スケッチブック30

生活者の目線で日本の政治社会の有様を綴る

スケッチブック30(ものの勢い)

2018-07-04 15:01:41 | 日記
7月4日(水)
 物事は勢いで成るとは本当の事だと、この年になって知った思いだ。櫻井よしこさんが福島第二原発の廃炉決定について書いていたが、F2は大震災の中、幸運もあっただろうが、職員の懸命の働きで非常用冷却水の確保に成功して、炉心溶融を防いだ。福島第一のメルトダウンは炉心の冷却が出来なくなったことが原因で起こった。その他の損傷もあったのだろうがそれらが溶融の原因となったとは聞いていない。私は当初から、ならば非常用冷却水の確保に万全を期せば、原発は稼働させても良いと考えていた。すべての原発を停止するとの菅首相の判断に疑問を抱いたものだ。チェルノブイリを見ろと。すぐ隣の原子炉はずっと、寿命が尽きるまで、稼働し続けたではないか。事故原因は人為的なものだから、変な操作をしなければ次の爆発はないと、誰もが判断したからであろう。日本では事故原因は冷却装置破壊と判断をつけても、水鳥の羽音に驚く恐怖心が勝って、全原発停止が喝采を持って受け入れられた。ものの勢いである。この臆病さがせっかくの福島第二原発の廃炉決定につながったと、桜井さんは嘆くのである。羹に懲りてなんとやらが続いているのである。ものの勢いが強いのだ。
 太陽光発電は火力発電の補助的な発電機能しかないとは、電力関係の人には分かっていたことだと思う。それでも、ものの勢いである。森林を破壊し隣家を炎熱地獄に陥れ、国民に高い電気代を押し付ける様々な不合理な面があるにも拘らず、勢いでどんどん黒いパネルが延びていっている。
 考えてみれば政治改革だってそうだ。今になって中選挙区制が良かったと当のご本人たちが言っている。駄目な政治家集団はどんな選挙制度を選んでも政権など取れないのだ。当時は誰も良く考えず、勢いで小選挙区制度がとられたのだと思う。死者まで出した60年安保闘争でもそうである。全学連の活動家自身が言っているではないか。誰も安保条約の案文を読んだものはいなかったと。離党してから初めてマルクスを読んだと、著名な元共産党員が何かに書いているのを聞いた覚えがある。私の同僚は戦前父親が台湾に関係していたとかで(詳細は知らない)台湾人と交流がある。彼が初めて台湾に行って父親を覚えている人に会った時、まずもって植民地支配を謝罪しますと、謝ったそうだ。これも勢いであろう。田中均なども同世代だから、案外本気で北に贖罪意識を持っていて、安倍外交が気に食わないのかもしれない。
 物事は勢いで動くと知らないと、世の中を不合理だ間違っていると叫び続けて、精神異常になりかねない。
 ではなぜ勢いは合理体判断を蹴散らすのか。それは殆どの人が合理的判断が出来ないからである。或は自分の合理的判断に自信が持てないからというべきか。合理的判断など余程物事を知っていなくては出来るものではない。さらに自信をもって人に押し付けるには、権威と崇められている人でもなければ、恐ろしくて出来るものではない。人間は本来、他者の判断に従う存在、だと思う。安定した倫理観とか慣習がある社会では、人々の意識が一定の枠にはめられているので、人々の物事に対する判断も大体似たものになってくる。そこでは人々は自分の考えを、似たような他者の考えに補強されて、自分の判断だと自信をもって述べることが出来る。ところが現代日本のように基軸的考えが揺らぎ、あっちからもこっちからも突っ込まれる社会では、よほど考えた末でないと自分の考えを合理的なものだと自信をもって述べれない。時間的にも能力的にもそんな事は出来ないから、勢いに乗るのである。
 では勢いは誰が作るのか。流行と同じで完全に仕掛け人の作為に依っているとは言えないが、50%以上はマスコミが作っているのだろう。例えば小池百合子の希望の党が排除発言で失速したが、発言自体は政党として当たり前のものである。あれはマスコミが流れを変えたから起こったことである。マスコミはとにかく安倍政権を終わらせたかった。だから小池旋風を煽ったのである。小池のもとに野党が結集すれば数で自民党に勝てると踏んだのである。ところが小池が排除発言で独自色を出した。マスコミは逆に自分たちが小池に利用されていると気づいて(小池は野心家だが基線は保守である)、風を送るのをやめたのである。そうしたら小池旋風はマスコミ旋風が大部分であったから、一気に萎んでしまったということである。
 また如何にマスコミといえども残りの50%近くの要素である、国民の意向を無視しては、勢いを作れない。平成14年の小泉訪朝でマスコミは日朝国交回復がなると、長年の宿願を為した喜びで溢れていたろうに、拉致被害者死亡の報を聞いた国民の怒りで、国交回復の勢いなど吹っ飛んでしまった。勢いは誰かが旗振りをしないと起こらないが、国民の意向という核がないと、又潰れてしまうものでもある。