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駒田徳広 サイン 元巨人軍4番打者
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「古事記」の真実 長部日出男
帯に「戦後史最大のタブーを解く」と大書してあったのに惹かれて読んだのだが、あまり古代史等の知識がない人間にはどこがタブーを打ち破った画期的な著書なのかが良く判らなかった。冒頭に古事記の著者の1人とされる「稗田阿礼」は女性だったという論証があるが、男性か女性かという論争があったこと自体知らなかったし、何だかどちらでもいいような気がしてしまう。古事記は演劇性・音楽性の強い「楽劇」のようなものだったという「説」も古事記を原文で読んだことのないものには、これまたどうでも良いことのように思える。楽劇ならば、何かメロディをつけてミュージカルにしたら面白いかもしれないという気がしたくらいの感想である。本書で一番気になるのは、「文学者の直感」を重んじているような記述が何カ所かあったことである。著者がどの程度の文学者なのか知らないが、「文学者としての直感」を持ち出されると、それが大文学者であればあるほど、歴史学者が異を唱えにくくなり、歴史学そのものが思考停止に陥ってしまうという弊害をもたらす。斎藤茂吉が「当代随一の歌人」という看板を利用して、いろいろな説(珍説)を唱え、日本の文学史をめちゃくちゃにしたのと同じものをみているような気がしてならなかった。(「古事記の真実」長部日出男、文春新書)
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