは救命できません。
 つまり、助産院で扱う以前の症例だったのです。

 しかし、管理人さんにはそのような説明はその助産師からは一切ありませんでした。
 逆子も何人も取り上げてきたベテランの助産師で、しかもTVにも取り上げられたりした方ということで、おそらく産むまではほとんど何の疑問もなく、管理人さんは安心しておられたのだと思います。

 その助産師さんはかなり御高齢の方だったようです。
 おそらくは、その助産師さんが若い頃には、あるいは、途上国であれば、管理人さんのような症例は「仕方なかった」で済まされたのかもしれません。
 でも、この平成の時代、しかもここは日本です。もし、そのお産がしかるべき知識と技術を持った産科医のいる施設であれば、赤ちゃんは助かったかも知れません。
 大野病院の件とはまったく異なるのです。
 管理人さんは、お子さんを亡くされてから2年もたって、その助産師さんを訴えました。
 心の整理をつけ、訴えるという決心をするまでには、それだけの時間がかかったのだと思います。

 でも、たぶん、管理人さんが一番責めているのは、おそらくご自分なのです。今も。
 まわりの者がどんなに慰めの言葉をかけても、その思いは消え去ることはないのでしょう。

 妊娠・出産に伴う母体の変化は、予想もつかない事態を招くことがあります。
 「お産は病気ではない」と言われる一方で、昔からよく言われることは、
 「女は3回死ぬ目に遭う」という言葉です。
   1回目は、自分が産まれてくる時。
   2回目は、自分が出産する時。
   3回目は、自分の寿命が尽きる時。
 「お産は棺桶に片足を半分突っ込んでるようなもの」とも言われます。

 このブログに出会ったのは、丁度大野病院の事件が起きた頃でした。
 読み進みながら私が感じていたのは、この助産師は逮捕も起訴もされず、せいぜい地元紙のニュースになった程度なのに、なぜ、大野病院の産科医はあのような目にあったのだろう、ということでした。
 こっちの方が明らかなミスなのに、なぜ???
 報道機関の、医療問題を捉える姿勢に、疑問ばかりがつのりました。

 大野病院事件のあと、分娩を取りやめる施設が相次ぎ、お産難民という言葉まで生まれたということは、前回書きました。
 そして次に国が勧めている産科医療政策は、分娩の集約化と、正常産は助産師が、異常産は産科医が、という図式です。これはこれで、決して間違いではありません。
 しかし、妊娠経過が順調なのと、分娩経過が順調なのとは、分けて考えなければならないのです。異常産かどうかは、仮に妊娠経過が順調であっても、分娩が始まってみないとわからないことも、よくあるのです。
 単純に、「正常産なら助産師でいい」という考え方(先に述べたようにこれは間違いではないのですが、現場では決してそれでいいと思っている訳でもないのです)は、現代においては、危険すぎるように思います。 
 正常なお産かどうかを見分けるのは、それなりの経験と知識と技術がなければ難しいのです。
 そして、いざ、これは異常産だと判断した時に、医療行為にいかに短時間で移れるか、これがとても大事なことです。
 おそらく、経験の豊富な助産師さんたちも、同じような思いを抱いているはずです。

 「自然」にこだわり、その方針で生活することには異論はありませんが、食生活ひとつとっても、今や「自然」にはほど遠いのが、私達の生きている現代です。
 だって、食品ひとつとっても、味噌や醤油だって、殆どは既製品ですよ?
 有機農法の野菜やお米だって、その肥料は本当に安全なの?
 本当の有機肥料には家畜の糞便も含まれるけれど、ではその家畜はどんな育ち方をしているの? 普通は伝染病予防に抗生剤を投与されている家畜が殆どです。その排泄物は危険じゃないの?
 こだわったら、きりがありません。
 車・自転車・掃除機・洗濯機・エアコン・エレベーター、・・・・。
 生活・家事全般にしたって、すでに自然ではないのです。
 たかだかこの20~30年の間にも、ヒトの身体は変化してきています。
 だからこそ「自然なお産」を望む方々が多いのだと思いますが、それは、日本という先進国で生活しているからこその贅沢な願いのようにも思えてしまうのです。
 「産み方」も大事だけれど、「産む」ことがゴールではありません。

