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獣の奏者(探求編/完結編) 上橋菜穂子

「本の雑誌」を読んでいたら、書評に「2009年最大の出来事」として、「『獣の奏者』の続編が出た」とあり、とにかくびっくりした。「獣の奏者」の作者である上橋菜穂子の動向については、昨年のお正月頃だったと思うが、「『獣の奏者』を書き終えてからスランプに陥っている」と作者自身がどこかに書いていた。私もそれを聞いて、「あれほど完成度の高い話を書いてしまうと、作家とはそうなるものなのか」と納得していたので、続編の刊行は2重の意味でびっくりした。
 「探求編」は、2冊同時に刊行された続編の1冊目(最初から数えて3冊目)で、主人公のエリンが、自分の信念と葛藤しながら、ある決意をするまでが描かれている。世界が自分の考えていた世界よりもずっと大きいこと、これまでの世界の起源にまで遡る遠い歴史の記憶、守るべきものが増えた自分自身の変化などから、これまで考えていなかった領域に足を踏み入れようとするエリンの姿を読みながら追っていると、これまで同様、どうしても止まらなくなる。寝食をを忘れてという状況にまたなってしまった。一方「完結編」は、エリンが選んだ道のいくつく先にあるカタストロフィーまでが描かれており、それまでに提示された「王獣と闘蛇の本当の秘密とは何か」「王獣が闘蛇と戦うとはどういうことなのか」「残った民が禁忌という形で隠したものとは何か」等々、これまでの謎が全て明かされる。
 物語の行き着いた先は、ファンタジーの世界から抜け出してしまったような世界であり、こんどこそ本当の「完結編」なのだろう。物語の結末から言って、もう続編が読めないと考えるのが妥当だろうが、何とかその予想を覆して欲しい気もする。(「獣の奏者(探求編/完結編)」上橋菜穂子、講談社)
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