理科系出身の知人の勧めで読むことにした「人類は地球外生命と遭遇することが出来るのか?」という問いについてこれまでに分かっていることを科学的に丁寧に解説してくれる一冊。この問いは、「そもそも地球外生命は存在するのか?」「そもそもどうやって生命は誕生するのか」「そもそも生命とは何か?」といった根本的な問いに連鎖しており、答えに近づくためには、宇宙に目を向けた物理学や生物学だけではなく、地球上の生物学、古生物学、地質学、素粒子物理学、倫理学、さらには哲学といった様々な分野の最新の知見を総動員する必要があるということを教えてくれる。個人的には、知性を持った地球外生命と遭遇するためには、人間が数万光年を移動する技術を獲得するまで進化するか、地球外生命の方が地球近くまで来てくれるかのどちらかが必要だが、当面人間の進歩は難しそうで、結局先方が突然来訪するのを待つしかない気がする。さらに言えば、知性を持った地球外生命の完全な不在証明が物理的に極めて困難である以上、存在するという前提で考えざるを得ないが、偶然遭遇したり存在を完全に証明するには途方もない時間や科学の進歩が必要で、それまで人類が生き残れるかどうか地球の寿命が持つかどうかが最大のネックになると思う。その他、本書には、数十億年前の太陽系では火星も地球と同じくらい生命誕生の条件は整っていたこと、近年木星の衛星に生命がいるのではないかという研究が進んでいること、宇宙関連の本によく出てくる「ドレイクの方程式」の解説など、面白い話が満載だった。(「地球外生物」 小林憲正、中公新書)