 命を胎内で育み、産むということそのものが、まさに命がけの行為なのです。
 そして、その命がけの行為のあとに続くのは、産んだ子を一人前になるまで慈しんで育てるという生活です。
 「出産」とは、ゴールではなく、人を育てるスタートなのだと思います。
 
 ある産科医の方は、一度産科医療が崩壊して(もう崩壊しつつありますが)、50~60年前ぐらいの、太平洋戦争以前の頃の産科医療レベルに戻って、妊産婦や新生児の死亡率でも高くなってみないと、メディアやお役人や一般の方々はわからないのかも知れない、と言っていました。
 私も同じような危惧を抱いています。

 病院での医療ミスや医療事故の話題はたくさんあるのに、なぜか、助産院でのミスや事故は話題になりません。理由のひとつとして考えられることは、殆どの場合、緊急でどうしようもない状態で病院に搬送されるので、結果としてその症例は、助産院での異常産ではなく、病院での異常産という扱いになってしまうのです。
 助産院での出産が全て危険だと言っている訳ではありません。
 でも、そのようなリスクは、産科医のいる施設での分娩よりも助産院での方が大きいのは明らかです。どの段階で産科医に紹介や搬送を決定するかは、そこの助産師さんの経験と知識と技術によります。
 提携医療機関までの搬送時間がどのぐらいなのかも、大事な要素です。

 残念ながら、このブログの管理人さんには、そういった説明がされていませんでした。
 つまり、情報が与えられていなかったのです。
 これも非難するつもりではないことを理解して欲しいのですが、助産院のHPなどには、「自然なお産」を謳い文句になさっているところが多いように感じます。
 助産師が助産院を開業する際には、提携する医師が必要なのですが、つい2~3年前までは、提携医療機関は、産婦人科でなくても良かったのだそうです。医師免許さえあれば。
 つまり、精神科医でも整形外科医でも良かった訳です。
 これは私も知らなかったことで、ちょっとびっくりでした。
 提携医療機関が遠ければ、何かあった時に搬送するまでの時間のロスも心配なのに、産婦人科医以外が提携していた時期があったなんて、考えるだけでも、怖いなぁ、と思うのは私だけでしょうか。
 最近になり(もしかすると管理人さんの件も影響あるのかな?)、助産院の提携医療機関は産婦人科に限る、ということになったようです。
 こういった事情も、ご存知ない方々が殆どではないでしょうか。

 医療機関は、何か事が起これば訴えられ、ニュースになります。
 でも、助産院での出産に関するマイナスの情報は、殆どありません。
 だからこそ、自分の身体の状態をよく知り、健診は定期的に受け、妊娠・出産に起こりうる危険性を十分に理解した上で、自分の責任において出産施設を選び、お産に望んで欲しい。

 管理人さんがブログでお伝えしたいことは、そういうことだと、私は理解しています。
 
 くどいですが、助産院および助産師さんたちを非難する目的でブログを紹介したのでは、決してありません。
 きちんと、まっとうなお産を日々なさっているる方々もたくさんいらっしゃると思います。
 私の文章を読んで不快な思いをなさる助産師さんがいらしたら、お詫び申し上げます。

 大野病院事件で感じるのは、ご遺族の方には大変申し訳ないのですが、憤りでしかありません。これは警察・検察・メディアに対する憤りです。
 一方で、この「助産院は安全?」というブログを読みながらつくづく思うのは、遺族の方の感情は、どんなに時を経ても安らぐことはないのだなぁ、ということです。
 内容も、行われた行為も、その後の対応も、大野病院事件とはまったく異なるのですが、このブログを読むことで、「出産によりお子さんを亡くされた方の心」に思いをははせ、上から目線にならないよう、いつも自分たちを戒めています。


休日当番

2008年01月03日 | 医療
 今日、1月3日は、当市の休日当番だった。
 市の広報では、休日当番の受付時間は朝9時から夕方5時まで、となっている。
 いつも正月休みの休日当番はものすごく込むので、8時半から開始するつもりだったが、8時45分ぐらいのスタートになってしまった。はじめのほうはまぁまぁ順調だったが、9時過ぎから込み合い、すでに10時頃には、待合室が満員電車のようになってしまった。
 おいでになった患者さんたちの座る場所もなく、スタッフルームから折畳み椅子を運んだが、それでも立ったままの方々も大勢いて、具合が悪いのに、申し訳ないままの外来だった。
 
 内科の患者さんは殆どがご本人だけなのだけれど、小児科の場合はそうはいかない。患者さんであるお子さんに付き添っておいでになる保護者の方がいる。お母さんだけじゃなくて、お父さんとかお祖母ちゃんも一緒だと、それだけで待合室の人数は増えてしまうから、当然、人口密度が高くなってしまうのだ。
 そういう状態で混雑していると、人の心は苛立ってくる。
 順番はまだですか!?、とか、あとどれくらいですか!?、などの苦情も多くなる。
 時間帯によっては、2時間ぐらい待たせてしまったた方々もたくさんいた。
 中には途中で外出したり、お帰りになってしまう方もいた。
 順番が来てお名前を呼んでもいない。受付にひと言断って下されば助かるのだけど、黙って出ていかれてしまうと、何度もお名前を呼んで捜さなければならない。混んでいて呼ばれたのに気付かないことは時々あるのだけれど、顔見知りのかかりつけの方々なら、待合室に行って見渡せばわかる。でも、今日のように殆どの方々が初めての患者さんの場合は、お顔がわからないので、何度も捜すことになってしまう。看護師が駐車場まで探しに行くこともある。
 そして次の患者さんを診察するまでに時間のロスが出てしまう、という悪循環になってしまうこともたびたび・・・。

 内科と小児科同時の休日当番は、具合が悪くておいでになった患者さんたちは当然だけれども、わたしたちも神経をすり減らしてしまう。
 なぜなら、殆どの方々とは初対面だからだ。
 どんな職場でも、学校でも、プライベート面でも、「初対面」で「いい人間関係」を築くのにはエネルギーがいる。ましてや、具合が悪い方々との初対面だ。本来であれば、いつから、どんな症状が、どの程度あって、それに対して薬は飲んだか、何もせずに様子を見ていたのか、などなどを、丁寧に時間をかけて、聞き出して診察をしなければならない。もちろん、最低限の必要情報は聞くけれども、診察も、心を込めてやっているつもりではあったけれども、それがどの程度伝わったかどうかは、はなはだ自信がない。
 ともかくも、見落としがないように。明日以降、患者さんが困ることがないように。
 そのことだけに神経を集中して診察をこなすことだけで、精一杯になってしまう・・・。

 今日おいでになった患者さんは、小児科が約150人、内科は50~60人ぐらい?
 休日当番の人数としては、実はそれほど多すぎる訳ではない。以前には、小児科だけで200人という日もあったから。
 でも、時期的にも本当に具合の悪い方々が殆どだったから、診察も、ハイ次、ハイ次、という訳にはいかなかった。患者さん達にとってはおおいにに不満だったと思うけれども・・・。
  
 中には、センセ、お昼食べたの? 大変だね、と声をかけて下さる方もいた。
 わたしは単純だから、こういうひと言で、エネルギーが補充されるんデス。o(^-^)o

 実際にはわたしは昼食の時間はなく、トイレにも立てず、ずーっと朝から診察の椅子に座りっぱなしだった。あ、熱性痙攣のお子さんの点滴とか、検査や薬の説明で処置室に行ったりはしたけどね。

 終わったのは、夜の7時過ぎだった。
 それから明日退院する赤ちゃんの診察に病棟に行って、帰宅したのは8時。
 昨日の残りのシチューがあったけど、もう面倒で何にもしたくなかったので、帰省中の子どもも一緒に晩ご飯はデニーズへ♪
 あぁ、やっと一息ついたぁ・・・。

 今日は特に、こちらの段取りも悪かったかも、だなぁ・・・。
 みんな、一生懸命やったんだけどなぁ・・・。
 次回の休日当番までに、もう少し待っている間の工夫を考えなくちゃ・・・。

 さんざんお待たせしてしまった患者さんたち、ごめんなさい。
 何度も吐いて水分も摂れなくて点滴したお子さん、少しは楽になったかな。
 お熱が高かったお子さん、今どうしてるかな。明日は下がってるといいな。
 咳がひどかった赤ちゃん、今夜は大丈夫かな。眠れるといいな。
 実家に帰省中に熱が出てしまったお子さん、明日は帰るっていってたけど、大丈夫かな。
 みんな、無事でありますように・・・。

 そして、遅くまで働いてくれたスタッフのみんな、本当にありがとう!